調査ファイル 002 [迷子のリトルキャット]
―――いつの時代も、『迷子』という現象は起きている。
保護者が子供の手をしっかり握る、或いは抱っこやおんぶなどで身柄を保護していれば、こういうことは起こらない。
しかし、ふとしたことをきっかけに、子供たちは右往左往し、どこ吹く風となり、『迷子』となる。
最悪の場合、誘拐や殺人といった犯罪に発展する可能性がある。
更に、泣きじゃくる子供たちに不用意に手を伸ばせば、その親切心が犯罪の手引きとして誤解の的となる場合もある。
もしもあなたが『迷子』を見かけたら、どうしますか―――
2016年2月26日、9時00分。
僕は警察署により、探偵へ依頼する仕事を受け取っていた。
書類数枚だが、レイには十分過ぎる量だろう。
そそくさと済ませ、いつものように署の車を借りる。
シートベルトを締めて、エンジンを掛け、さあ出発―――
「おーい、ちょっと待ったー!」
外から誰かの声が聞こえる。
あれは・・・前田さん?
窓を開けて、そのまま応対する。
「どうしたんですか?」
「お前に伝えようと思ってたんだけどよ、ほいこれ」
数枚の書類が渡された。
書いてあるのは、子供の捜索についてだった。
身体的、服装、癖や喋り方などの特徴が書かれており、両親のものと思われる電話番号も書かれていた。
「迷子の捜索ですか・・・」
「探偵の依頼じゃねえ。もし見つけたら俺に連絡くれ」
なるほど、ついでですか。
とはいえ、見過ごすわけにもいかない。
前田さんに挨拶すると、僕はレイの事務所へと向かった。
2016年2月26日、9時42分。
探偵事務所まで着いた。
――ところでレイはここで寝泊まりしているんだよな。
もしかして、寝巻のまま出てきたりしないよな?
年頃の女の子が寝巻で出迎えるとか、さすがに羞恥心がなさすぎるが、果たして・・・
なんとなーく淡い期待を抱きつつ、チャイムを押した。
3秒後、家の奥からドタドタと物音が大きくなっていく。
間もなく、ドアが開いた。
「はい。あら、おはよう、津田君」
レイは、正装だった―――
スーツを着こなして、化粧まで施している。
薄めであるものの、なんでまたそこまでビシッと・・・
「ど、どうしたの、そんなに決め込んじゃって・・・」
「探偵として身だしなみを整えるのは当たり前じゃない」
全く以てご尤もでございます。
ジャケットはシワ一つなく、スラリと伸びた脚もスカートではなくパンツで、セクシーさを薄めている。
絵に描いたような探偵・・・というよりは、キャリアウーマンみたいだな。
ともあれ、僕は事務所に入った。
早速書類を渡して、レイに依頼内容を伝えていた。
探偵の仕事は、浮気調査などの張り込みや事件の推理を行うだけではない。
探し物、レストランのリサーチ、時には子供の運動会の応援を依頼する方もいらっしゃる。
言葉の響きこそ『探偵』とカッコイイものではあるが、やっていることは『何でも屋』と同じである(※但し、全ての探偵がそうとは限りません)。
当然レイもそういう依頼内容・・・かと思えば、少し違う。
レイの場合、警察が依頼者なので、専ら事件絡みである。
「ふむ、全部容疑者の身辺調査ばかりね」
「まあ、妥当だね」
?(ハテナ)を浮かべてこちらを見ている。
うん、気にしないでくれ・・・
「さて、どれから取り掛かろうか」
「そうね」
書類をペラペラめくって、優先順位を付けようとしていた。
その時―――
部屋中に響き渡る少し鈍い音。
少しまぶしく感じる。
音の発信源へ視線を移すと、玄関のドアが開いていた。
そこにいたのは、アタッシュケースを持った―――女の子だった。
「探偵・・・さんって、ここっ!?」
息切れをしながら、若干途切れ途切れになりながら問いかける、
小学生くらいだろうか、凄い形相だ。
「あ、ああ、そうだけど―――」
「お願い、私を助けてっ!!」
僕の発言と入れ違いギリギリで助けを求めた・・・え、『助けて』?
僕はレイと顔を合わせて、今一度女の子を見た。
どうやら、一悶着ありそうだ
To Be Continued...
※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。