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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第四章 ~ 呪いの絵画 ~
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調査ファイル 051 - EX - [Un-Cleard ~ Elizabeth Side ~]

美術館で絵画を奪取したエリザベスたちは、アジトである廃ビルへと逃げ込んだ。

しかし探偵のレイとケルベロスのレオたちの足取りは早く、即座に見つかってしまう。

互いに姿を晒し、火花が飛び散り合い、一触即発状態の彼らを遮ったのは、大きな地震だった。

二つの意味で逃げる口実が出来たエリザベスたちは、すぐさまアジトから脱出した。


そしてレイは確認したいことがあると言い、美術館へ向かっていたのだが―――





エリザベスたちは、別のアジトへと向かっていた。

レイたちより早く脱出していた彼らは、闇に紛れて車を走らせている。


「申し訳ございません、エリザベス様」


リムジンとも捉えられる胴体の長い車。

対面座席の中には、エリザベスと屈強な男が3人乗っていた。


「構わないわ。

あの場で()っていたら、(わたくし)たちも危うかったでしょうし。

それに―――」


エリザベスの手には、1枚の絵画が握られていた。

そこには、堂々たる姿の天使が描かれていた。


「これでお宝は私のモノ・・・!」


すると、屈強な男の内の1人が、エリザベスに問いかける。


「恐れ入りますがエリザベス様、その絵画は一体・・・?」


どうやら部下たちは何も知らされていなかったようだ。

与えられた命令は『絵画を奪え』、ただ1つ。

それを踏まえてか、怒りを露わにすることもなく、少し艶やかな表情を浮かべ、妖艶に話し出す。


「私が探していた絵画には、ある財宝の在処が示されているわ。

その財宝を手に入れれば、永遠の富を約束されるらしいのよ」


更に別の屈強な男の1人が、エリザベスに問う。


「その財宝とは・・・?」


「―――奇跡の蒼炎(そうえん)、そう呼ばれているらしいわ。

ある人物の情報によると、それは蒼々とした美しいダイヤモンドみたい。

はあ・・・早くお目に掛かりたいわ―――」


エリザベスは恍惚の表情を浮かべている。

男たちは言われずとも、命令が上書きされるのを瞬時に悟った。

それは、『奇跡の蒼炎を手に入れろ』。

何故彼らはそこまでエリザベスに執着するのか。




「よく当てなかったな、カール」


別の車両では、レイの足元に弾丸を撃ち込んだ狙撃手、カールが乗っていた。


「あれくらい朝飯前だ。

それより、奴らが追いかけて来ないようだが―――」


「きっと見失ったんだろう。

俺たちは財宝の在処とやらを見つけようぜ」


「おちゃらけるのはその辺にしておけ、アレク。

奴らが先回りしている可能性だってある。

それに、あの絵画が偽物という線も捨てきれない」


話し相手の名前はアレクサンダー、通称「アレク」。

2人はヒュドラーの幹部、エリザベスの側近に当たる人物だ。

エリザベスの乗る車の後方に仕え、緊急時に対応出来るよう敢えて離れているらしい。


「なーに、心配ないって」


「―――だといいが・・・」




一方、エリザベスは。

相変わらず惚けて絵画を見ている。


「はあ・・・」


絵画を眺めながら、財宝がどこに隠されているのか。

そもそもどんなメッセージが込められているのか、胸躍る気持ちを隠しきれずに探している。

そして彼女は、絵画を傾けたりするなど、動かし始めた。

すると―――


「・・・?」


車の窓の方へ向けた瞬間、エリザベスは何かに気付く。

何か・・・光っている・・・?


「これは・・・!」


恐らくメッセージだ!

そう思った彼女は解読をしようと試みる。

が、それは日本語でも英語でもない為、読むことは出来ない。


「あなたたち、これを解読して頂戴」


「どうされましたか?」


「月明りに照らしなさい。

そして浮かんでくる文字をすぐに読み取りなさい!」


男たちは慌てて解読を始める。

すると1人の男が、その文字を見て文章を解読し始める。

しかし、読み終えたその表情は、歓喜のものではなく、非常にマズい・・・といった青ざめるものであった。


「何をグズグズしているの!

早く読みなさい!」


耐え切れず、男は読み始めた。

―――戦々恐々と。







男は、読み終えた。

そう、読み終えたのだ。

それは何を示すのか。

2人の男も何となく察知していた。


そう、『死』―――


こうまで苦労して手に入れた絵画が、隠されたメッセージが・・・

まさか手紙だったとは誰一人思うまい。


当然、エリザベスも。




「何よ・・・これ・・・」




どうやら怒り心頭の様子だ。

少々放心状態のようでもあったが、いつ爆発してもおかしくない状態でもある。

だがタイミングがよかったのか、車はアジトへ到着していた。

男たちは早々に降り、ドアを開けてエリザベスのエスコートを始める。

無言で降り、手に持っていた絵画を地面に叩きつけて、彼女は館の中へと消えていった。


男たちは、館の扉が閉まるまで、ずっと立ち尽くしていた。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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