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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [後編] ~
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調査ファイル 080 [DEAD END]

窪みに嵌め込み、私と剛田はその場から少し下がる。

すると、またもや轟音を響かせ、壁が開く。

二つの鍵は左右に別れ、佇まいはまさに、上手(かみて)下手(しもて)で財宝を守る護衛騎士(ナイト)


「なるほど、『一対の眼差し』・・・ね」


しかし、見つめても何も起こらない。

“見てはいけない『目』”・・・という代物は、これではないらしい。

先程奴らは“それぞれを”照らしていたが、何も反応はなかった。

あの文章は何だったのだろうか・・・


そして開かれた先には―――またしても広々とした空間がある。

しかし今までの場所と違う部分が1つだけある。

それは空気・・・奥の部屋から、妙に綺麗な空気が流れ込む。


(どういうことだ、閉鎖された空間に―――酸素が充満されいる・・・?)


最初に剛田が銃口を突き付けた際、私は松明を落としていた。

そのせいで火は消えてしまっていた、カッチリとな。

もし点いてたらかなり燃え上がっていただろう―――危ない危ない。

しかしこの部屋、どこかに地上へ通ずる穴や道すらない。

空気が漏れ出す理由がイマイチわからない。

本来ならもう少し調べてみたいところだが、後ろの奴らはそんなことはどうでもいいらしい。




「これだ・・・見つけたぜ、お宝をよぉ!」




―――何を言っているのか、全くわからなかった。

いきなり私の前方に出てきては、これまたいきなり叫び出す剛田。

腕を左右に広げ、素晴らしいと言わんばかりのポーズを取っていた。

真っ暗な部屋、宝箱もない部屋で、何を見つけたのか。


「・・・何も見えないぞ、剛田さんとやら。

もっと照らしてくれないか?」


「あ?俺に指図すんのかコノヤロウ・・・」


調子乗ってんじゃねぇ・・・と言わんばかりの眼飛ばしだ。

だが忘れてもらっては困るね。


「財宝を見せるんだろう?

『冥途の土産』として―――」


ハッと我に返ったのだろう、作り上げた強面は次第に薄れていく。

そして薄笑いを浮かべながら、私の肩に手を回し、懐中電灯を前方へと向けた。


「ほらよ、これがこの島に眠る財宝だ。

しかと―――目に焼き付けとけよ」







刹那、本当に刹那だったんだ―――理解できなかった。

目の前に広がるは―――植物だった。

緑色の茎が伸び、光無きこの空間で葉を広げている。

しかし触れよう者には、容赦ない裁きを下さんとする“棘”が備えられていた。


「あれは・・・薔薇?」


ただの薔薇なら、私だって呆れてしまうところだっただろう。

だが、剛田がライトの位置を若干動かした時、不覚にも心がトクン―――と、ときめいてしまった。

薔薇が奏でる美しさの象徴、その花弁は・・・青々としていた。

その『青さ』を脳内をフル回転して理解した途端、目の前にあるものがどれだけ素晴らしい・・・もとい、とんでもないものだと認識する。


「青い・・・薔薇!

何故だ、あれは人工的に作られたもの・・・自生はしない筈だ!」


「・・・それが『するんだよ』なぁ、これが」


未だ誰一人として自然界で見つけた者はいない。

遺伝子操作で“作り出すこと”には成功したが、現代で作成できるのは青というより紫に近い色。

しかし私の目に映るのは、紛うことなき紺碧(こんぺき)―――

酸素が充満していたのはこれのせいか。


「金や銀、宝石を探す筈が、まさか本当に大きいヤマだったとは・・・

我ながらツイてるぜ」


「お前・・・最初から知っていたのか?」


「ああ。

青い薔薇が自然界にあることも、ここで自生していることもな」


剛田は薄気味悪い笑みを浮かべ、そう答えた。

殴りたくもなる、邪気メーターさえ振り切ってしまうその態度は、耐えに耐えきれないところまで達していた。


「ま、あの方様様だったな」


「リーダー、お話はそこまでに―――」


後ろから呼び止めが入った。

その声は女性・・・『大原(おおはら) 瀬奈(せな)』だ。




(あの方・・・?)


黒い人ならこんな奴に話なんかしないだろう。

では誰が?何の為に?

いやそんなことはどうでもいい、それよりこれからどうするかだ。

奴らの狙いはここの薔薇を回収し、世間に提示すること。

大方『売る』のだろう・・・目に見えている。

しかしこれが世に出回るとなれば、どれだけの金と人が動くのだろう。

下手したら死人が出るぞ・・・なんせ、あの女が黙ってはいないだろうからな。


恐らく、この場で射殺して回収作業に掛かる筈だ。

となれば、チャンスは今しかない。

しかし銃によって行動は制限されている、言わば『狭義の軟禁状態』だ。

鈴音なら振り払って銃を取り上げることも可能だろう。

私も剛田の銃を取り上げることくらい、大したことじゃない。

問題はコウキ君―――彼は間違いなく“死ぬ”。

さて自問自答だ黒川レイ・・・デッドエンドに立たされたお前は、ここからどうする?

答えろレイ・・・応えろ私―――!




「ぐぁ、眩しいっ!」


「すみません・・・」


大原はふいにライトを剛田の方へと向けていた。

何か気になるものがあったのだろうか。




カチッ―――




(ん・・・何だ、今の音は?)




「リーダー、こいつらを殺すのは、私にやらせて頂けませんか?」


「あ?どした?」


コウキ君を拘束していた大原は、突然物騒なことを言い出した。


「この3人、私たちの邪魔ばかりして・・・

リーダーのお手を煩わせたのが許せないんです」


どうやらリーダーにお熱のようだ。

それでカッときて―――フッ、最後の『大一番』ってわけか。


「ほう・・・

いいだろう、その役目、お前に任せるぜ」




大原は私と鈴音を扉の前に(ひざまず)かせ、ヘッドロックで拘束していたコウキ君をこちらへ運び出す。




「・・・・・・」


「え・・・?」




「お前、これを持て」


そう言うと、大原はコウキ君に懐中電灯を持たせた。


「死ぬ前にもう一度この光景を目に焼き付けておけ。

これが“最期”だからな」


コウキ君は両手で懐中電灯を構え、前方を照らす。

ガタガタと震えていた姿は、何故だか凛々しく、日本刀を構えた侍のような目を携えていた。


「では、終わりへのカウントダウンだ・・・」




3・・・




2・・・




1・・・!




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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