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少女は心を求めている  作者: 猫神父
第一章 高天原
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第二話 皇都炎上

 ミコトは先を歩く女性をじっと見ていた。

 地理の把握の為に、周りを見る事が必須ではある。

 だがミコトは先を歩く比奈姫をじっと見ていた。

 どうスキャンしても日本人と変わらない遺伝子構造をしている。

 けれど違和感しかなかった。

 周りにある植物、先ほどの幻想生物。

 どうあってもここは日本ではない。

 けれど彼女は日本の戦国時代と同じ甲冑を着こみ、世界の最高芸術武器と言われた日本刀を携えている。

 そちらもミコトのスキャンでは日本刀と製法は変わらない。

 演算しても演算してもここは日本、いや地球ではないと判断出来る。

 けれど彼女が話す言葉は日本語で装備も日本の物。

 ここまで似た世界などあるのか、それを彼女を見ながらミコトは考えていた。


 「ミコト殿。もう少しで皇都に着くが体力は大丈夫か?」

 「問題ない、ミコトは戦闘用に創られた人造人間バイオロイド。体力が尽きる事は無い。」


 ミコトが彼女らを助けてから一時間ほど歩いたが、ミコトは一向に疲れる様子を見せていなかった。

 ただ時折、先行する比奈姫等の許可を得てからサンプルを回収し歩き出す。

 そんな事を繰り返していた。

 彼女がここまで回収してきた物、それは一見ただの草である。

 だが本職の薬剤師などが見れば納得するであろう薬草の類である。

 中には一株だけで生涯遊んで暮らせるような、とてつもなく珍しい品すらあった。

 そしてそうこうしてるうちにある程度開けた場所に出てきた。

 なだらかな草原、そしてその向こうに見える城壁。

 そして城壁内から上がる火の手。


 「なっ!?高天原が炎上だと!?」

 「姫さん!急いで向かいましょう!!」


 走り出した桃花姫達に続いてミコトも走り出した。

 現状を元にシュミレート。


 『敵の目的、不明。敵の数、不明。敵の武力、不明。味方の戦力、桃花姫とお付き以外不明。彼女らが道中語ったこの世界のある程度の実力についてに置いて、ミコトが負ける要素は限りなく低い。想定外の事象以外の場合、「サタン・インパクト」を引き起こした存在と同列の生物が居ない限り負ける確率は0.1%と判断。相手が人であるならば、自分のこの見た目の幼さを利用。幻想生物であるならば、幼さの利用は不可能、実力行使。武器はナイフとエア・バレット。そして切り札であるエーテルクロー。現状、「エーテルクロー」の使用は国際条約により認可が下りなければ使用不可能。ここが異世界であると仮定しても、人造人間バイオロイドの規定により使用不可能。使える兵装はナイフと「エア・バレット」だけである。敵総数不明の為、現状の装備に不安あり。場合によっては拾った武器による戦闘を検討。第一優先事項は桃花姫の安全確保。第二優先事項は皇都高天原の戦闘行為終結。』


