第三話 謁見
ちょっと短いです。
その代わり次が濃厚です(ぁ
ミコトは今、城の一室に居た。
そこは謁見室ではなく質素な部屋であった。
無論、何かしらの罪を犯したからではない。
服装が研究用の衣装しか持ってないからである。
皇と合うには、礼儀として欠ける為着替えさせられているのである。
「採寸は合っている様だな。きつくは無いかミコト。」
「問題ない。けれど動きづらい。ミコトは機動性を要求する。」
今ミコトが着ている服は桃花姫のお古である。
急遽の謁見、それも五歳程度の少女の服をすぐに用意出来るはずもなく、急いで用意されたのが桃花姫のお古であった。
けれどお古と言っても桃花姫は現在17歳、年代的にはすでに型落ちといって良い着物であったが、ミコトはそれを着こなしてみせた。
アルビノ少女なミコトだが元々のベースは日本人である石塚の娘。
着せらせている物が着物であるならばよほどの事が無い限り似合わないわけがない。
「むぅ、私の子供の頃より似合っていてなんだか釈然とせん。」
「ミコトに言われても返答できない。ミコトに服飾の機微はわからない。」
「姫様、そろそろ皇の所へ。」
着替えを終えたタイミングで、兵士の人が部屋の外から声をかけてきた。
余りにもタイミングが良すぎたのでミコトは部屋の中をスキャンしてみたが部屋には特に異常は見つからなかった。
兵士に連れられて桃花姫と歩いて行くと、大きな扉の前に着いた。
ミコトの演算マッピングから重要な場所、謁見室である事がわかる。
「皇失礼します!!」
そう兵士が叫ぶと扉がゆっくりと開いた。
中にはずらりと兵士が並び、重鎮であろう者達が立っていた。
そしてその奥、威圧感を漂わせた男が玉座に座っていた。
「皇天照飛騨彦様、件の少女をお連れしました。」
「うむ、下がってよい。」
「はっ!」
そう言うと兵士は下がっていった。
そして皇である飛騨彦はじろじろと無遠慮にミコトを眺めてきた。
そこに色欲などの感情は欠片も無い、まるでこいつが使えるのかどうかという値踏み。
むしろ試されている感覚、この感覚にミコトは覚えがあった。
自身の創造者たる研究者達の責任者でパトロンの男。
兵器としてこの様な小さいのが役に立つのかとあざ笑うかの様な視線。
だがミコトは違和感を感じていた。
確かに視線の感じ方は似ているが何かが違う。
そして玉座に居る者とは違う視線をどこからか感じる。
この部屋に居る生態をスキャン。
そうすると一人、変な者が紛れている事が分かった。
体表は99%人間であるが、中身が違う。
例えるなら蛹であろう、まるで人を繭にして隠れている様な存在が一匹紛れ込んでいた。
「桃花姫、質問がある。」
「こ、こらミコト!皇の御前だぞ!?」
「疑問、なぜ人以外がここに紛れているか。」
周囲がざわりとなった。
当然である、ここに居るのは全員高天原に住まう住人、つまり人であると言うのが彼らの中にある。
確かに亜人なども存在するが、今ここに居るのは人間のみ。
人間以外がここに居ると言うのはあり得ないのだから。
「ミコト、どういう事だ?」
「人の皮を繭にしている存在を感知、敵対勢力か否か。」
人の皮を繭にする、それを聞いて桃花姫は焦った。
その様な事をする魔物は一種類しかおらず、それ以上にそいつは危険である。
それは餓鬼と呼ばれ、人の社会に溶け込み、内部から崩壊させ他の鬼達を呼び寄せるほどの知能がある。
そんな奴が居たという事は上位鬼の存在や皇都に屍鬼がやってきた事もすべて説明がつく。
「くっ!人を繭にするだと!?それは餓鬼!敵だ!!」
「了解、排除を開始する。」
ミコトはすぐに左手を皇の近くに居た一人の女官に向けた。
女官は怯えて座り込んだが、ミコトは構わずにそのままエアバレットを発射した。
桃花姫は彼女の攻撃方法を知っていたからその女官が弾け飛んだと思った。
だが正確には違った、女官の後ろに隠れ、控えていた忍が弾け飛んだのだ。
その場に居る全員が唖然とした。
確かにここには万が一に備えて兵士だけでなく、忍も控えさせていた。
だがそれが餓鬼に侵食され、しかも目の前の幼女に看破されるなど誰が理解できようか。
中身ごと吹き飛んだ忍びをじろりと飛騨彦が見つめた後、一つため息をついてからまたミコトの方に向き直った。
「ミコト、と言ったな。他の忍の位置も分かっているのか?」
「肯定する、ミコトはこの部屋に居る全ての人物の位置、状態を把握している。隠れてみている者はそことそことそこ。」
全て的中していた。
だがそれは当然である、ステルス性能でもない限りミコトのスキャンから逃れる術は無い。
生き物とは生きているそれだけで何かしらの存在を示すのだ。
隠しきる事など不可能。
「なるほど、それで。お主は何が目的だ?単刀直入に述べよ。」
「ミコトはこの世界に関する知識が不足している。ミコトはこの世界について無知である。だからこの国での保護を依頼する。ミコトが提供できるのはこの力のみ。承諾を求む。」
「つまりこの国に力を貸してやるから保護しろと…?なかなか良い度胸であるな。」
そう飛騨彦が言った瞬間兵士達や桃花姫はその場から逃げ出したくなった。
部屋の気温が一気に下がるような感覚。
皇としての威厳、それが十全に出ている姿。
はっきりと言おう、その場に居る一人を除き全員が恐怖していた。
「ミコトの力はあなた達よりも上、それに桃花姫は約束を守ってくれている。それに創造主には、恩には恩で返せと言われた。ミコトはあなたがミコトを保護してくれないと桃花姫に恩を返せない。」
「よかろう、ならば桃花姫のあの離れ。そのままお主の物としよう。別に使っておらなんだ故、構わぬか桃花姫よ。」
「はっ!私に異論はございません。」
「後は報告にもあった知識、だったか…?そちらも皇の名において機密以外は読めるように手配してやろう。」
そう言うと皇飛騨彦は近くに居た文官にすぐ動けと命令を下した。
そして少し考え、女官長にも命令を出した。
「それと専属の女官もつけてやる。何かあればそいつを通すようにするがいい。」
「了解した。ミコトはあなたに感謝する。」
「桃花姫、書庫へ案内してやれ。」
「かしこまりました皇。」
頭を下げてその場を下がる桃花姫について、ミコトは部屋を出た。
ただあの場に居る全員が気づいていない事であったが、ミコトだけは飛騨彦のある違和感に気づいていた。
けれどミコトは特に気にする事はなく、そういうものなんだろうと思い、特に話す事は無かった。
それがのちにあのような事態を招くとは、ミコトの演算能力を持ってしても不可能だったろう…。




