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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [後編] ~
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調査ファイル 077 [Frog on Clock]

まさに、遺跡―――

執事は珠・・・いや、霊珠(れいじゅ)をタオルに(くる)み、コウキ君へと渡す。

“渡す”ということは、この先使うことが『確定』ということなのだろう。

それもそうか、だってこれ『鍵』だし。


「―――行くっきゃない」


「や、やるっきゃない!」


「・・・負けっこ、ない」


まさか鈴音までノっかって来るとは思わなかった。

が、ここまで来た以上、本当に行くしかない。

とんだ階段旅だこと。


「お気をつけて・・・」


執事の言葉を背に、私たち3人は階段を下る。

地下へと続く見えない道も、ここだけは妙に気持ちが悪い。

気を抜けば、命を取られる―――そう言わんばかりの。




懐中電灯だけでは何一つ見えやしない。

丁度地上で拾った太めの木に火を灯すと、先程より視界が広がる。

松明(たいまつ)を片手に、ゆっくりと階段を降りていく。


無心で降りていた故か、気が付けば目の前に段がなくなっていた。

振り返るものの、地上の入口は見えず、光すら喰われてしまっている。


「お次は通路か・・・」


そして私は、ふと松明を前方へと向けた。


「っ!?」


足元に、白い“何か”が落ちている。

それは棒状のものが比較的多く散りばめられ、ローマ字の『I』の形に似ている。

言うまでもない―――“人骨”だ。


「何故こんなものが・・・

それにこの量、尋常じゃないぞ」


「・・・気持ち、悪いね」


そんなモンじゃ効かない。

言い換えれば元は肉体を有していた“死体”が足元に転がってるんだぞ、それも文字通り“腐る程”に。

見せつけられて気味悪く思わない方がおかしい。

―――しかし、だ。

この大量の人骨を見れば見る程、妙に思う。

墓場でもないのに、ここまで死体があるのは何故だ。

それもこんな人目のつかない、地下の通路で。


「ここ、死体を放棄する場所だった・・・とか?」


「それはない。

あの階段を降りて放棄するにしては、効率が悪すぎる。

となれば、原因はアレだろうな」


この先に眠っているであろう、財宝の類。

もはや呪いの魔具だな、これは。


「何にせよ、ここで“何か”あったのは間違いないらしい。

先を行くぞ」


思っているほど軽快にいかない足を、むりっくり進める。

通路は進めば進む程狭くなり、仕舞いには人が2人ギリギリ通れるほどの狭さにまで達していた。


「チャールズだったら、発狂モノか」


「何ですか?」


「―――いや、何でもない」


「・・・シリアの、遺跡」


「うおっ、よく知ってんな」




通路を歩いて幾暫く。

行き止まりには・・・そう、毎度お馴染み。


「扉・・・ですね」


しかしただの扉ではない。

2mくらいある大きい扉は、現代に作られるような簡素なものではない。

寧ろ未来人がタイムスリップして作ったような、不可思議且つ宇宙的なデザイン。

その違和感に更なる別の感触ウェーブをぶっ(ぱな)っているのは、中央部の若干下に付いてある“コレ”。


「・・・何、コレ?」


「ふむ・・・」


一目瞭然だ、これは『時計』である。

そんなことは百も承知だ。

それが何故ここにくっ付いている。

大きさは違えど、デザインは例の懐中時計と瓜二つだ。

壁掛け時計程の大きさになっているが、秒針・分針・時針の3本もしっかり作られていた。


3本共綺麗に12時の方向へ編隊を組んでいた。

何もなしに時針を触ると、少し動く。

そのまま時計回しにグッっと回すが、秒針・分針は反応を示さない。


「時計としての機能はないらしい」


「ってことは、扉を開ける為の仕掛け・・・?」


「そういうことだ」


グリグリ動かせるということは、指定された針の位置―――つまり『時刻』を提示すれば解錠できる。

一見簡単そうであっけらかんとしてはいるが、その時刻が何なのかがわからない内はどうしようもない。

というか、時刻って・・・


「一体何の・・・?」


財宝を隠した時刻?

死体の山を築いた時刻?

まさか、私たちがここに来た時刻?

いやどれも空想論だ、アシモフも聞いて呆れるだろう。

財宝に関連するものに対しての時間だ、それさえわかれば―――




「・・・あれ?」


ふいにコウキ君が疑問を唱える。


「この時計、以前レイさんが持っていらした物に似てますよね」


「ああ。

それがどうした?」


「もしかして、あの時計の時刻を当て嵌めたら・・・?」


まあ、そう考えるよな、普通は。

だが肝心なことを見落としている。


「その時計は、今どこにある?」


「あ・・・」


洞窟の部屋の中に置きっぱなしだ。

尤も、今頃奴らの手に渡っていることだろう。

それにもう先へ行っているのであれば、この仕掛けも優に解いていることで。


だが、着眼点は間違ってはいない。

あの時計の時刻・・・何時だったか。

今思えば、針の向きなぞ気にはしていなかった。

時計関連となれば、夢で見た時の時刻だろうか。

それとも―――


「・・・ねぇ、レイちゃん」


今度は鈴音が疑問を唱えた。


「どうした」


「・・・オカルト研究会の人たち、どうやって、ここに来たの、かな?」


言われてみればそうだ。

ここに入る際、霊珠を用いて扉を開けた。

それはこのヘンピな力があったからこそ。

では彼らはどうだ?

あの懐中時計を持っていたとして、遺跡の扉を糸も簡単に開けるとは思えない。

無論、あの時計も鍵の一つ・・・開けられる仕掛けがあるのであれば、話は別だが。


「奴らはもう一つの鍵を持っている。

きっとそれで入ったのだろう」


「・・・・・・」


ふむ、妙に難しい顔をしていらっしゃる。

何か思うことがあるのだろうか。


「意見があるなら、聞こう」


「・・・霊珠も鍵、なんだよね?」


「ああ」


「・・・だったら、これで開くんじゃ、ないかな?」


「―――賢い」


何度も申し訳ないが、コウキ君のカバンから霊珠を取り出す。

タオルの包みを解き、時計に近付ける。

すると霊珠は輝き出し、時計にも異変が生じる。


時計は壊れたロボットのように、針が進んだり戻ったりを繰り返し始めた。

ギゴギゴ音を立てながら、発狂した人みたいにグルングルグン針を回している。

するとある時間を示し、狂喜乱舞は台風の目よろしく、ピタリと止まった。

間も無くして、金属音が辺りに響く。




ガチンッ!




ガチンッ!




ガチンッ!




―――




――――――




―――――――――




「―――開いた・・・のか?」


「・・・多分」


「この扉取っ手ないですけど、押すんですか?」


しかし・・・とんでもテクノロジーで出来ているな、この島のものは。

エジプトの建築家も真っ青だろうな、きっと。

今一度時計に触れた・・・刹那―――


物凄い轟音と共に、扉が下降していく。

洞窟の壁同様、地面の奥へと扉が消えていった。


「よし、行こう」




この先に、きっと―――




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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