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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第四章 ~ 呪いの絵画 ~
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調査ファイル 043 [紫炎の女王]

冷静になってよーく考えてみれば、今凶悪犯と行動を共にしてるんだよな。

何気に車内に同席して、少なからず会話というか情報交換してたけど、これってとんでもないことですよね。

アジトと呼ばれる建物の前で車を止め、僕たちは降りる。

地に足をつけた時、色んな意味でちーっとマズイよな・・・なんて考えてみたり。


「・・・大丈夫、君たちに危害を加えるつもりはないよ」


―――見透かされている。

バケモノかこいつは。

口に出さなくても、(あまつさ)え表情にも出してないのに。




気を取り直して目の前の建物を見る。

・・・どう見ても廃ビルなんだが、違うという意見があるのならこちらまでご連絡を。

お掛け間違えのないように。


「・・・こんなところにいるのか?

車で移動したとして、ここに来たという保証は―――」


「―――嘘だと思うなら、ここでさよならだ。

正直、時間がないからね」


あっさり塩味の切り替えしに、予想の斜め上を射貫かれてしまった。

犯罪者を信用するというのも、警察としてどうかという気がまだ塊として残っているからな。

同じ犯罪者でも、レイとレオとでは月と(すっぽん)・・・とまではいかないまでも、差は間違いなくある。

僕は、突き進んでいいのだろうか―――




「津田君の言いたいことはわかる。

しかし、今の彼は少し違う。

不本意だが、ここは信じてみよう」


こそっと耳打ちをしたレイは、振り返って僕の目を合わせず、真っすぐ廃ビルへと入っていく。

レオとレイが並んで入っていくのを見て、何とも言えない気持ちで押しつぶされそうになっていた。

わからない・・・わからないんだ。

それでもレイがそうと決めたのなら、今はそうするしかいのか。

居た堪れない不器用な剣山を心に抱きながら、僕は2人の後を追う。


薄暗い場所と縁があるのか、行く先行く先がこればっか。

それ故、僕は懐中電灯を常備している。

といっても、小型のだけど。

レオも小型の懐中電灯を、宮川さんは携帯電話のライトで辺りを照らす。

廃ビルの入口は金属の細かい廃材が散らばっており、誰かがいる気配もない。


「本当に、いるのか?」


「間違いない。

アイツの性格からすると・・・こっちだ」


しれっと言っていたが、レオは『アイツ』と言った。

アイツってことは、犯人のことだろうか。

苦笑いして言う様を見ると、どうやら知り合いのようだが。


レオについて歩くと、どんどんどんどん地下へと向かっていく。

まるでRPGの世界に入った気分。

ここで気になったのは、道中に誰もいなかったことだ。

もしここがアジトだとしたら、下っ端の1人や2人いるのが筋なのだが。

360°見回してもだーれもいない。

それが返って不気味なのだが―――




「妙だな・・・誰もいない」


レイも気付いたようだ。

潜んでいる気配もなく、内心レオを疑い始めてきている自分を、何となく感じる。


「もしかして、僕が君たちを(おとし)めているとか思ってる?

だとしたら、それはないよ。

まあ、もうすぐわかるから」


軽い感じ、ホントにフランクに伝えるところは、ますます怪しいわけで。

階段からのコンコンが響く、結構降りてきたけど人っ子一人いない。

そして僕たちは、地下の扉の前に来ていた。

ついていった先には、怪しげな扉―――


「・・・もしかして、ここ?」


いかにもな扉を開ける・・・と思っていた僕は、正直愚かだった。

いや、愚かだったのだろう。

バゴン―――物凄い音を立てて扉が開く。

目の前で見ていた僕は、ただただ唖然としていた。

レオは、ポケットに手を突っ込みながら右足で扉を『蹴破った』のだ。

格闘術をやっていたのだろうか、蹴った扉は開いて壁に当たった後、無残にも金具が外れて床に倒れる。

とりあえず彼は・・・味方―――なんだよな?


「おーい出てこーい、いるんだろー?」


声を張って誰かを呼んでいる。

僕たちはライトを当てているが、どこまでも真っ暗で何も掴み取れない。




「―――相変わらず、騒がしい人ね」




かすかに聞こえたのは、女性の声。

ただ、その声と空間の奥から感じるオーラは、尋常ではない。

唐変木な僕でさえ、この背筋から迫る鳥肌モンの悪寒に包み込まれる。

近くにいた宮川さんも感じていたようで、僕の2倍以上は体感していることだろう。


「おーいたいた、随分探してたんだぜ」


奥から現れた姿は、ローブを全身に纏った人間。

その上で怖いのは、それが黒ではなくかなり明るい紫だということだ。

何このラスボス感―――


「あら、情熱的ね。

デートのお誘いかしら」


「寝言言ってんじゃねーよ―――」




『―――エリザベス』




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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