 シュミレートを終えたミコトは懐からナイフを取り出した。

 このナイフはただのナイフではない。

 ミコトの体内エーテルを利用し、超微振動を起こす事が可能となる武器である。

 進んだ科学とも錬金術とも言える合成金属、マデュライトによって生み出された一つの対人兵器である。




 五人が都に入ると阿鼻叫喚の地獄であった。

 ミコトの生物学の知識に無い幻想生物だらけだったのだ。

 彼女の創造者の一人が好んで居た映画という物で見た覚えのある幻想生物、言ってしまえば「ゾンビ」である。

 そこでミコトの行動方針は確定した。

 相手が人であるのならば判別に比奈姫の指示が必要であるところであったが人でないなら話が別。

 手近に居たゾンビをエア・バレットで吹き飛ばしたが簡単に砕け散った。

 ミコトは、この程度なら負ける要素は皆無と判断した。


 「桃花姫、ミコトは単独行動でこの都市の幻想生物を倒して回る、終結後の合流ポイントを設定して欲しい。」

 「くっ、それもそうだな、あの一番大きな建物が見えるだろう。この事態の収拾後、そこに来てくれ、指示は出しておく。」

 「了解した、これよりミコトは戦闘用人造人間バトル・バイオロイドとして戦闘を開始する。」


 そういうと彼女は空を舞った。

 飛んでいるのではなく跳んだのだ。

 そして、目視のしたゾンビをエア・バレットで上空から粉砕していった。

 時折襲われかけている人も居たがそれも救助しつつエア・バレットで応戦。

 応戦しながらミコトはゾンビ達のスキャンをしていた。

 組織成分などは多少腐敗が目立つが80%人間である。

 だがその腐敗成分が問題である。

 その部分が人間ではないのだ。

 詳しく調べなければ判断出来ないがウィルスに近い何かが蝕んでいる。

 ミコトはその強固さ故に、例え噛まれるようなへまをしてもその歯が喰い込む事も無いだろう。

 けれど皇都に住まう人間達は違う。

 彼らもスキャンしたが99%日本人と変わらない。

 このウィルスは彼らにとって猛毒である事は確定的に明らかである。


 「サンプルの回収、ワクチンの製造…。この世界にこの様な生物が居るのであれば必須事項と判断。サンプルを回収、研究が必須。」


 そう言ってミコトより少し年上の上等そうな鎧を着た少年に襲い掛かろうとしていたゾンビをナイフで両断した。


 「な、なんだお前!?」


 少年は驚いた様にしていたが腰が抜けたのであろう、立てては居なかった。

 そんな少年にミコトは返答する必要はないと判断し、両断したゾンビからウィルスのサンプルとなる部分を摘出し、容器に入れ、それを袋に仕舞いそのまま空を舞い、戦場をかけた。

