第四話 皇天照飛騨彦(おうろあまてらすひだひこ)
お待たせしました!
おっさんのターンです!(何
(あぁもうやだ怖い!おうち帰る!!)
その男は恐怖していた。
報告をまとめて聞いても今から自分が目にするのは化物級。
なんでこんな化物がこの国に来てるのかと思うとその男の胃は痛くなる一方だった。
(よし、しょうがない!適当に理由つけて追い出そう!うん、それが良い!平穏一番!あぁ、でも今国力落ちてるから制御出来るなら国防に…、でも怖い…。)
「皇失礼します!!」
(まだ何にも考えてないのに来たの!?やだー!もう誰かもう変わってくれぇぇ!!!)
そして飛騨彦の前に現れたのは自身の妹である桃花姫、そして報告書にあった化け物である。
だがその化け物は報告に反してただの幼い少女であった。
(あれ?もっと化け物っぽいのが来ると思ったんだけど?普通の子供じゃね?なんだ怯えて損したぁ。)
「皇天照飛騨彦様、件の少女をお連れしました。」
「うむ、下がってよい。」
「はっ!」
しかし、彼の考えは少女の瞳を見て変わった。
まるで感情の見えない闇、その透き通るような肌や赤い瞳がそれをより際立たせ、凄まじい恐怖を彼に与えていた。
(いや、やっぱ普通の子供じゃない!?何あの目超怖いんですけど?!なんであんなに虚ろなの!?)
底の見えない闇と言うのは人に恐怖を与える。
それは妖怪、悪魔、あの世。
そう言った物と同義。
分からないという恐怖はあまりにも大きい。
「桃花姫、質問がある。」
「こ、こらミコト!皇の御前だぞ!?」
「疑問、なぜ人以外がここに紛れているか。」
(人以外?あぁそういえば確かここに居る兵士の一人が天狗の子だったかな?)
そう思いちらりとその兵士を見る。
だが、天狗の子と言っても捨て子だった彼を拾ったのが天狗だっただけで人間に変わりはない。
中にはそれを物の怪の子と言って罵倒する輩も居るが、多分目の前の少女が言いたい事はそうではないのだろう。
「ミコト、どういう事だ?」
「人の皮を繭にしている存在を感知、敵対勢力か否か。」
(はっ?なにそれ?餓鬼がいるの?もう怖くて今日寝れなくなるじゃないかぁやだー!!)
餓鬼が居ると聞いただけで内心泣きだしている飛騨彦。
権力を持つ者にとって餓鬼は天敵だ。
餓鬼ほど巧妙に人の中に紛れる魔物は居ない。
さらに餓鬼は何故か一般民よりも権力を持つ者の近くに潜伏する事が多い。
「くっ!人を繭にするだと!?それは餓鬼!敵だ!!」
「了解、排除を開始する。」
ミコトが掌を向けた方向に居た忍が吹き飛んだ。
確かに飛騨彦はそこに忍を忍ばせていた。
位置的にすぐミコトに攻撃出来る位置。
だがそれが為す術もなく吹き飛んだ。
(はっ?何が起こったの?え?手向けただけだよね?何したの今?ちょっと怖いんですけどどういう事よ?あぁもうやだ怖い・・・。)
飛騨彦は内心半狂乱だった。
それも当然だろう、忍の居る位置を当てられた上に未知の攻撃でそれを倒されたのだ。
こうなれば彼は知らなければならない。
皇として、ミコトの性能を。
「ミコト、と言ったな。他の忍の位置も分かっているのか?」
「肯定する、ミコトはこの部屋に居る全ての人物の位置、状態を把握している。隠れてみている者はそことそことそこ。」
(全部あってるじゃないか!!何やってんだよ忍ぃ!!というか忍が餓鬼にやられてたのも問題だぞぉ!そんなんじゃ泣くぞコラァ!!)
