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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [前編] ~
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調査ファイル 068 [最高でした by コウキ]

こんにちは、コウキです。

レイさんが突然倒れだして、僕はどうすればいいかわかりません。

もしいい方法がありましたら、こちらまでご連絡ください。

お待ちしてま―――いや、そんな時間ないですよ!


「レイさん、大丈夫ですか?

レイさん!レイさん!!」


呼びかけても、レイさんの反応はありません。

目を開けることも、身体のどこかを動かすこともなく。

きっかけは、今現在手に持っている宝珠―――

ほんの数十秒前、レイさんが手に取った瞬間から、何かがおかしかった。

まさか死んじゃったり・・・しませんよね?


「どうしよう・・・

背負って移動するべきか?

いや、長時間運ぶのはムリだ・・・」


かといってこのまま放置しておくのは、ますます危険です。

扉は開きっぱなし、もしその隙にあの人たちが来たら・・・

まずはこの宝珠をしまわないと。

僕はリュックからタオルを出して、宝珠を包みました。

その際タオル越しに宝珠に触れたけど、先程のレイさんのような異常は起きませんでした。

そのままリュックにしまって後―――僕は覚悟を決めました。


「よ、よし、脱出しよう!」


大人の女性を運ぶのは大変だけど、背に腹は代えられない!

背丈はだいぶ僕に近いけど、やってみるしかない。

レイさんの右腕を僕の肩に掛け、左手でレイさんの左腕を背中から通して持ち上げました。

そのまま立ち上がり、肩を貸した状態で、よたれよたれ歩き始めます。


「頑張れレイさん、頑張れ僕・・・!」


あぁ、レイさんの胸が・・・

香水かな、いい匂いにクラクラしてきた・・・

いやいや、邪心を捨てなければ。

心頭を滅却すれば火もまた涼し―――


「この道を戻るのか・・・」


―――その時でした。




「何か・・・聞こえる?」


細い道の向こうから、声が聞こえる―――!

って、これかなりマズいのでは!?


「ヤバイ、これはヤバイ!」


僕は辺りを引っ切り無しに見渡しました。

あとここをやり過ごすには、もうこの手しかない。

いや、レイさん風に言えば『この手に限る』!


気を失ったレイさんを担ぎながら、祭壇の方へ向かいました。

本当に考えることは単純です。

なんせ僕が考えることというのは―――


「隠れるしかない!」


・・・というわけです。

あー、『サングラスのショットガンマン』か『元軍隊の大佐』か来てくれないかなぁ・・・!?

ここぞとばかりの出番なのに。

なんて考えながらも、祭壇の隠れる場所を探しました。

すると・・・


「うわっ!」


何かの出っ張りに躓き、転んでしまいました。

レイさんも一緒に転んでしまったのですが、僕がすぐ身体を反転させたので、下敷き効果で怪我はありませんでした。

幸いでした・・・ホント。

あぁ、胸が―――


「マズい、段々声が近づいてきてる!」


泡食って立ち上がると、先程転んだ場所の下に空洞を見つけました。

どうやら置物の下に隠し通路があったようです。

チャンスと思い、レイさんをお姫様抱っこし、そのまま飛び降りました。

深さはなく、手を伸ばせば再び出られるくらいでした。

それでも足への負担が大きかったようで、身体中バイブレーターになった気分です。

それでも足を両手で気付(きつ)け、すぐに置物を動かして穴を塞ぎました。


懐中電灯を出す為にリュックを開けた時でした。

少し唸るような声が聞こえ、目をやると・・・


「・・・ここは?」


レイさんが、目を覚ましました。

あぁ、良かった・・・。

泣きそうです。


「レイさん!

大丈夫ですか!?どこか痛いとこはないですか!?」


「何があった、話してくれ」


「・・・はい。

あの時―――」




なるほど、そういうことが―――

私が気を失っている間、随分と心配と無理を掛けさせてしまったようだ。

しかし、あの時見たヴィジョン・・・というべきか。

あの不可思議な光景は、あまりにもリアリティのあるものだった。

1つの歴史を早送りで見ているような―――何だろう、的確には言えないが、そんな風と言えばいいのか。

ただはっきりとわかることがあった。

そのヴィジョンを見ている間、物凄く“寒かった”のだ。

ただ寒いのではない、蒼い炎に滲む哀しみと怒りで凍り付かされていたのだ。

溶けない氷の中で言葉も出せず、ただ淡々とした光景を目の当たりにさせられていた。

凄惨な歴史だったのだろうか、後味が非常に悪かった。

それがあの宝珠の力、なのだろうか。


「これが皆の探し求めていた宝珠としたら、とんだ厄災品だ。

質屋でも断られるぞ」


呆れた言い口だが、非常に迷惑(こうむ)っている。

身体こそ無事なものの、精神的には参っているというのに。


「ともあれ、心配を掛けたようだな。

もう大丈夫だ、先を行こう」


少し涙目になっているコウキ君の頭を撫で、立ち上がる。

さて、祭壇の地下はどこに繋がっているのやら。




「・・・うぅ、寒っ!」


両手で両腕を(こす)りながら、私は歩き出した。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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