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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [後編] ~
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調査ファイル 086 [仮面を外した道化師]

声が聞こえた。

それも今までにないドスの聞いた、僅かにも震えがくるような。

音のする方へと目線をやると、彼らはいた。

今以上に逢いたくない、人間たちだった。


「今度こそ・・・逃がさねぇぜ」


やや疲れを見せながらも、こちらへと銃口を向けていた。

辺りは暗く、逃げ道もこれといって見えない。

袋のネズミとは、まさにこの事を言うのだろうか。


「・・・!

り、リーダー!!」


1人が驚きの表情を浮かべ、剛田の注目を反らそうとしていた。


「何だ!」


怒りに満ち溢れいる彼は、銃を握る力がより強まっていた。

下手したらグリップが折れるのでは、と思わんばかりに。


「あ、あれ・・・!」


そう言って指を差す。

釣られて仕方なく目線を指の方へと追いやると、彼もまた絶句していた。

追いかけてきた3人は、もはや私たち以上の沈黙を表現していた。


「・・・は・・・ハハ・・・フハハハハッ!

こいつは・・・こいつはスゲェ!

上物なんてモンじゃねぇ、国1つ動かせるぜこりゃあよ!」


「やりましたね、リーダー!」


もはや置いてきぼり、というべきか。

それでも彼の銃口は私の額をロックオンしたままだ。

少しでも動こうものなら―――蜂の巣の出来上がり。


「いやぁ~・・・ヘッ、悪かったな、オイ」


驚いた、剛田が私たちに向けて謝罪を始めた。

だが、それは決して喜ばしいものではなかった。

・・・まぁ、当然といえば当然に。


「お前たちを邪魔モノ呼ばわりしていたけどよ、まさかこんなスペシャルなプレゼントを用意してくれてたとはよう!

礼を言うぜ、心から」


それでも下がらない銃口。

それどころか、構え直してしっかりとこちらへ狙いを定めている始末。

抜かりないな、この男は。

差し詰め、このダイヤを独り占めするつもりだろう。

あの目はそうだ、間違いない。


しかし、その予想は違った形に裏切られることとなった。


「本来ならここでおさらば・・・といきたいところだが、もう少しだけ生かしといてやる」


「何・・・?」


何故かその場での処刑を延期されてしまった。

こちらとしては好都合なのだが・・・一体彼は何を考えている?


「オイ、ハンマー」


彼は仲間からハンマーを受け取ると、ダイヤモンドの元へと歩み寄った。


「待て、そいつは・・・!」


「欠片ぐらいじゃ魔物は出て来ねぇよ」


「な・・・!」


更に驚かされてしまった。

彼はこの存在を知っていた・・・!?

書庫の本を読んだわけでもなく、ここの出身でもないのに、何故知っていたのか。

そしてその手慣れた感じの態度―――私は違和感の波に押し寄せられていた。


「それに、コイツは火に弱い。

加えて炎の灯りには反応しねぇんだよ。

俺が何も知らないとでも思ったか、バーカ!」


そして慣れた手付きで、石塊を丁寧に砕いていく。

サッカーボール程の大きさに取り出したダイヤモンドを、仲間に点けさせた松明に当てながら、その輝きと美しさに見惚れていた。


「あぁ・・・これが伝説の―――」


確かに、彼の言う通り・・・ダイヤモンドは何の反応も示さなかった。

それどころか、炎に照らされてより紅く映える輝きは、私としても綺麗に捉えることができる。

すると彼は、手に持ったダイヤモンドをこちらへ向け始めた。


「お前ら、よーく見ておけ。

冥途の土産だ、その目に焼き付けとけ。

世界未発表の、ウルトラトレジャーをな!」


暫く掲げた手に、光輝くダイヤモンド。

それを見た私は、1つの疑問に対して葛藤していた。

彼はこのダイヤモンドを手に入れて、一体何をするのか。

大原が言っていた“電話の相手”・・・

もし借金の返済取立だとしても、今持っている量だけで返済どころか、有り余る程お釣りまでくる。

本当にそれだけなのだろうか。

或いは誰かに“何か”を頼まれて、ここまで漕ぎ着けたのか。

あの性格だ、何しでかすかわかったもんじゃない。

しかし・・・


「ふう・・・これでいいだろう。

んじゃ、本日2回目のショータ~イム!」


剛田は銃を構え、再び私へ照準を定めた。

もはや、これまでか―――




「―――っ!」




・・・辺り一面に、銃声が鳴り響く。

弾丸は一発、一発分の銃声だ。

発砲の瞬間、私は目を瞑っていたらしい。

視覚では確認できなかったが、音で判断している。

しかし・・・どうしたのだろう、痛みを全く感じない。

それどころか、まだハッキリとした意識すら持っている始末。

ゆっくり目を開けると、目の前には剛田が立っていた。


しかし、様子がおかしい。


「余計なマネすんじゃねぇよ―――」


「くっ・・・!」


銃口から少しだけ煙が立ち上っていた。

そして振り返ると、大原が右腕を押さえ、片膝を付きながらしゃがんでいた。

押さえていた左手が次第に赤く染まり、衣服はみるみるうちに血に染まっていく。


「大丈夫か!」


私は彼女の元へ駆け寄り、ワンピースを少し千切り、その布で彼女の腕をギュッと巻く。

痛みに苦しむ顔に同情を覚えながらも、再び剛田へと怒りを蓄積していた。


「貴様・・・!」


「下手に銃なんか扱いやがって・・・

黙っていりゃあこんな痛いメ見なくて済んだのによ」


肩を(すぼ)ませながら、両手を横に上げていた。

呆れた、と言わんばかりのポーズだ。

銃さえなければ、今頃懐に入ってボコボコにしていたのだが・・・


「ったく、本当に邪魔ばっかしやがって。

今度こそは・・・!」


仲間の2人も銃を掲げ、こちらへと照準を定めた。







―――ギロッ・・・







私は何かの気配を感じた。

この3人が来る前に感じた、あの嫌な気配。

先程剛田は欠片なら問題ない、みたいなことを言っていた。

しかしあの手に持った石塊から、悍ましい何かを感じる。


刹那―――


「なっ・・・!」




ダイヤモンドが、突然光り出した。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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