10話
一周まわって作中の季節が巡ってきそうですね。
「桜来、起きて。そろそろ学校の準備しないと」
心地良い声に意識が浮上する。
「……うん」
……なんでこんなことになってるんだっけ。
まあいっか。なんだか、すごくあったかくて、起こしてくれなかったらずっと眠ってたかもしれない。
「じゃあ、わたくしは部屋に戻って準備するから。体調は? 学校行けるか? 起き上がれるか?」
「……大丈夫」
でもすごく眠い……。
「先輩もまだ寝てるみたいだけど」
「みぃは、起こすだけ無駄だから」
起きた時間から準備して学校に行ってるみたいで、本人からも朝起こさないでって言われてる。かと思えばさらが起きた時にベッドにいないこともあるけど。
「そうか」
「やっぱり起きるの手伝って?」
「もちろん」
起こしてもらうとそのまま弘美ちゃんの体にもたれてしまう。
「うん? やっぱりきついか?」
「違うの。眠いの……起きる」
でも、もうちょっとこうしてたい。
……弘美ちゃんのほっぺ、あったかい。
「手、冷たいな」
「弘美ちゃんはあったかいね」
学校行くの、ちょっと億劫だな。
弘美ちゃんがさらの手を包んでくれる。
「……ねぇ、今日も一緒に寝よ?」
「さーちゃんって意外と肉食なのね」
毛布の中からぴょこんと顔を出したみぃが、
何故か冷たい目をしてる。
「みぃ、おはよう。さらお肉はあんまり食べないよ」
「さーちゃん弘美ちゃんおはよう。お肉食べないのは知ってるよ」
「あはは……部活、早く終わりそうだったらまた来るよ」
☆ ☆ ☆
「小野宮さん!」「さらっち!」「さーちゃん!」
お昼休み。食事を終えて、ブランケットで暖を取りながら編み物の続きをしていると、クラスメイトの3人が声をかけてきた。
「お願い! 編み物教えて欲しいの!」
「バレンタインデーに作りたいんだよね! まだ結構先だけど、私不器用で… 」
「それもバレンタインのでしょ? 小野宮さんそういうの得意だって聞いたからさー」
まだ1ヶ月以上先なのに、気合い入ってるんだな。
「これは別に、バレンタインデーのものではないけど……さらで良ければ」
教えるのは自信無いけど、多分出来ないことではない……と、思う。
「あんまり話したこともないのに、急にごめんね?」
全く知らない人っていうわけでもないし、唯一の趣味みたいなものだから。
「今年はどうしても頑張りたいの! だから早く取りかかりたくて、3人で必要な物と本を買うところまでは良かったんだけど……」
分かりやすい本もたくさんあるけど、人に教わるのが1番早いよね。
「さら、部活もしてないし、いつでもいいよ」
「「「ありがとぉ〜〜!!」」」
それから予鈴鳴るまで少しだけお話した。早速明日の放課後から始めることを決めて、3人が恋愛話に花を咲かせる。とっても幸せそう。
「さーちゃんは好きな人いないの?」
「うん。そういう好きは、まだよく分かんない」
「え! じゃあもしかして初恋もまだとか!?」
「うん」
「わー! 楽しみだね!」
「そうかな?」
「どんな人が相手なんだろう?」
身近な人を想像してみたけど、仲のいい人……みぃと、弘美ちゃんと、あと萌香ちゃん? 人見知りなわけじゃないからクラスメイトとはそれなりに仲がいいと思うけど。
やっぱり想像できないな。好きとか、付き合うとか、キスとか……。
さらにはきっとまだ早いんだね。
星花女子プロジェクトの今の第5弾でいくとみぃちゃんは卒業しててさーちゃんは2年生になって菊花寮生になってるんですよねぇ~。全然追いつけない