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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [前編] ~
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調査ファイル 060 [ロスト・テクノロジー]

あんぐりしたコウキ君を見て、生涯で一度はやってみたかったことを試してみることに。

もううずうずして堪らん。

少年の顔の前に両掌(りょうてのひら)を持ってきて、左右に離して―――


≪パチンッ!!≫


(おもむろ)に掌を叩く。

勿論本当に顔を叩いたわけじゃない。

所謂(いわゆる)一つの『気付(きつ)け』である。


驚いた声を上げて“こちら”に戻ってきたコウキ君。

状況がイマイチ呑み込めていないのだろう、目が泳いでいる。

立ち上がって周りを見ると、ふと足元が気になった。


「これは―――」


(つまづ)いたのは石かなんかかと思っていたのだが、どうやらこれのせいらしい。

出っ張っていた岩は、地面にめり込む形に消えていた。

ということは、これがスイッチか。

どうりでわからないわけだ、まさか地面にある岩が鍵だったとは・・・


「よし、先に行くぞ。

立てるか?」


再び手を指し伸ばす。

ゆっくり立ち上げる、今度は・・・転ばなかった。




壁の向こう側を進むと、壁の手前まではなかった文字や絵が記されている。

しかしこの文字は現代の文字ではない。

海外の文字・・・英語やイタリア語、難しいヘブライ語やアラビア語の類でもない。

勿論、記号や絵も然り。

ということは、かなり昔の時代か、或いは独自の文明を築いていたようだ。


「どうやらここには文明があったようだな。

生活していたかどうかはわからんが、人が立ち入っていたのは間違いない」


「そのようですね。

古代エジプト・・・とはまた違うようですけど」


そこまで(さかのぼ)ったにしては、これらは新しすぎる。

どんなに見積もっても200~300年くらいだろう。

そしてそれらは側壁の最奥まで(つづ)られており、皆目見当もつかないお経のように途切れないのでは、と錯覚してしまう。

しかしこの道は永遠には続いていない。

当然、どこかで道は切れる。

故に、それは突然―――




「・・・レイさん、これって―――」


コウキ君は再びあんぐりを始める。

無理もない、私だった同じ顔をしたい。

何を隠そう、今目の前にあるのは、ドーム状の部屋。

それも一般家庭の六畳や九畳の部屋とは桁が違う。

津田君なら、最初の見てくれで腰を抜かしかねないだろう。


「やはり、こういうのがあったか。

祭壇や古墳とはまた違った感じだな」


人が入っていそうな箱状なものはなく、松明(たいまつ)の類も周辺には見られない。


「でも何か妙ですね。

昔の遺跡なのに・・・」


「そうだな。

それに先程の仕掛け・・・過去の産物にしてはあまりにも出来すぎている」


2世紀前にそんな豪華なカラクリを作れるだろうか。

まだ車もなかった時代だぞ、どう説明をつける。

タイムスリップか、バカバカしい。


「まさか・・・ロストテクノロジー!?

現代の文明が出来上がる前にあった、未知の技術が―――」


「小学生にしては、小難しい言葉を覚えているな。

たしかに文明はあった、しかしそういうものは・・・」


とりあえず内部をもう少し調べてみよう。

懐中電灯だけでは暗くて見づらい。

松明(たいまつ)はなくとも、それを()め込む部分くらいはあるだろう。

私はポーチからライターを取り出し、やや太目な木の枝に火を点ける。

因みにこの枝、海岸に打ち上げられていた流木です。


潮に(さら)されていたせいもあり、やや点きづらい。

暫くジーッと火を見つめながらも、松明(たいまつ)を作り上げる。

やっとこさ火を点け終わり、部屋の四隅にあった(くぼ)みに松明(たいまつ)を掛ける。


「あれ、コウキ君?」


明るくなった部屋を改めて見回す。

するとコウキ君は、部屋の中心部にいた。

そして彼の目の先には、あからさまに怪しい装置が―――


「なんだそれは?」


「わかりません。

ただ、中心に(くぼ)みがあって、周辺に文字が書いてあります」


装置は石のような素材で出来ており、旅先に行くとよく見かける石碑のように(たたず)んでいる。

彼の言う通り、中心部には球状の“何か”を嵌め込むようになっており、その周辺には謎の文字がズラッと記されてあった。


「コウキ君、これ何の文字かわかるかい?」


「何語かわからない以上、解読も出来ません・・・

でもこの字体・・・先程の通路にあった文字に似てるんです」


警告だろうか、それとも注意書きだろうか。

出来れば後者であって欲しいところだが、そうなると恐らく前者だろうな。


そしてこの(くぼ)み―――

どっからどう見ても、ここに()め込むのはあの時計で間違いない。

というか、それしかない。

ポーチから懐中時計を出して、装置の前で見つめる。

さて果たして、どうするか・・・いやはや―――


「レイさん、それは?」


「ああ、部屋にあったんだ。

もしかしなくても、これはここに―――」


そうとわかると、彼はますます目をキラキラと輝かせていた。

・・・はあ、わかったよ、危険は(かえり)みないのね。

謎の装置で、この後何が起こるかわからない仕掛けを、私は起動させた。

窪みに懐中時計を、()め込んだ。




―――物凄い轟音と共に、装置の奥の壁が左右に割れる。

その先はこの部屋に入る前同様、真っ暗の中から恐怖と冒険心が手ぐすねを引いて待っていた。

少し身構えたが、床が開くことも、何かトラップが発動することもなく。

ただただ、新しい道が出来たわけで。


「おぉ・・・!」


凄い喰い付きだ。

若いっていいな、本当に。


「さて、行こうか―――」




刹那―――




「はぅ!」


コウキ君が素っ頓狂な声を上げる。

振り返ると、バタッという音と同時に地面へと倒れ込む。

一瞬、何が起きたか理解できなかった。

というより、理解することそのものを禁じられてしまった。


「っ!」




―――そう、体内に走る、強烈な電撃を喰らって。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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