調査ファイル 047 [ロンドンからの助太刀]
取り出した絵は、天使の絵画同様の白い布。
色の褪せ方が何となく似ている。
でもこれが何の意味を成すのだろうか。
するとレイは布を持ったまま部屋を出ていく。
慌てて追いかけると、最後の晩餐の元へと向かっていた。
「な、何をする気?」
「・・・いや、何もしないさ」
冷静に答えるが、その佇まいはあからさまに何か仕出かす様子。
まさか破ったりしないよな、はたまた燃やしたりとか・・・
しかし、そのどちらもせず、正面斜め上に翳してだんまりしている。
何か見えているのか。
「・・・レイ?」
刹那、僕は絶句した。
女性の絵画に、今までなかった文字が浮かび上がってくる。
薄い水色に薄い黄緑色を混ぜたような、幻想的な色でそれは現れた。
「こ、これは―――」
「やはりな―――」
その時、身体に妙な振動が走る。
驚いて胸に手を当てると、ポケットが震えている。
携帯電話を取り出すと、見慣れない番号から電話が掛かってきていた。
恐々としながらも出ると、再び僕は絶句した。
「あの・・・もしもし―――」
「Hi,Ray――――――――」
辛うじてわかったことは、それが英語だったということだ。
皆さんお分かりの通り、僕は英語がからっきしダメである。
街で外国人に道案内を頼まれただけで卒倒しそうになる―――くらい、酷いものだ。
それなのに外国人から着信が来るとなると、これはもうヤバイ。
案の定僕は狼狽する。
すると、僕の耳には聞きなれた言葉が入ってくる。
「―――もしかして、君はツダ・アキヒコ君かい?」
先程まで流暢な英語が流れてきたと思えば、今度は流暢な日本語が流れてきた。
どんだけすごいんだ、このスピーカー。
・・・じゃなかった、この人は。
「え、あ、はい、そうですが・・・」
「私はロベルト・マッカートニー、ロンドン警視庁の警部だ」
電話の相手は、まさかの警察。
しかも、ロンドン警視庁・・・おまけに僕より階級が上の警部殿ときた。
思わずダミ声で呆れ顔しながら「警部殿!」って言ってしまいそうだ。
「はあ・・・ロベルト警部、ですか。
日本語、流暢ですね」
「妻が日本人なのでな。
・・・いや、そんなことよりもだ。
例の件の調査結果が纏まったぞ」
寝耳に水だった。
調べてって・・・そんな節あったか?
―――いや、あったな、しかも僕の目の前で。
最後の晩餐の額縁調べている時、僕の携帯電話で誰かと話していた。
それがこれだったのか。
「あの、何を調べていらしてたんですか?」
「君・・・聞いていなかったのか?」
「寝耳に水です」
すると、彼は少し嬉しそうなトーンで―――
「おお、コトワザ!
ジャパニーズ・プロヴァーブ・・・うむ、心に響く良い言葉だ」
―――そう言った。
何この人、親日家?
「そ、それで、用件は・・・?」
「おっと、そうだったな。
先程レイから調査結果の報告を催促されてな。
今しがた書類を纏め終ったから折り返し電話をしたのだよ」
イギリスに何の調査を依頼したのか、僕はポカーンとしていた。
何かあったっけ、なんてふざけた感じに。
しかし思い返すと、僕たちはイギリスに行き、色々とぶっ飛んだ思いをしている。
その中で気になることや妙な事があり、尚且つそれを調査内容として依頼したとしたら―――
・・・間違いない、アレのことだ。
「―――洋館の遺体、ですか」
「・・・そうだ」
あの時レイは『イギリス警察に任せよう』・・・そう言った。
そしてイギリス警察・・・つまりロンドン警視庁は例の洋館を現場検証していた。
ということは、箱の中にあった遺体の正体がわかったのか。
「それで、その方は一体・・・?」
「うむ、それはな―――」
To Be Continued...
※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。