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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [前編] ~
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調査ファイル 054 [謎の案内人]

船は港へと到着した。

遠くから見た島の景色は、現在荘厳(そうごん)な雰囲気を瞳に焼き付けている。

パンフレットを見る限り、ここは誰かの所有地・・・というわけでもなく、住民も割りと多い。

それでも活気の声は(とぼ)しく、人の影は全くと言っていいほどない。


「静かすぎる―――」


ゴーストタウンならぬ『ゴーストアイランド』と言ったところか。

船から降りる客も、私を含めても数えるほどだ。

鞄を持ちながら港を出ると、私は視覚的違和感を感じた。


「・・・お待ちしておりました」


名乗らずとも私を知っていたのは、一人の男性だった。

バシッと決めた紺のスーツ姿は、一周回って“怖い雰囲気”を醸し出している。

60代くらいだろうか、整えられた白髪に髭が、風になびく。


「私を招待したのはあなたですか?」


「いえ―――」


その回答は、意表を突かれた。

それにしても、普段は無口なのだろうか、返事は淡的なものだった。


「では誰かの指示で私を呼んだと?」


「・・・」


男は、(だんま)り。

仮にそうだとしたら、この男は使いの者か執事といったところだろう。

風貌からすれば、後者だろうな。

そして先述の違和感は、背後にあるものに最も集中していた。


「では、こちらへ・・・」


彼が案内したのは、車だった。

島を行くとなると、軽自動車や普通自動車などが一般的だ。

しかしそこには―――リムジンがあった。

世間一般的なリムジンよりは若干小型ではあったものの、内装は高級感が私を包み込む。

男は運転席に乗り、私たちは港を出発した。




少し走ると、車は山の方へと向かっていた。

窓ガラスから眺めると、麓には小さな町があり、その外れにも家が何件か建っていた。

不思議と恐怖感などはなく、ただ無音の車内で揺られている。

目の前にはテーブルと高級であろうシャンパンがあったが、どうも手をつけようという気にはなれない。

私の事を知っているであろう、恐らくこれはノンアルコールだ。

だとしても、まだ懐疑的であることに変わりはない。


「―――そちら、アルコール入りでございますので、お飲みになるのはお控え下さいませ」


・・・見透かされていた。

しかもアルコール入りだったとは―――

一体私をどうしようというのだ彼らは。

ますますモヤモヤを抱きながらも、車は走り続けた。




程なくして、車はスピードを落とし、完全に止まる。

窓ガラスから覗いた先には、大きな洋館が(そび)え立つ。

姿なき主催者はここに招き、何を企てているのか。

果たして探偵として呼んでいるのか、怪盗として呼んでいるのか。

それとも―――


鞄を持ち、洋館へ足を運ぶ。

山の中腹辺りにあるものの、頬を触れるのは潮風だった。

気温も少し低く、それでも涼しいといったところ。

大きな扉を男は軽々と開け、私は中へと入った。


エントランスホールには巨大なシャンデリアが吊られており、全面へと光を放っていた。

少し感心していると、男はこちらへ振り返り、右腕を腹部へ当て、お辞儀をする。


「ようこそお越し下さいました、黒川レイ様。

私は当洋館(あるじ)の執事、勘解由小路(かでのこうじ) 忠治(ただはる) 宗右衛門(そうえもん)でございます」


日本に来て日が浅いせいか、どえらい名前を聞いたような気がする。

しかし、何が凄いかって、一切名前負けをしていないところである。

まるで気を抜いたら首を掻き切られそうな・・・そんな感じがひしひしと―――

執事は頭を上げると、相変わらずの凍り付いた目と表情で、私に言う。


(しば)しの(あいだ)、お部屋の方でお寛ぎください」


そういうと、冷気を纏いながら振り返り、2階の方へ向かっていった。

階段を登り廊下を進むと、いくつか部屋が見える。

パッと見ホテルのようにも見えるが、当然ナンバープレートもなく、鍵も外側から開けられないようになっていた。


部屋の中に入ると、まるで中世ヨーロッパの貴族の館を連想させる作りになっていた。

まさに『客室』といった雰囲気ではある。

私はベッドに腰かけ、一息ついていた。


「そういえば、春香ちゃんから貰った荷物が・・・」


ふと思い出した、春香ちゃんからの餞別(せんべつ)

袋の上の方にあった飲み物は貰ったが、その他のものには手を付けていなかった。

というより、確認すらしていなかった。

不思議なもので、私は少しワクワクしていた。

今までこういう経験がなかった故のものか・・・いや、今はいい。

ともかく、見て見よう。

そして袋を開けて、中身を洗い(ざら)い出してみた。




「・・・何だ、コレは―――?」




思わず、固まってしまった―――




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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