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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [後編] ~
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調査ファイル 079 [高みの見物]

この声は・・・リーダー格の男、剛田(ごうだ) 雄吾(ゆうご)か。

コイツら・・・背後でせせら笑っていやがる。

目の前ではコウキ君が相変わらずの狼狽っぷり。

しかし意外なことに、鈴音は冷静でいた。

バッチリこちらを睨んではいるけど。


「いやぁ~お前たちが仕掛けを解除してくれて助かったぜ。

手間が省けたってもんだ」


「“高みの見物”とは・・・随分とエラくなられたもので」


軽口を叩いてはいるが、正直余裕はない。

得体が知れない以上、いつ銃口から鉛玉がぶっ放されるかわからない。

煌びやかなこの場所をルビーカラーに染めるのは気が引ける。


「エラくなるのはもう少し先だ。

この先の宝を頂いた後でな」


「・・・悪いことは言わん、やめておけ。

お前らに扱える代物じゃない」


「よく言うぜ、お前たちだって探しに来てたじゃねぇか。

こう言う言葉を知ってるか?

『同じ穴の貉』―――ってな」


鼻で笑いながら、銃口を少し強めに突き付ける。

やはり銃を持てば最強なんだろうな、人間という生き物は。

あとお前らと同じカテゴリーにするんじゃない。

―――癪だ。


「・・・それで、私たちをここで()るのか?」


どこかに生まれるであろう隙を探す為、敢えて行動を促す発言をしたつもりだった。

それが返って脅しになったのだろう、コウキ君が物凄いブルブルと震えている。

涙腺も堤防決壊ギリギリといったところか。

そして剛田はその催促を真に受け、再び鼻で笑いながら話を進める。


「いや、まだ殺しはしない」


これには私も予想外だった。

それは後ろにいた仲間3人も同じだったようで、剛田に質問というか抗議を振りかけていた。

しかし剛田は全く動じることなく、冷静に彼らを諭す。


「コイツらはこの島に眠る宝への道を開いてくれた。

だからその礼には答えないとな」


すると剛田は後頭部に当てていた銃口を離す。

刹那、彼は右手で私の肩に手を回し、組んだ状態で銃口を蟀谷(こめかみ)に当てる。


「お望み通り宝は見せてやる。

だがその感想は―――天国の堂島に聞かせてやれ」


あくまで殺すのは変わらないというわけか。

ハッ!上等だ・・・やれるモンならやってみろ。

ただただ指示に従ってヘーコラするほどバカじゃない。

怪盗たるもの財宝を前に屈したりはしない・・・!


「お前ら!・・・付いてやれ」


後ろにいた3人が、個々に付き添い、銃を向ける。

私、鈴音、そして今にも泣きじゃくりそうなコウキ君を連れ、開かれた道の先へと進んだ。




厳密には道ではなく、大きな段差といったところか。

真っ直ぐな道はなく、下は1~2mの高さがある。

この下に行け・・・ってことなのか。


「ほら、行けよ!」


あろうことか、剛田は私の背中を足で押し、段差の下へと蹴落とした。

幸い足から落ち、大怪我は免れた。

しかし着地は僅かに失敗した為、そのまま前のめりにコケてしまった。

右腕から転んだせいで、大きな擦り傷から結構な血が流れ始める。


「くっ・・・!」


「・・・レイちゃん!」


「―――大丈夫だ!

擦り傷だ、気にするな」


とは言うものの、腕を降ろせば血が伝い、地面へ向かってポタポタと垂れる。

右手を開けば、すぐに真っ赤に染まるほどに・・・出血しているようだ。

居た堪れなかったのだろうか、すぐさま飛び降りた鈴音は、私の元へ駆け寄り、カバンへ手を掛ける。

4人が銃口をこちらへ向けているが、応戦するように睨み返している。

まるでアイコンタクトを取らせたように、鈴音はカバンから布を取り出し、私の右腕をグルグルと巻いていく。

これで大丈夫と言わんばかりに微笑みを浮かべ、今度はコウキ君の方へ向かい、手を差し伸ばす。

コウキ君を降ろすと、奴らは一斉に降り出し、再び個々に付き銃を構える。


「オラ、さっさと歩け!」


松明は消され、奴らが握る懐中電灯だけで先へ進む。

少しだけ歩くと、壁に2つの窪みがあるのがわかる。

どう考えてもここに霊珠と時計を嵌め込むのだろうな。


「コウキ君―――」


私はコウキ君を呼んだ。

霊珠は彼のカバンの中に入れてあるからな。

しかし些細な事でも不審に思うこやつらによって、行動は妨げられる。

一斉に銃口をこちらに向け、警戒態勢を取り出す。

よく見れば引金に人差し指を掛けていた。


「ピリピリするな・・・」


窪みを指し、次にコウキ君のカバンを指す。

剛田は納得がいったようで、構えていた銃を一時的に降ろす。

よかったよ、こいつが100%のバカじゃなくて。


霊珠を取り出し、タオルの包みを解く。

タオル越しに持ちながら、窪みに霊珠を嵌め込む。

先程まで輝きに溢れていたが、現在のココロとシンクロしているのか、どんよりと黒ずんでいるように見える。

何だか・・・嫌な気配が漂っているんだが、果たして気のせいだろうか。


「ようし、いい子だ」


続いて剛田がポケットから懐中時計を取り出す。

見慣れた鈍い光を放つ、レトロ且つ不可思議なフォルムをしている時計。

何を血迷ったのか、彼は時計にキスをしてから窪みに嵌め込む。

穢れる・・・止めてくれ、穢れてしまう。


そんな私の気持ちを他所に、剛田含むオカルト研究会の面々は恍惚のオーラを放つ。

―――約一名、覗いて。




「それじゃ、ご対面といこうか・・・!」




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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