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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第四章 ~ 呪いの絵画 ~
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調査ファイル 045 [Treasure]

「退くわよ、急ぎなさい」


声を荒げるのは、妖艶な格好に身を包んだエリザベス。

突きつけた銃を懐へ戻し、踵を返す。

同時に近くにいたであろう、カールもその場を後にした・・・ような気がする。


「僕たちも逃げよう!」


レイたちに声を掛け、廃ビルから逃げ出す。

行く先行く先に落ちる瓦礫を避けつつ、階段を登って出口を目指す。


割かし新鮮な空気が鼻孔からドルフィンスマッシュを放ったということは、どうやら脱出できたらしい。

足元はグラグラと揺れているが、これは決して膝が大爆笑しているだけではない。

実際に地が揺れ、電柱や樹木も嫌そうに左右へ優しくしなっている。


「どうにか・・・逃げ切れたね」


「ああ・・・奴らもな」


息を切らしながら区切り区切りの会話を始める。

僕たちよりも先に出たのか、或いは別のルートで脱出したのか、そこには人影すらなかった。

ともあれ、逃げられてしまったが命あっての物種、とりあえずは良好だ。


「そろそろ話してもらおうか。

奴らの目的と、お前の目的を―――」




少し間をあけて、深呼吸を1つする。

下を向いて息を吐き終わった後、マジな瞳で淡々と説明を始める。




「まずはあいつらについて少し話そうか。

君たち、世界三大組織は知っているかい?」


たしか・・・ケルベロスとキマイラだったっけ。

ケルベロスはレオの組織、キマイラは北上の組織・・・っていうか、今目の前にいるし。

あ、でももう1つは聞いたことないな。


「―――ヒュドラー」


「ひゆ・・・何?」


冷静に答えるレイ。

ヒュドラーって何、その禍々しい匂いがプンプンする名前は何。


「ヒュドラー・・・ギリシャ神話に出てくるヘビの怪物だ。

12の頭を持ち、1本斬ってもすぐに再生するとされていた」


「その通り。

メンバーがやられてもすぐに増員して勢力を挙げたのが由来っぽいね。

元々は俗称で、周りからそう呼ばれてたんだけど、いつしかそれを自分たちで名乗るようになったらしいよ」


そのヘビの親玉さんが財宝求めて今回の騒動をしたってわけか。

でも待てよ、レオはあの絵画に財宝の在処は書いてない・・・とか何とか言ってたっけ。


「それじゃアレか、お前はヘラクレスになるつもりか?」


「笑える。

でもね、あれは財宝の在処を示したものじゃない。

レイも気付いているだろう?」


互いに不敵な笑みを浮かべる。

まるで以心伝心しているかのように。


「北上が言っていたんだ。

秘密組織について記されている―――と。

ヒュドラーは世界で最大規模の犯罪組織、バックに多数の資金源くらいついているはず。

なのに殊更財宝を狙うというのがイマイチ引っかかっていてね。

それで、秘密組織の情報が書かれているとしたら、同時に描かれている『財宝』というのは、恐らく金や銀などではなく別のこと。

世界で暗躍している、金になるモノといえば?」




―――そうか、それで。

金銀宝石類以外で金になり、闇組織が極端に欲しがるものといえば、アレしかない。




「―――麻薬!」




「ご名答。

もしも奴らが大量に入手したら、世界中で麻薬が蔓延ってしまう。

果ては戦争になりかねない」


「―――第2のアヘン戦争か」


「なりかねないね。

僕はそれを阻止するために行動していたんだ。

絵画については阻止出来たら改めて話すよ、まずは奴らを追いかけないと」




倒壊したビルを振り返り、僕たちは宮川さんの車に乗り込んだ。

果たしてこれは例の呪いだったのだろうか。

宝を探し当てようとする者への警告、持ち主への恨み辛み、それとも別の―――

いや、今はよそう。

早くヒュドラーを追いかけなくては。


「ところで、奴らはどこに行ったんだ?」


そう、脱出した際にはいなかった。

また別のアジトなりに逃げ込んだのだろうか。


「―――わからない。

だが、その前に1つ確認したいことがある」


「確認って?」


何か考えがあるのだろうか。

レイは少し眉間にシワを寄せながら、思い詰めたような顔をしている。


「・・・美術館に戻ってくれないだろうか」


「どうして?」


宮川さんが質問を投げ掛ける。

(いち)ドライバーとしては、やはり気になるところなのだろう。


「もう一度絵を確認したいんだ」


「でもヒュドラーって連中が盗んでいったのよね・・・?」


「ああ、確かに盗まれた。

―――『天使の絵』は、な」


三波さんが見せてくれた女性の絵は、ヒュドラーのエリザベスは追及していなかった。

仮に天使の絵のみを狙っていたとしたら、まだあそこにある―――そう思っているのだろう。

奴らの向かった先がわからない以上、まずは出来ることを最優先にやっていこう。

すぐに『宝』を見つけるとは思えないしな。




「よーし、それじゃ・・・飛ばすわよっ!」


宮川さんは、おもいっきりアクセルを踏んだ。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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