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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [後編] ~
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調査ファイル 069 [ヴィジョン]

それにしてもあの光景は何だったのだろう。

宝珠に触れた際に見たヴィジョンが何なのかを考えていた。


映し出されたそれは、無声映画のようにただただ映像が流れるばかり。

内容も不可解なもので、人々が歓喜の声を上げていた。

かと思えば、思い詰めた者、怒りを露にする者がたくさん集うヴィジョンに切り替わる。

まるで誰かがスイッチャーを使っているかのように。

中でも気になったのは、人々が何を前に跪き、祈りを捧げていたヴィジョン・・・

ここいらで奉られていたものはなく、宝珠のあった場所も『祭壇』と形容してはいたが、奉るほどの大それた場所ではない。

この島のどこかなのは間違いないのだが、現段階では見たことない場所だ。


本当はもう一度触れて反応を見れば、何か分かるかもしれない・・・そう思っている。

しかしあんな辛い目に自ら志願して遭うのは御免だ。

ま、『かなりヤバイやつ』ということがわかればそれで充分だ。

何より―――




「この道、どこまで続いているんでしょうか・・・」


確かに宛のない道だ。

長く考え事をしていたが、その(かん)に出口へ着くほど楽なものではなかったらしい。


「いずれ出口へ出る。

もう少しの辛抱だ」


「そんな悠長な・・・」


悠長―――その通りかもな。

だって光すら見えないんだもん、致し方なかろう。


「それにしても、ビックリしましたよ。

レイさんが突然倒れるんですから」


「全くだ。

迷惑極まりない」


「でも、僕たちの方が先に宝珠を見つけ出すことが出来て良かったですね!」


ケタケタ明るく笑うコウキ君。

しかし、水を差すようで悪いが―――


「あれは宝珠ではない」




彼の希望とワクワクを、粉々にぶち壊してしまったのだ。

前にテレビで見た、外国人が織り成すシュールなアニメを思い出す。

そのキャラクターたちさながらの顔をしている。

目を丸くして、口を四角にした感じに。


「彼らは私たちを気絶させた後、あの祭壇まで行くことは可能だった。

しかしこの珠は手付かずのままだ。

もしこれがお目当てのものなら、無くなって然り、冒険も終いだっただろう

それにだ、仮にこれが本物の宝珠だとしたら、保管があまりにも雑すぎる」


「雑、とは?」


「コウキ君なら、宝物を隠すとしたらどうする?」


「んー、僕なら人目のつかないところに隠しますね。

あと罠を張って、すぐに盗られないようにします」


「妥当だな。

ならこれはどうだ?

鍵こそ掛かっていたとはいえ、罠もなしに祭壇の上にポンと置いたままにするかだろうか」


ましてやそれがとんでもない代物だとしたら。

事実違う意味で“とんでもない”が、私たちの思うお宝とは何か違う。

そんな気がしていた。




「じゃああの人たちが追っていたお宝って何なんですか?」


とんがり口でムスッと言うコウキ君。

ともあれ、辿り着く謎はそこに行き着くだろうな。


時計は扉を開く為の鍵、この珠も恐らく何かの鍵の類。

では彼らの求めているものは?

まだ私たちが知り得ていないものなのか?

プラス、部屋にあった荷物・・・

金属探知機とダウジングマシン―――


「金や銀といった鉱石を探している連中とは思えんがな。

恐らく追い求めているものは、金属が含有している『何か』だろう。

でなければ、彼らの部屋にあった荷物の理由がつかない」


「では、これは?」


リュックから取り出した、丸くなったタオル。

宝珠と思われた謎の珠、これの理由か・・・


「生憎金属探知機は持っていないが・・・これは目的のモノへと導く鍵だろう。

同じ球体だしな、またどこかに嵌め込んで―――」




刹那、私は気付く。

この珠、もしかして・・・

だとしたら、もう1つは・・・・・・




「どうかしました?」


「あ、ああ、大丈夫だ。

とにかく、先へ進もう」


まだ確証はない。

しかし、もうすぐ何かが見えてきそうな・・・そんな気がしていた。

暫く歩くと、それは別の形で―――


「レイさん、あれ!」


目の前を照らすと、そこには階段があった。

何故こんな所にあるのかは知らないが、ここに人が入ることを想定して作られたのだろう。

何の為に・・・?


私たちは足元に気を付けながら、階段を登る。

頂上には、大きな扉があった。

取っ手を持って押すが、ビクともしない。

引いても尚、横に引っ張っても尚、開くことはなかった。


「ふむ、ご丁寧なことで―――」


よく見ると、鍵が掛かっていた。

それも南京錠などではなく、扉に備え付けのもの。

ただし年代は古く、私も見たことがない変わったタイプだった。

師匠、“万能”という言葉を信じますと、今だけは。

矛と盾だが、やってみるか。


髪飾りを外し、鍵穴へ入れて弄り回す。

ある程度の鍵を外せる“万能品”と言われて貰ったが、どうだろうか。




暫くすると、聞き慣れた良い音が鳴り響いた。

ガチャン、とね。


「ようし、いいだろう」


思ったより早く鍵を開けることが出来た。

正直、上級品を使えばこんな扉一発だが、部屋に置きっぱなしだしな・・・

もし開かなかったら、ちょっとヤバかったかも。

師匠、感謝感激です。


「3で押そう。

1・・・2・・・3・・・!」


コウキ君と共に力任せで扉を開ける。

全体重を掛けて押した扉は、徐々に奥へと追いやられる。

そして光芒が見えた瞬間、私たちの心にも希望の光が灯される。

最後に一捻(ひとひね)り力を入れると、扉は完全に開き切った。




しかし―――




「―――ここ、何の部屋・・・?」




目の前には、再び暗い空間が広がっていた。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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