 その少年がミコトに淡い恋心の様な物を芽生えさせたのは言うまでも無かった。




 数時間後、多少火の手は上がっている物の、ミコトが皇都をスキャンした結果残ったゾンビは皆無だった。

 ミコトは現在、皇都全体を見れる場所にて噛まれた可能性のある物は皇都の守備隊によって運ばれているのを確認していた。

 噛まれた可能性がある人物がどうなるかはミコトは知らない、だがサンプルを持っている身としてその結果を知る必要があるであろうことは考えていた。

 しかし、ある程度一段落した辺りで、桃花姫と思しき人物が、合流ポイントに到着したのを確認した。

 ならばと今現在居る地より跳躍し、ミコトは桃花姫の前に降り立った。

 桃花姫は驚いていたがそれ以上に警戒したのは周りに居る道中一緒ではなかった兵士達だ。


 「貴様!何者だ!!」

 「まて、お前達!彼女は私の命の恩人で、この都を守る手伝いをしてもらった者である!無礼は皇族として許さん!!」


 そう桃花姫が叫ぶと兵士達はすぐに矛を収めた。

 彼女は道中自分をお飾りだと言っていたが、それなりの権力があるらしい。


 「スキャンの結果、この街に残存敵対勢力は確認できない。現在のこの街は平和を勝ち取ったと言って過言ではない。」

 「報告に時折、屍鬼共が吹き飛んだというのがあったがそれはミコト殿のおかげか?」

 「肯定、ミコトは持ち得る手段を持ち居て敵対勢力の排除を行った。佐奈姫との交渉を反故には出来ない為、可能である全ての手段を講じた。」


 まるで当たり前の様に、無表情に言い放つ少女に兵士達は不信を覚えた。

 それも当然である、彼らにとって屍鬼とは楽な相手ではない、四人がかりで安全に倒せる、そういう物なのだ。

 報告では確かに何百体もの屍鬼が目の前で破裂したとあるがとてもこの少女がやったとは思えないのは当然の話である。

 こんな五歳位の少女が倒せるはずなど皆無である。


 「現在、安全は確保されている。この幻想生物のサンプルの解析をし、対抗策を講じる為に研究道具の使用許可が早急に必要と判断。ミコトは桃花姫に、早期対応を望む。」

 「わかった、私は兄上に報告してくる。おい、猿田彦。ミコト殿に私の使える権限で出来うる限りの研究道具を早急に手配しろ。」

 「あいよー姫さん。けど姫さんその間ミコトちゃんはどこで待たせておく?」

 「私用の離れがあるであろう、一時ではあるがそこをミコト殿の家としておく。これは皇女としての命である。」

 「はっ!んじゃミコトちゃん、案内するからついてきて。その後すぐ研究道具手配しとくから。」

 「了解、ミコトはあなたについていく。」


 訝し気に見る番兵達を無視して、ミコトは猿田彦、最初に桃花姫と共に居た兵士に着いて行った。

 連れて行かれたのは簡素な住まい。

 ミコトのスキャンで確認したが姫の離れとは名ばかりな状態の場所だった。


 「あー・・・。結構放置してたからこうなってるかぁ・・・。屋台骨はまぁ頑丈だから崩れる様な事は無いけどまず手入れする?」

 「その案は承認できない。研究道具の調達が最優先事項、この辺りの清掃許可があるならばミコトは一定期間住まう環境に整える事は可能。ミコトはあなたに許可を求める。」

 「ん~?別に綺麗にする分には何にも問題ないと思うぜ?木材なんかはすぐに用意は出来ないけど後で用意もさせる事可能だし、功労者にお願いするのもあれだけど綺麗に出来るならしといてくれよ。」

 「許可を確認した。ミコトはこの一帯を清掃する。あなたは研究道具の調達を優先して欲しい。」

 「あいあいよ~。んじゃちょっくら行ってくるよミコトちゃん。」


 そういって猿田彦はミコトから離れて城の方へ走っていった。

 ミコトはその間に周りの様子をスキャン。

 シュミレートを開始した。


 『木造家屋、現状倒壊の危険無し。ただし壁、屋根に破損有り。現状持ち居れる手段、壁はエーテル使用による土製錬金による補修。屋根の材質は藁。雑草の中に代用品は無し。ミコトの性能から雨が振ろうと病気になる可能性は皆無。屋根は当面放置。一時的であるが住処になるならば問題は無いレベル。研究道具の文明レベルにもよるがミコトの研究技術であれば壁さえ補修しておけば支障は出ない。』


 そう判断したミコトはまず最初に周りの雑草から排除を開始した。

 雑草の中に有用な成分を持つものは無い、いわゆるただの雑草である。

 けれど壁を土で補修するのでその時に出来た穴を使い、たい肥などに再利用しておこうと一か所に集めていた。

 ある程度雑草を片づけ終わると離れも多少見れる様になった。

 この位で十分だと判断したミコトは離れの隅に穴を掘りだした。

 別にその程度道具は必要が無い、少し地面に手を突き刺せばそのまま"地面を持ち上げる"。

 それだけで、穴は出来た。

 補修に必要な分の土も今の一回で過不足無く採取も出来た。

 後は心臓部のエーテル製造路を稼働させ採取した土と混ぜ合わせる。

 それだけでただの土は核シェルター並みの硬度となった。

 それをナイフを使い丁寧に塗っていく。

 研究者の一人に日本の和室文化に詳しい人がいてその人の言葉を思い出しながら。


 『いいかい?日本のワビサビという物は奥深い!特に和風建築、あれは素晴らしい!土を使った壁!煉瓦にするでなく木で佳こうでなく!土そのものを固めて作る様式美!あぁ故国イギリスにはない素晴らしい日本家屋!!』