表面上では落ち着いていたが、内心では泣いていた。
もう彼の精神はボロボロであった。
元々、彼は気の強い性質ではない。
小さな虫にさえ泣いて驚く小心者だ。
今でこそ皇として振る舞えてはいるが、本来の性質というのは簡単に変わる事は無い。
「なるほど、それで。お主は何が目的だ?単刀直入に述べよ。」
「ミコトはこの世界に関する知識が不足している。ミコトはこの世界について無知である。だからこの国での保護を依頼する。ミコトが提供できるのはこの力のみ。承諾を求む。」
「つまりこの国に力を貸してやるから保護しろと…?なかなか良い度胸であるな。」(もうやだ怖いからお布団に入ってのんびりしたい…。)
彼の心の中と言動は一致しない。
それは前皇の教育の賜物であったが、そのせいで彼は常に周囲の人間から冷徹な皇と呼ばれていた。
「ミコトの力はあなた達よりも上、それに桃花姫は約束を守ってくれている。それに創造主には、恩には恩で返せと言われた。ミコトはあなたがミコトを保護してくれないと桃花姫に恩を返せない。」
(いいよもう!だったら力貸してもらうよこのやろう!確か今、妹の離れ使ってたっけ?桃花姫は使ってないしそのまま使わせるかぁ。あそこなら監視も警備もしやすいし。)
桃花姫の離れは確かに皇城の近くにある。
しかし、立地的に見ても人が近づく事は少なく絶壁がすぐそばにあり、分かりやすく言うと何かあれば陸の孤島になるような場所である。
彼はそこにミコトを置けば管理しやすく、何かあった時対処がしやすいと考えていた。
ただ、それだけに彼女の能力を危険視もしていた。
彼は報告書でミコトの能力の一端を知っていた。
まるで空を飛ぶように屋根を飛び、音も無く屍鬼を屠った実績。
更に実力は容易く上位鬼六匹を屠れる恐ろしさ。
彼の中で目の前の少女に勝てる気がしなかった。
だが、だからこそ彼はミコトを味方に留めておける方策を必死になって練っていた。
それのみがきっと彼にとっての、国にとっての最善の策だと思っているから。
「よかろう、ならば桃花姫のあの離れ。そのままお主の物としよう。別に使っておらなんだ故、構わぬか桃花姫よ。」
「はっ!私に異論はございません。」
「後は報告にもあった知識、だったか…?そちらも皇の名において機密以外は読めるように手配してやろう。」(あぁぁ!!あれだけは絶対に隠さなければ!!あれをまだ確保してないぃぃ!!)
どこの国にも機密文書という物は存在する。
ましてこの皇都高天原は歴史のある古い国の一つだ。
だが君津文書の中に最大級の禁忌があった。
それは前皇の日記である。
そこには皇が小心者であると書かれているのだ。
そんな物を見られてしまっては彼の、いや、皇都の威信に関わる。
だからこそ見られてはならない。
「それと専属の女官もつけてやる。何かあればそいつを通すようにするがいい。」
(女官には申し訳ないけどこいつを監視する為に頑張って貰おう。何があるかわからないし給金に色を付ける形で頑張って貰おう。もう考えたくない。)
内心びくびくと、あてがわれる女官に謝罪しつつ考えを放棄する飛騨彦。
だがこれも一つの策である。
言ってしまえば、あてがわれる女官はミコトに対する首輪である。
一番近くに居る桃花姫が首輪に最適であるが、彼女は皇族。
簡単にその様な立場に置けない上に、飛騨彦は重度のシスコン、ブラコンである。
普段の態度のせいでそれがなかなか表に出せずにいるが、桃花姫やもう一人の弟にそのような役目を背負わせるなど出来ない男だった。
「了解した。ミコトはあなたに感謝する。」
(感謝と言ったな?よし!それにしてもますたぁなる者が何か知らんが恩を恩で返せとはしっかり教えた!偉い!これでうちに恩を感じて危害を加えるような事しないでくれるといいなぁ・・・。)
「桃花姫、書庫へ案内してやれ。」
「かしこまりました皇。」
そう言ってミコトを連れて桃花姫は謁見室から出て行った。
それを見送り、もう彼女らに声が聞こえなくなったであろう時、周りに居た華族達が一斉に声を荒げだした。
「皇!なぜあのような化け物を皇都内に居れるのですか!?何かあったらどうするのです!?」
華族達はいつもこうだった。
自身の保身以外で物を考えない。
けれど華族とはそういう生き物である。
皇都の為と表向きに言いつつ、裏では自分の懐と地位の心配しかしない。
飛騨彦にとって彼らはただの害悪、ただ今排除すると都合が悪いから放置しているだけ。
主に桃花姫と弟にとって都合が悪いから。
飛騨彦にとって都合が悪いだけなら彼はすでに華族達を排除して新しい華族を配置する。
小心者でヘタレな飛騨彦であるが、政治という場面においては相手に感情を探らせずに冷徹に処理する事が出来る。
ただし内心ではビビッているが。
「首輪をつければよかろう?話が通じぬ相手ではないのだ、飼いならせるのなら飼いならせばよいではないか?お主等は保身ばかりだな。」
もうこれ以上煩わせて欲しくないという嘆願、いや彼の普段のふるまいからそれは恫喝であった。
彼は内心では小心者であったが、統治者としては有能であり、周囲には残忍で冷酷な皇として周知されていた。
彼が睨むように周りを見渡せば、全ての華族は黙った。
だが実際はただ単に、しっかりと相手の眼を見て話す事が出来ず、ギリギリまで目を細めているだけであった。
しかし、それだけで元々の顔の作りと今までの周囲の認識から、華族達は黙る事となる。
「これ以上くだらない事で余を煩わせるな。今日はこれまでとする。あれに首輪をつける策を練らねばならぬからな。」
(今しなきゃいけない仕事は特にないし、心落ち着かせる為にお風呂入ろう・・・。疲れた・・・。)
そう言って飛騨彦は華族達を謁見室に置き去り、自分の部屋に戻っていった。
ちょっとリアルでごたごたが多くあまり続きを書けていない状況です。
半月以内には頑張って上げるように努力をしますが・・・遅れたら申し訳ございません。




