序章 自由の翼
今回が本当の物語の始まり部分です。
序幕 自由の翼
新月の夜。翼を持つ少年、王城東の塔、頂にて眼下に兵士たちを見下ろす。
「侵入者だ」、「捕まえろ!」、「あっちを探せ」
「おうおう。みんな張り切ってるねぇ。松明のおかげで下が見えて、大助かりだ。
んー……(大きく伸びて、深呼吸) やっぱりいいなぁ、新月の夜は。肺が冷えて気持ちいいし、何より仕事がしやすい。さぁ、みんなが混乱させてる間に、終わらせなきゃな!」
少年塔より飛び立つ。
「風もないし、飛ぶには最高の日だ……親父はいつも抜け目ないなぁ。空の機嫌まで、ちゃんと織り込み済みかよ。 (空を舞うことしばらく) よし、予定通り、窓に到着だ」
少年混乱に紛れ、窓を割る。
「こんばんは、お姫様」
「 (ベッドより立ち上がり) ……誰です? 私を王女ソフィアと知っての狼藉ですの?」
「もちろん、知っているとも……。 (笑みを浮かべて) 俺の名はハルク。義賊……いや、盗賊だろうな……。民の為、今から、お前を連れて行く。危ないから、騒がないでくれると助かるんだが……」
「ノックもせずに入ったかと思えば、随分と勝手なことを言いますのね……。 (ハルクを指さして) 見たところ、その翼、額の印。半獣のようですわね。
野蛮な……教養がないとはいえ、勝ってばかり並べ立てて、頭が悪いにも程がありましてよ」
「くっくっく……はぁ。半獣か……。残念ながらソフィア。その言葉を何の疑いもなく使うのなら、バカはお前だ。世界の姿も、女神の意志も、何も分かっちゃいない」
「……っ…… (一つ低い声で) あなた、私を侮辱なさいますの?」
「あぁ、だが、今は説明している暇はない。聞く耳がないなら、力ずくだ……不本意だけどな」
「ふんっ、やはり蛮族ではありませんの……」
ハルク、一枚のタロット取り出して、目を閉じる。
「光の精よ、闇を焼け!」
「何っ? 見えない! きゃあっ」
閃光、闇より出ずる。
ソフィア、閃光の苦しみより逃れると、眼下に広がるは、彼女が住まう王城の庭。
兵士ら、間の抜けた顔。松明片手に、空舞う翼を見送る。
「……飛んでる? というか、早く降ろしなさい!」
「当たり前だ。盗賊が飾りで、こんなもんつけるかよ。それに。今降りるわけにはいかない……さぁ、暴れるなよ。落ちたら洒落にならねぇぞ!」
「嫌よ! 放しなさい、無礼者。 (力なく) 私は、この国の……」
銀の髪の騎士、城壁に現れる。
「姫様!」
「パーシヴァル……そこにいるのは、パーシヴァルね!」
「出たな、貴族……高度上げちゃうぜ」
「パーシヴァル! (離れつつ行く騎士を探して) 信じています。あなたはきっと、私を助けてくれる。いつだって、そうですのよ」
剣掲げる彼の騎士、大陸に轟く、騎士の中の騎士。
剣、僅かな光跳ね返し、白銀に輝く。
その剣に込められし意志を知るは、女神含めて、片手で足りる。
次回投稿は遅くなります。