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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [前編] ~
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調査ファイル 057 [Bad "Sea"quence]

「どうして海岸沿いなんですか?」


「洋館を出て外の景色を見た時、船が一隻もなかった。

海沿いの町・・・ましてやこういった島の場合、漁業が盛んの筈。

しかし時化(しけ)ているわけでもないのに漁船がないということは、海岸沿いには誰も立ち入っていない可能性がある。

そういう場所というのは―――」


私が説明をした(のち)、コウキ君はようやく気付いた。


「―――隠したい何かがある!」


「そういうことだ。

少し歩くことになるが、大丈夫か?」


「はい、もちろん!」


こうして2人は、歩き出した。




()は真上へ向かい、間も無く傾こうとしてきた頃。

互いに汗だくになりながらも、どうにか島の海岸沿いを半分程見ることができた。

ここに来た時に感じた心地よい潮風も、今では納涼要因でしかないのが非常に残念である。

それでも私は少し満足していた。

何故なら―――


「・・・ここで間違いなさそうだな」


「そうですね・・・」


いかにも怪しい洞窟が、そこにはあった。

何だろう、入口を見ているだけで気持ち悪くなりそうな、暗くて大きな穴。

一歩前へ進むだけで吸い込まれそうな―――そんな気分に(おと)しめられそうになる。


「こうもあっさり見つかってしまうとは、いやはや」


とはいえ、内部がわからない以上油断はできない。

トラップが待ち構えている可能性だってある。

番人なんていた日には、疲れも増してもはや発狂しそうだ。

恐る恐るテトラポッドを降りつつ、洞窟へと向かった。


内部はよりひんやりしており、入口から数メートル進んだだけで明るさがガクンと落ちていた。

よくもまあこんなところに・・・お宝を隠してしまって。

多少なり呆れてしまったが、弱音も愚痴も吐いていられない。

言うまでもなかろう、コウキ君だ。

彼の前でそんなことを言おうものなら、私は一探偵として失格の烙印を連打されてしまうだろう。

それ以上に、彼を悲しませてしまう。

額を拭って、真っ暗な道を懐中電灯で照らす。


「足元、気を付けろ」


「は、はい」


身体(からだ)は冷えてきているものの、汗は止まらない。

恐らく体温を上げようとして吹き出しているのだろう。

反面、コウキ君は完全に汗を引かし、肌は割と平然な状態に。

これが若さ・・・というべきだろうか。


足元ばかり見ていたせいか、周りに気を止めてはいなかった。

その為、目の前に現れたものには、少々動揺を隠せなかった。


「い、行き止まり―――!」


言葉には出さなかったものの、私も驚いたさ。

コウキ君はナイスな表情を顔に見せていた、ナイス。

ここまで来て行き止まりというオチは流石にないだろう。

そう思い、辺りをパントマイムの要領で(くま)なく手で探る。

すると―――


「・・・おや?」


掌には、微かに風を感じた。

勿論手の甲ではなく、掌の方にだ。

ということは―――


「この先に、道はある」


しかし押してどうこう出来るものだろうか。

薄い壁故に風を感じるとはいえ、コウキ君と力を合わせても壊せる保証はない。

何より後が怖い。

なるほど、今日はここまでか・・・


「仕方ない、一旦帰ろう」


「えぇ!ここまで来て引き返すんですか!?」


当然のリアクションだろう。

これも若さゆえか。


「気持ちはわかる。

だが軽装備で突入する程私もバカではない。

それに、もうすぐ陽が落ちる。

明日の朝、改めて来よう」


来てみてわかったことだが、ここは目につきにくく、特に人気(ひとけ)がない。

というより、()えて誰も近づいていないように見える。

やはり何かあるのだろう、それも“特盛”の『ヤバイ奴』が。


「・・・わかりました」


私の気持ちが伝わったのだろう、どうにか折れてくれた。

どうせまだ通れないんだ、仮に誰か来ても何か起きるわけではなし。

少し準備を整えておかないと―――


私たちは洞窟を後にした。




洋館に戻り、夕食を取った。

ワンピースが所々泥や砂で汚れていたが、執事は顔色一つ変えやしなかった。

もっと心配しろ、ばかもの。


それでも昨日とは一つ違うところがあった。

その答えは、テーブルの向かいにあった。


「このお肉、美味しいですね!」


口の横にソースを付けながらニッコリ笑う少年。

彼もまた食事が寂しかったのだろうか、ここぞとばかりに喜んでいる。

それを見て、思わず微笑みを零してしまう。


食事を終え、部屋に戻ろうとしてた。

雑談をしながら部屋の近くまで行くと、見慣れない顔がゾロゾロと―――




「ん、あんたらは・・・」




ヒゲを蓄えた男が、ボソッと喋る。

そうか、この人たちも―――


「あんたらも招待された口か?」


「ええ。

あなた方も?」


「おうよ。

俺たちはみんなオカ研で、課外調査の一環で来たんだよ」




オカ研・・・正式名、オカルト研究会。

様々な超常現象や未確認の生物・物体の調査を行うことを(しゅ)としている団体。

彼らは同じ大学の研究会に在籍しているメンバーで、たまたまここに調査に向かおうとした矢先、招待状を貰ったとのこと。




「俺は剛田(ごうだ) 雄吾(ゆうご)、オカ研のリーダーだ」


最初に挨拶してきたのは、いかにもと言うべきか、見るからにリーダーっぽい男だった。

体格のいいスポーツマンのようにも見える。




「私は大原(おおはら) 瀬奈(せな)、よろしくね」


次に挨拶してきたのは、可愛らしい女性だった。

どうやらこの中では紅一点らしい。




「俺は松島(まつしま) 智也(ともや)

ま、仲良くやろうや」


若者らしく、フランクに挨拶してきた。

眼鏡を掛けているのだが、インテリ系なのだろうか。




「僕は堂島(どうじま) 芳次(よしつぐ)、よろしく。」


先程の青年とは正反対に、爽やかな好青年だ。

こちらもインテリ系のような雰囲気を醸し出している。




大石(おおいし) 勝弘(かつひろ)・・・よろしく」


無口なのだろうか、表情も妙に暗い感じだ。

執事の1/5といったところか。




一通り挨拶と握手を交わす。

因みにコウキ君は私の後ろに隠れて身を潜めている。

一応社交辞令変わりだ、聞いてみよう。


「みなさんに問いたい。

ここに招待された理由はご存じで?」


私としては的確な弾丸を込めたつもりだったが、的には当たらなかったようで―――


「・・・いや、俺たちもよくわかんねぇんだわ。

(わり)いな、嬢ちゃん」


・・・剛田と言ったか、彼はそう答えた。

全く、ここの(あるじ)とやらは何を考えているんだ。

物探しなら正式に依頼すればいいのに―――


「まぁ何だかよくわかんねぇけど、同じ境遇の者同士、楽しくやっていこうや」


ニーッと笑うスポーツマン。

同じ穴の(むじな)・・・というのは(いささ)かどうかと思われるか。

何にせよ、彼らとも暫くやり過ごさなければならなくなったわけ、か。




(オカ研・・・ねぇ)




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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