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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [後編] ~
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調査ファイル 075 [最強のマスターキー]

書庫に戻ると、コウキ君は一冊の本を開いて持っていた。


「見つけたか!?」


「多分・・・」


本を受け取り、内容を確認する。

日本語で書かれた文章は、意外にも綺麗な字だった。

肝心の内容だが、間違いなく日記。

テーブルで見つけた点字の日記同様、ここでの生活を(つづ)ったものだった。

しかし、こちらは―――


「オブラートに包まれてない・・・ようだな」


暗喩の内容ではなく、ありのままの出来事をそのまま書いてある。

どうやら相当“キていた”ようだな、ここでの暮らしが。


「・・・何が、書いてるの?」


「簡潔に言えば、彼は島の住人よってここに閉じ込められていたらしい。

―――やはり、財宝に関わっていたようだ」


見てはいけないもの、ということか。

そして見てしまった者は、視力を奪われるという呪い紛いの罰を受ける。

しかし、疑問も残る。

この人物も財宝に関わった筈だ、何故視力を奪われていない・・・?

咄嗟に目を塞いでどうにかなる代物―――ではなかろうに。


ペラペラと捲ると、やはりというべきか・・・彼からのありがたいメッセージが書かれていた。




『もしこの日記を見つけたのなら、我々の後を辿ってほしい。

隠し通路への道はこの本が目印だ、そこを抜けて、真実を見つけてくれ』




「・・・コウキ君、この日記はどこで手に入れた?」


私はコウキ君に日記の在処を改めて聞く。

あそこです、と人差し指を指したのは、先程まで鈴音が探していた本棚だった。


「あ、でも、これ見つけにくかったですよ。

だって、本棚に並んでなかったんですから」


「どういうことだ?」


「取り出した本を戻そうとしたんですけど、いくら押しても仕舞えなかったんです。

そしたら、並んでいる本の奥に横にして置いてあって・・・」


「ちょっと待て、その棚はどこだ?」


「えっと・・・左から2番目です―――」




あれか。

ならば―――




「―――せいっ!!」




回し蹴り、空中にて。

どうやら身体は(なま)ってなかったらしい。

思いの外当たりがよかったらしい、本棚はぐらつきを始める。

そしてそのまま―――奥へと倒れた。


「なるほど、ここだけ後ろに空間があったのか。

どうりで押しても動かないわけだ・・・」


ここしか動かないんだもん。

他の本棚は後ろが壁だし、ガッチリ固定されてるし。


「・・・でも、なんでここだけ、通路が?」


「さあな。

だが、誰かがここを抜け出す為に作った・・・としか、考えられまい」


脱走用とは思えないが、予め作られた線もいまひとつだ。


「だが、それもすぐにわかるさ。

「出口の先に何があるかを見れば、な―――」


私たちは倒れた本棚と本に申し訳ない気持ちを抱きながらも、少し歩きづらい足場として進む。

こりゃ、師匠が見たら勘当モンだな・・・




本棚があった場所―――その向こう側は、更に暗闇が続いていた。

書庫に辿り着く前の通路同様、一寸先どころか、自分の姿さえまともに見えないほどに。


「暗いですね・・・」


「足元、気を付けて」


って、注意した矢先だもんな・・・


「うわっ!」


「・・・大丈夫?」


少年、大人の女性に転ぶのは今のうちだぞ。

というか、いい加減天性と認めたらどうだ?


「・・・レイちゃんも言ってた。

足元、気を付けて、ね」


「は・・・はい」


多分真っ赤になっているんだろうな。

見えなくても、案外見えるもんだ・・・違う意味で。


懐中電灯は、一体どこを照らしているのだろうか。

前方にスポットを宛てても、何も映しやしない。

光が闇に喰われている―――と、表現してもおかしくないくらいだ。


ザッ、ザッ、ザッ・・・と、足音が響くだけ。

特に目立った光景も見えず、私たちも変わったところは今のところない。

罠という可能性も踏んではいたが、毒矢も吹かなければ落とし穴もない。

剰え、毒沼さえも。


「またこう道か・・・」


「少年、男なら辛抱だ」


「・・・ガンバレ」


―――鈴音、そのトーンだと語尾に『ハート』が付きかねんぞ。


「うぅ・・・頑張リマス」


ほら言わんこっちゃない。

これが素なのか、本気でからかているのか、さっぱりわかんない。

津田君なら、もちょっと窘めてたのかもしれない―――




・・・・・・みんな、元気にしているだろうか・・・・・・・




「―――あっ!」


不意にコウキ君が声を上げる。

ふと目線を上げると、私の前に二人が立っていた。

いつの間にか追い越されていたようだ。

そして二人が照らし出すライトは・・・行き止まりとなっている、目の前に焦点が作られていた。


「これは・・・」


紛うことなき―――階段である。

ということは、やはりここが隠し通路で間違いないようだ。

ここからあの2人は脱出し、消息を絶った。

彼らがどうなったのかは気になるが、それよりもまずこの上に何があるのかだ。


「よし、進もう」




私たちは、階段を登った。

階段頂上には、いつか見た風景がデジャヴとして蘇る。

―――の、筈でしたが。


「―――お?」


ドアノブは、軽かった。

鍵が掛かっていない・・・どういうことだ?

いや別にいいのだが、何か拍子抜けしたというか、何というか・・・




扉を開けた先にあったのは―――




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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