 彼は日本人じゃないに関わらず、日本家屋に対してとてもマニアックであった。

 そしてこの家屋は日本家屋と寸分たがわない物である。

 だから、彼から教わった技術はそのまま応用出来る。

 そして数刻後、研究道具を持って戻ってきた猿田彦は驚愕するしかなかった。

 廃屋寸前だった離れが屋根はそのままに、まさに新築同様になっていたからだ。

 あれはもう屋根の素材さえあればそのまま家屋として住める、そう断言出来るレベルの状態だった。


 「猿田彦を確認。研究道具の調達、完遂したのですか。」


 まるでその状態が当たり前だと言うようにミコトは扉を直していた。

 その姿、まさしく魔法。

 この世界にも魔法と言う概念はある、けれどそれはおとぎ話の世界だ。

 実際のこの世界の魔法に近い物は、陰陽術師と呼ばれる者達が使う式術。

 紙に呪を書き、それを発動させる事により効果を発揮する。

 けれどもミコトが今やっているのは猿田彦から見ればまさしく魔法であろう。

 正しくは高度文明の産物である錬金術と呼ばれる物であるが。

 それでもミコトが行っているのは魔法にしか見えなかった。

 ナイフ一つで次々に修理していく姿、まさしくおとぎ話の魔法使い。

 今更ながらに猿田彦はミコトを恐れた、人間など簡単に倒せる上位鬼、人を喰らい仲間を増やす屍鬼、それらをまるで疲れた様子無く圧倒する戦闘力。

 そして今まさに目の前で起こっている魔法の様な所業。

 "決して敵に回してはならない"そう確信するのに十分であった。


 「あ、あぁ。姫さんの権限で用意できる最大限の物を持ってきた。と言ってもそこまで上等な物じゃないけどこれで我慢して欲しい。」


 ミコトが猿田彦の持ってきた研究道具を見てみる事にした。

 文明レベルは確かに日本の戦国時代レベルだろう、けれど研究道具は明治辺りの物に近い。

 ミコトが感じたのは違和感である、文明レベルのチグハグ差に。

 ただそこを追求する気は無かった。

 一番難しいであろう研究道具の調達でこのレベルの物を用意してくれたのだ。

 知識についてもこの分なら問題は無いだろう。


 「問題ない、このレベルの物ならばミコトの技術で補える。協力、感謝する。」


 そう言ってミコトは猿田彦から研究道具を預かり、離れの中に入っていった。

 ミコトとしては文明レベルが低く、子供の夏休みの宿題で使うレベルの研究道具だが、ミコトの性能であればその程度の物でも技術レベルを2~3世紀発展させた研究が出来る。

 調べる事はいくつかある、まずは最初に出会った幻想生物「上位鬼」と呼ばれる生き物の表皮だ。

 調べると、単純に鬼と表現しているがこれは生物学的には豚に近い。

 ちょっと皮膚が硬い程度の豚。

 猿が人に進化した様に、豚が鬼に進化した程度であるから問題ないとすぐにそちらは打ち切った。

 進化の過程は気になるが現状では調べる為の設備が足りない。

 そして幻想生物「屍鬼」と呼ばれていたゾンビの研究。

 こちらは興味深い事が分かった。

 それはただのウィルスではない、エーテルによって変質したどこぞの病原菌が自己進化をし、ナノマシン化しているのだ。

 エーテルによる変質、それ自体はミコトにとって不思議ではない。

 けれどこの世界にもエーテルによるなにかしらがある、それは脅威に他ならない。

 ミコトと同系統の人造人間バイオロイドが存在するか、それとも純粋な自然のエーテル流があるか。

 前者であれば現状最上位の脅威になりえる、というよりも相手が不明であるため脅威指数はミコトにとって不明過ぎる。

 後者であってもそれは同じである、いくら人造人間バイオロイドとはいえ、高濃度のエーテルは彼女の細胞に存在しないアポトーシスを引き起こす要因になりかねない。

 純度の低い物であればそのまま彼女が利用できるが、これも調べなければ脅威指数が見えない。

 現状、安全は桃花姫により確保されているとはいえ、不確定要素をそのままにしておくのはミコトの創造者達マスターの願いである、「幸せに生きて欲しい。」という目的の阻害となる。

 これは最優先でこの異質な世界の知識の確保、拠点となる地域の確保が必須である。

 このナノマシンの不活性化の研究もしなければならない。

 そんな事を考えていると、扉をノックする音が聞こえた。


 「ここにミコトという者が居ると聞いて居る。おうろが汝との謁見を求めている。すぐに準備を整えよ。」


 現状、味方となってくれるのは桃花姫とお付きであったあの三人だけだと言うのはミコトは理解して居た。

 そしてこの皇都、封建制度が確立されていると考えるのが妥当であろう。

 ならば研究用拠点の確保をする為に、王国の後ろ盾は必要であると考えるのが普通である。

 シュミレートする必要もなくミコトはその申し出を受けるのであった。

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