表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第四章 ~ 呪いの絵画 ~
56/129

調査ファイル 050 [見えないいと]

「・・・メッセージ?」


「うむ。

スーザンは絵画の中にメッセージを隠したいたのだよ。

誰にもわからない、秘密のね」


ロベルト警部は電話越しにそう言った。

メッセージを隠すったって、天使しか描かれていないキャンバスのどこに・・・

まあ、あの絵画自体まじまじと見ちゃいないわけで、詳しくはわからないわけで・・・


「修道院のシスター・・・ユリスの同期が証言した。

部屋の窓辺で絵画を掲げているのを見た、と」


そうか、天使の絵画にも仕掛けがあったんだ。

ユリスさんはそれに気付いて・・・だから窓辺で掲げたんだ。


「じゃ、じゃあ、そのメッセージって―――」


耳元スピーカーは、数秒の空白を織り成した。

そしてそれは渋い声で硝子の様にブチ破られる。


「・・・残念ながら、そこまではわからなかった。

証言者もメッセージまでは見ていなかったようだ。

すまない―――」







ロベルト警部との電話でも、絵画にメッセージが隠されていたのは証明済みだ。

しかしその絵画はエリザベスの元、更にメッセージのメモとされる文章も意味不明。

レイ、これをどう紐解く・・・?




「ふむ・・・」


啖呵は切ったものの、少し考え込んでいる。

恩師から弟子に送るメッセージとしても、メモには恩師に向けた手紙のような内容しか書かれていない。


「それにしても、まさかあれがメモだったとは―――」


僕はふとイギリスの洋館の出来事を思い返していた。


「どんなところだったの?」


興味があるのだろうか、宮川さんが食いついてきた。

いずれは行きたいのだろうか。


「イギリスなんですけど、本当に長閑(のどか)なところでしたよ。

海沿いなんですけど、結構緑が広がってるんですよ。

洋館も広々としていて―――」


つらつらと話し、暫くしてハッとする。

僕、話し込んじゃった・・・?


「す、すみません、1人で喋っちゃって・・・」


「ううん、すっごく面白かった!

行ってみたいな~、イギリス」


やはりそうなのか。

まあ、実際空気が美味しい良いところだったし。

旅行に行くには最適な場所ではあったかな。


「僕もまた行ってみたいです。

今度は事件絡みじゃなく、旅行で」




「旅行―――」


少し離れでレイが呟く。

あれ、もしかしてこれヒントだった?


「何かわかったの?」


「いや、1つ思い出してな」


旅行で思い出すこと・・・ああ、そういえば。

遺体があった部屋、テーブルの上に鞄があったっけな。

大きさ的にも旅行鞄だよな、あれ。


「鞄のこと?」


「ああ。

あの部屋の中で随一の異彩を放っていた」


遺体じゃないのかよ。

そうツッコミながらも、本心を押し殺して話を聞く。


「もしかして、誰かが旅行であそこへ行ったとか?」


「否定はできない。

旅行はともかく、何者かが侵入したのは事実だしな」


問題は誰がそこに、か。


「それにあの鞄、女性の絵画の鞄と色合いや大きさも同一のものだった」


「え、そうだったの!?」


そこまで見てなかったな。

遺体と手紙で頭が一杯だったし。


「ってことは、あの女性のモデルが犯人―――」


「いや、まさか・・・」




すると突然―――




「あ!」


宮川さんが声を上げる。


「どうした!?」


加えて前田さんも声を上げる。

何かあったのか・・・!


「・・・上着がススだらけ」


僕はギャグ漫画よろしく、物凄いコケかたをした。

前田さんは呆れたような表情で彼女を見ている。


「お前さんなあ・・・」


「だ、だって、これ買ったばかりの服なんですよ。

あ~ん、洗ったら色落ちちゃうかな・・・」


「んなモンわかんねえよ。

白は洗っても白だし、その赤いのもわかりゃしねえって」


「色移りとかするじゃないですか!

それにこれはサーモンピンクです、赤色じゃないです」


「同じようなモンじゃねえか。

赤もピンクも変わんねえよ」


「全然違います!

色褪(いろあ)せちゃったらまあ微妙ですけど、まだ新品なのでハッキリわかります!」




「色褪せ・・・?」


またもやレイが呟く。

これも何かのヒントになったのか。

レイは持っていた絵画をバッと開いて眺める。


「津田君、これを見てくれ」


下から除くのではなく、普通に上から見るよう指示される。

どうやらメッセージが焦点ではないらしい。


「・・・女性の絵画、だよね。

これがどうしたの?」


「この絵画、古いように見えるか?」


突拍子もないことを言い出した。

そりゃあ古いでしょうに、このキャンバスの具合からして。

三波さんが長年ここに封印していたんだから、答えは明白だ。


「古いでしょ」


「―――そうだ、これは古い絵画だ。

古い絵画というのは、一般的にどういう特徴を持つ?」


更に突拍子もないことを言い出した。

まるで当たり前のことを確認するかのように。

ふーむ、特徴ねえ・・・


「まずは素材が痛む・・・かな。

よっぽど保存状態が良い場合を除けば、シワや切れが発生するね。

あとは色褪せやカビとか―――」


―――刹那、僕の発言を聞いて、レイは一瞬眉間のシワを鋭く寄せる。


「そう、色褪せる。

津田君は今、そう言ったな?」


「あ、ああ・・・」


「だとしたら、あの人の発言は妙だな。

となれば、これは―――」


手に持った絵画を、今度は下から見上げる。

我慢できずに、僕はレイに問う。


「それ、結局何て書いてあるの?」


「・・・そうか、そうだったな」




―――苦笑いしている。

ちっきしょう、僕もフランス語をマスターしていれば・・・

再び本心を隠し、翻訳を聞こうとしていた。


「では、読むぞ」




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