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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第五章 ~ 名もなき招待状 [前編] ~
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調査ファイル 053 [探偵の一人旅]

封筒のチケットを取り出すと、乗船案内が書かれていた。

なるほど、船で行けと。

日付は今日の14時・・・急かしているのか、あと数時間しかない。

不審に思うレイだが、封筒の中に入っていた手紙に気付き、読み上げる。


「『黒川レイ様、貴殿を当洋館へご招待させて頂きます』―――

・・・差出人はなしか」


封筒同様、差出人は書かれていなかった。

誰が何の為にこんなものを―――

だが、興味深い。

ここまで(こしら)えてあるんだ、乗らない手はない。

元怪盗としては、お宝を盗んでみろという挑戦状のように捉えたようだ。

手に持ったグラスをテーブルに置き、レイは自室へ戻っていった。




10分後、旅行鞄を持ち出して降りてくる。

髪を下ろし、白いワンピースをなびかせ、麦わら帽子を手で押さえていた。


「・・・レイ、その格好は―――」


優希はあんぐりしていた。

無理もない、普段からパンツルックのスーツの人間がガーリーな格好をしているのだから。

しかし隣にいた春香はその逆だったようで。


「わ~!レイさん可愛い!」


声を上げて黄色い成分がもうこれでもかと(にじ)み出していた。

どうやら可愛ければ何でもいいらしい。

レイ自身もフッと笑っていた。


「たまにはいいだろう、こういうのも。

せっかくの旅行だしな」


その姿を見た春香は、レイに留まるよう声を掛けてその場を離れた。

暫くすると色々入っている紙袋を持ってきていた。

彼女なりの餞別(せんべつ)らしい。

上から見ると、中にはお茶やお菓子などが入っている・・・子供ながらの気の使いように、すっかり脱帽していた。


「おお、ありがとな。

それじゃ、行ってくるよ」


春香の頭を撫で、玄関へ向かう。

見た目はお嬢様スタイル、だが口調は相変わらずというギャップに()せられ、少し呆れ気味の優希。

1つだけ溜め息を落とし、苦笑いしながら右ポケットに手を突っ込んだ。


「それじゃ、行きますか」




暫く車を走らせると、景色は港となっていた。

優希は乗船場の中まで見送りに行き、レイは船へと乗り込んでいった。

出港すると、駐車場から手を振る人物が見えた。

ホントに良い子だな、優希は―――

しみじみ思いながら、レイは船旅へと出掛けていった。




甲板の手すりに頬杖をついて海を眺める。

透明な潮風は笑うわけでもなく、怒るわけでもなく、ただただ撫で吹くばかり。

ここのところ津田君と二人三脚を続けていた為、隣に誰かいないのが新鮮だったのだろう。

内心では妙にそわそわしてしまう自分が、どことなくやるせなかったりしていた。

思えば最初は単独で任をこなしていた怪盗、『寂しい』という感情は、自心(じしん)として今一つ矛盾を孕んでいた。

真実を打ち明けていない以上、私がそう思うのは単なる我儘(わがまま)というものだ。

本当、早めに津田君に話さないとな―――――


「招待状・・・か」


手紙を見返しながら、ふと思う。

少なくとも私を知っている人物が呼んだことに間違いない。

問題は呼んだ『人物』よりも『目的』。

依頼にしては不躾(ぶしつけ)だが、それは何か違う気がする。

まあせっかくの休日だ、旅行がてら謎解きと洒落込(しゃれこ)もうじゃないか。


とある罪人の言い訳宜しく、手を額に、掲げ目を細める。

そっと目を開けると、そこには大きな島が見えてきた。

先程まで気にはしなかったが、私の感覚では気が付いたら現れた・・・そんな感じだった。


「ここか―――」


如何にもな佇まいは、もう怪しさをドリアンレベルで臭わせていた。

それはもうプンプンと。




潮風に乗せられた怪しい匂いは、私の好奇心をより引き立てていた。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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