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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [後編] ~
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調査ファイル 072 [隠すからこそ秘密は輝く]

「恐らくこの日記の主は、この島に眠る宝を知っていた。

そしてそのせいで・・・盲目となった」


突拍子もないとは思う。

私だって、自分で言っておいて(にわ)かに信じがたいと痛感している。


「『盲目』って・・・

お宝を見て失明って、何かおかしくないですか?」


「わかっている。

しかしそう考えると、辻褄が合うんだ」


「・・・どんな風に?」


「この日記にある『人々』や『島民』というのは、監禁を実行した人物。

彼は宝を得ようとした上で何らかの原因により、失明し・・・捕縛されてしまった。

(のち)に監禁されてしまうわけだ、当然出られる筈もない。

そして定期的に訪れたという記述は、食料を運ぶ為だろう。

誰も来なくなったのも、彼を世話していた連中が同じ目にあったせい・・・だと思われる」


「・・・じゃあ、その『原因』って、何?」




それが焦点、だと思う。

奇しくも焦点を示すのが、あの言葉だったとは―――


「その目を、見てはいけない・・・」


「ど、どういうことですか?」


「詳しいことはわからない。

しかし、彼らは宝に関わったが故に光を失った。

『目』というのは、宝のことだろう」


「・・・つまり、お宝を見たら、盲目になる―――って、こと?」


「ああ。

もしこの推理が正しければ、私たちが目指しているものは『“かなり”ヤバイやつ』だろうな」




呪いの類で人が死ぬなら、それはある意味幸せかもしれない。

今回は『視力を奪われる』というものだ、これ程嫌な罰はないだろう。

神なのか持ち主の思念なのか知らんが、全く以て傍迷惑。


「ともかく、早いとこ奴らを止めなければ。

良くて制止、悪くても阻止」


「レイさん、その違いって・・・?」


「・・・説得、だよ。

失敗しても、悪用させないように、止める・・・こと、だよ」


鈴音、解説ご苦労。

さ、行こうか。




――――とは言ったものの、この部屋には扉という扉がない。

結論から言えば、行き止まりだ。

デッドエンドか・・・縁起でもない。


「どこかに隠し扉があるはずだ。

探してみよう」


確証はないが、この部屋はどうも怪しすぎる・・・

どっかに扉の1つくらいはあるはず。

それも、地上への唯一の出入り口が。


改めて見回してみる。

書庫自体は正方形となっている。

地下道から入ると、左右と正面の壁3面が本棚で囲まれている。

入口側には本棚がなく、代わりに本が壁側に積み重ねられていた。

天井はシャンデリアが吊られている。

・・・尤も、ロウソクは使い物にならないだろうがな。

中央にはテーブルがあり、溢れんばかりの本が乱雑に置かれている。

床は――――言うまでもない。


「怪しいところと言えば、本棚とテーブルくらいでしょうか」


本棚の後か、テーブルの下。

うむ、ベターである。

だが残念ながら・・・


「本棚は・・・んっ・・・動きそうにない。

テーブルも・・・くっ・・・ビクともしない」


「・・・テーブルの下、扉らしきものは、なかったよ」




――――お手上げである。

シャンデリアを引っ張れば本棚が動いて扉が開くとか?

なら、腕のいい配管工を呼ばなくてはな・・・




暫く探し回ったが、人が通れる程の道はどこにもなかった。


「鈴音さん、大丈夫ですか?」


「・・・うん、平気」


互いに微笑み合う二人。

まるで姉弟だ。

リュックから2本のスポーツドリンクの取り出し、1本を鈴音に渡す。

受け取った鈴音は礼をした(のち)、その場に座り込み、ゴクリゴクリと飲み始める。


彼女の喉はスポーツドリンクを体内に取り入れようと奮闘し、上下にスクワットを始める。

ゴクリ、ゴクリ――――密かに鳴っていた水の音は、暗い部屋には妙に木霊する。


「んー・・・」


鈴音は首を傾げてこちらを見る。


「・・・どうしたの?」


「いやー・・・その――――」


「何というか――――」




『艶かしい』


私とコウキ君は、そう思った。

というか、必要以上に興奮を覚えたわけではないだろうな。

すかさず彼をジーッと見つめていた。


「・・・!

やっ、これは、その・・・」


あたふたしていたコウキ君は、その慌てっぷりから手をバタバタしていた。

更にあろうことか、入口の近くに座っていたわけで――――


「うわっ!?」


バサリ、バサリ、バタバタ、ドサドサ・・・

積み重ねてあった本は次々とコウキ君を襲う。

しかし何故だろう、ここまでくればちょっと可哀想な気もする。


「全く・・・」


あわあわしていた鈴音と共に、本をどかす。

一冊一冊がハードカバーで、非常に分厚く、重たい。

陰湿きわまりない内容の本ばかり――――




「・・・ちょっと待てよ」


そもそも錬金術や毒草の図鑑しかない書庫に、何故日記なんか置いてあるんだ。

それもテーブルの上に一冊だけ・・・

もし日記の主が監禁されていた場所が“ここ”だとしたら・・・?


「妙だ・・・」


「どうしたんですか!?」


頭を(さす)りながら、コウキ君が問いかける。


「この日記の主は、宝に関わったばかりに盲目になった。

なのにその彼がこんなに多くの日記を残すだろうか?

ましてや点字なんかで・・・」


「ええ、だからもう一人の方が代筆したんですよね?」


「だったらその“代筆した人物”の日記は?」


長いスパン閉じ込められていたんだ、記述の1つや2つあるだろう。

囚人や遭難者が、縦4本に横1本入れた日付のチェックをよく書き残すように。


「彼は目で見た惨状を必ず書き残している。

それさえ見つければ――――」


「・・・でも、かなり昔のこと、だよ。

さすがにもう、見つからない・・・かも」


ある程度スポーツドリンクを飲んで落ち着いたのだろう、今度は鈴音が問いかける。

時折『けふっ』と可愛らしい息を吐いている。


「たしかに昔のことだろうな、本の状態からして。

では、ここに監禁されていた2人の遺体は、どこにあるんだ?」


もしここで朽ち果てれば、肉はなくとも骨は残る。

その骨がこの部屋にはない、ということは――――


「まさか、ホントに出口が!?」


「・・・でも、どこにもなかった、よ?」




ああそうさ、だから『隠し扉』なんだよ。

そしてその秘密を暴くヒントは、もう出ている。




「2人共、もう一度協力してくれ」





To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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