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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [後編] ~
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調査ファイル 074 [解けゆく鎖]

「・・・・・・」


鈴音は、ある人物の名を挙げた。

彼らと初めて対面した時を思い出し、顔と名前を一致させていた。

なるほど、あの人が―――


「でもどうして私たちに協力を?

まさか警察による内通者じゃないだろうな?」


目を(つむ)りながら首を振る鈴音。


「・・・違うみたい。

なんかね、彼らの行動を止めたい―――って、言ってたよ」


行動・・・というのは、ロクでもない事だろう。

大まか“一攫千金”か“世界征服”といったところか。

そこまで大きなヤマだとしたら、止めに入るのもわからなくはないが―――


「・・・ホントはね、もう一人、いたの」


「もう一人?」


「・・・もう一人、反対していた人が、いたの。

でも・・・殺されちゃった、らしいの」




刹那、全てが繋がる気持ちの良い音が、脳内を掻き廻るよう響き渡る。

そうか、そういうことだったのか。


「・・・レイちゃん?」


いつもの癖だ。

私は下を向き、顎に手を置いて、ニヤついていたらしい。


「ああ、すまない。

ようやく真相がわかったよ。

では始めよう―――事件の真相(なぞとき)を」







事の発端は、この島に『財宝が眠る』という情報。

彼らは何らかの方法で情報を知り、金になると踏んで財宝を探し当てようと決意した。

そんな中、彼らの元に招待状が届いた。

運の良いことに、財宝の眠る島へのチケットが同封されていた。

準備を整えた彼らは、船に乗り込み、この島へとやってきた―――


彼らはありったけの情報と採掘道具を持ってきた。

到着してすぐ、メンバーの一人が資料を読み直した・・・これが悪夢の始まりだった。

彼の名は、『堂島 芳次』。

改めて資料を読み返し、探しているものがとんでもない代物ではないかと推測する。

すかさず全員に説得を試みるが、聞く耳は持ってもらえなかった。

堂島氏が声を荒げる度に、他の面々もボルテージが上がっていった。

コウキ君が聞いた声は、恐らくこの時のものだろう。

そしてついに耐え切れなかったのだろう、メンバーの“誰か”が堂島氏を―――手に掛けてしまった。


遺体を部屋に置きっぱなしにしては、いずれ誰かに見つかってしまう。

そう考えた彼らは、人々が寝静まる夜の内に、遺体を外へと運び出した。


あの時執事が放った言葉―――




「あの5人―――大きな袋を持っていました」


「袋?」


「最近の方は、天体観測にも大荷物を持ち歩くのでしょうか・・・」




恐らく袋の中身は遺体だろう。

金属探知機もケースのまま持ち運べば、もし誰かしらに見られても、天体観測に出掛けているように見えなくもない。

彼らは事前に見つけておいた空き家に遺体を置き、その場を離れた・・・

しかし彼らは敢えて外で朝を迎えた。

途中で帰ったら、変に怪しまれるからな。




そもそも最初に私たちに姿を現さなかったのは、自分たちが『トレジャーハンター』だと知られたくなかったから。

もし正体がバレてしまっては、横取りされてしまうと考えたからだろう。

(のち)に私たちも財宝を探していると知り、跡をつけていた。

仕掛けを解き、例の部屋を解放した時点で用済みと判断し、スタンガンで気絶させた・・・

その後、私たちを袋に詰め、空き家の中に置き、鍵を掛けた。

警察が来たのも、彼らが通報したが故。

『殺人犯が立て籠もっている』とでも言ったのだろう。

濡れ衣を着せれば、邪魔立てされないと考えてな。


そんな中、彼らに予想外の出来事が起こる。

それは、“時計の紛失”―――

なくさないよう、盗まれないよう最低1人を監視役として配置していただろう。

にも関わらず時計はなくなってしまった。

理由は簡単、メンバーの誰かが取ったからだ。

彼らの“野望を阻止する”為、堂島氏同様財宝に対し危惧していた人物がいた。

その人物が鈴音を通し、私たちに協力を要請した。

結果的に私たちは時計は受け取り、危機を助けてもらい、財宝の死守に尽力している―――ということになっているわけだ。







「―――とは言ったものの、実行犯そのものが誰かまではわからなかったがな。

それともう1つ、気になることがある」


「・・・?」


「鈴音―――君はどうしてこの島に来た?」


本当に山登りに来たわけではあるまい。

財宝の一件を知らなければ、中々来ることもなかろうに。


「・・・依頼とは別件で、この島に。

あ!・・・これは、絶対秘密・・・っ!」


口の前で両手人差し指でバッテンを作っている。

恐らく素でやっている・・・同じ女性として、それくらいはわかる。

ブッているわけではない、だからこそ可愛い。


「接点のない2人がどうやって話を取り付けたんだ。

こう言っては何だが、まだ君を信用したわけじゃないぞ」


「・・・わかってる。

でも、言えない。

・・・いつか話す時が来たら―――」


「それまで信じてくれ・・・と?」


コクン、と頷く。

その目は先程までのトロンとしたものではなく、澄んだ瞳に力強さまで感じるほどの芯のある目をしていた。

執事のそれには及ばないものの、研ぎ澄まされた視線が、私に突き刺さる。

しかし、ここまで来たのも鈴音のおかげでもある。

今ばかりは“恩返し”―――ということにしておくか。


「いいだろう。

だがもし、私たちに牙を剥けたその時は―――覚えてなさいよ。

地獄の底まで呪ってやるからな」


今まで見せなかった目付きを、彼女へと向ける。

日本刀なぞ一発でへし折れる程の、氷の弾丸を。

さすがに驚いたのだろう、思わず怯んでいる。

汗がこめかみ辺りからツーッと伝っていく。




「2人共、ちょっといいですかーっ!!」


書庫の方から声が聞こえた。

コウキ君が私たちを呼んでいる。

って、彼一人に任せっぱなしだった、本探し。


「行こう、鈴音」


「えっ!?・・・あ、うん―――」




彼女の手を引き、私は書庫へと歩き出した。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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