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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [後編] ~
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調査ファイル 081 [緊急脱出]

その時だった―――




「な、何だ!」


窪みに嵌め込まれた時計と霊珠が、太陽も泣き叫ぶ程の光を放つ。

光源により、時計は狂ったように針を回し、霊珠は内部で小さな銀河を持っているのか、蜷局を巻いている。

そしてその引き金を引いたのは、何とコウキ君。

更に、もう一人・・・


「みんな、飛び込んでっ!」


その人はコウキ君を脇に“抱え”、薔薇の咲き誇る奥の部屋へと走り出す。

タイミングを見計らっていた私は、鈴音と共に奥の部屋へ飛び込んだ。


目を開けられないレベルまで達した光は、溜まり溜まったその鬱憤(うっぷん)を晴らすが如く、凝縮された力を解き放つ。

それは化学では証明できないであろう謎の衝撃波となり、剛田たちを吹き飛ばす。

間一髪薔薇のある部屋に飛び込むことが出来た私たちも、その衝撃波の被害を受ける。

と言っても、爆発のような力によって部屋の奥の方へと飛ばされただけで、大した怪我もなかった。

すぐに目を覚まし立ち上がると、コウキ君と鈴音は先へと進んでいた。

私は3人の後を追った。




薔薇の部屋の奥に階段があった。

懐中電灯でどうにか照らしながら降りていく。

その後は暫く前を走り続けた、そこがどんな道でどういった感じかもわからずに。

その道中、命を救ってくれた“彼女”に事情を聴く。


「やはりあなただったか・・・大原さん!」


先程まで私たちに銃を向け、剰え処刑までしようとしていた人物。

大原 瀬奈・・・オカルト研究会の一員だ。

剛田をリーダー以上に敬っていた―――筈だった。


「騙していてごめんなさい。

こうでもしないと、あの場を凌げなかったから・・・」


「いつからだ?」


「堂島君が殺さる少し前よ」




つまりはこういうことだ。


堂島氏と大原は宝・・・薔薇について事前に気付いていた。

そしてそれを世に出してはいけないということも。

しかし堂島氏は独断で剛田に反発した・・・

結果、彼だけ殺害されてしまった。

生き残った大原は、同じくして宝を探していた私たちに陰ながら協力し、剛田たちを止めようとしていた・・・と、いうことらしい。


「もし私たちが味方にならなかったらどうしていた?

確証もないだろう」


「・・・堂島君の遺体と一緒に幽閉されてたでしょ?

あれ、私のアイディアなの」


突拍子もないことを言い出していた。

しかしあの時私たちを幽閉すれば、否応なく剛田に敵意を抱く可能性はある。

そして剛田に敵意を抱けば、彼女の協力を受ける・・・ということを、事前に見越していたらしい。

『敵を欺くにはまず味方から』とは言うが、そもそも味方になっていなかった上にやることがエグい。

本当に善人なのか、イマイチ疑いの霧が晴れずにいるのだが。


「ああ、事情は察している。

だが詳しい話はあとだ―――!」


現在進行形で、銃を持った“鬼”に追われている。

彼らの姿は見えないものの、後方から血気迫る強い執念というか思念というか、何となく伝わってくるような気がする。

ここは一先ず・・・逃げるべし。




一頻(ひとしき)り逃げると、いくつか分岐する道に出くわしていた。

これはシメた、撹乱(かくらん)にはもってこいだ。


「こっちだ・・・!」


適当に選んだ道に逃げ込むと、皆は膝に手をついて肩で息をしていた。

無我夢中で走っていたものの、振り返れば相当走っていたのだろう。

斯く言う私も、かなり足にきている。

まして腕も血だらけ・・・何ともまあ、踏んだり蹴ったりな。


「みんな・・・大丈夫?」


「ああ・・・」


「ええ・・・何とか」


「・・・大、丈夫」


口ではそう言ってはいるが、パッと見誰一人大丈夫には見えない。

相当走ったからな。


「よく付いてこれたわね、あの時。

まさか“あんなに光る”なんて思ってなかったでしょう?」


「“お告げ”があったんでね。

それに、協力者と認知していたからこその判断だ」


意表を突かれたばかりに、少しだけ驚いている。

そう、少しだけ。


「・・・気付いていたの?」


「―――匂いだよ。

5人の中で甘い香りを漂わせていたのは、あなただけだからな。

女性特有の香水だってことはすぐにわかる」


それは失礼、お手上げです―――と言わんばかりの表情。

意外ともあっけらかんとしていた。

しかし愕然とまでいかないところを見ると、相当肝が据わっているようだ。


正体が明らかになったところで、1つだけ深呼吸をした(のち)、大原の目を覗く。

改めて事のあらましを伺うことにした。




「では、もう一度整理しようじゃないか」


「―――そうね」




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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