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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第四章 ~ 呪いの絵画 ~
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調査ファイル 042 [Ready Steady... ~ レオ、再来 ~]

風が収まったのを見計らって手を下ろすと、そこには惨事が広がっていた。

散乱したガラス、倒れている額縁、飛び散った破片で切れた最後の晩餐、そして・・・消えた三波さん。

僕は何が何だかわからず、10秒程立ち尽くしていた。


「っ!絵画は―――!」


レイは咄嗟に目を向けたが、先程三波さんが持っていた絵画は彼と共に消えていた。

してやられた、と言うべきだろうか。

彼はこの絵画を探すために僕たちを利用したのか、いや真相はまだわからないが―――




「―――遅かったか・・・!」


後ろ側から聞こえたのは、男性の声。

振り返るとそこには、彼がいた。

彼が、いた―――


「・・・レオ!」


「な、なんでレオがここに!?」


あの時助けてくれた青年、レオだった。

この惨事を見て軽く動揺こそしていたものの、妙に冷静な態度で振る舞っている。

まるでこの事を予見できたかのように。


「詮索は後だ、奴らを追いかけよう」


「何・・・?」


あろうことか、追いかけようと僕らに提案を申し出てきたのである。

味方でもない人に協力要請をされても、正直困るくらいだ。

しかし彼の目は、冗談の曇りもない本気の目をしている。

僕は、どうしたらいいんだ・・・?


「仮に追いかけるとして、どうやって追うんだ?

奴は突風とガラスの嵐を纏って逃げたんだ」


「まだ時間は浅い、そこまで遠くには逃げていないはず。

ここでグズグズしていたらより遠くへ逃げられるよ。

どうする、元怪盗さん・・・?」


こればかりはレオに一理あると思ってしまった。

今ナシを着けたところで、何も始まらない。

まずは行動しないと、現在進行形で彼は逃げているわけだし。

ちきしょう、尻尾掴んだらジャイアントスイングかましてやる。


「―――仕方ない。

優希、警察に連絡を。

春香ちゃんは念の為に事務所へ行って様子を確認してくれ。

津田君、行くぞ」


「待って、私も行く!」


そう言いだしたのは、宮川さんだった。

そうか、ここは思い出の場所だったっけな。

それを穢されたら、怒るのも無理はないか。


「・・・わかった」


「なら私の車を使って。

行きましょう!」




こうして、僕たちは優希と春香ちゃんを残し、美術館を出た。

だが、犯人の居所はわからず仕舞い、果たしてどこへ行けばいいのだろうか。


「それで、行先は?」


冷静を保ちながらも、少し怒りを混じらせて声を流す宮川さん。

答えを振られたレオは、助手席からすかさず行先を伝える。


「この近くに奴らのアジトがある。

そこへ向かってくれ」


「――ーアジトがあるなんて何故知っている?」


少し怖いトーンの声で、僕の隣・・・後部座席でレイは言う。


「何ヶ月も張り込んで調べたからね。

さあ、行こう。」


レオの指示する方向へ車は進み、アジトと思しき場所へと、向かっていた。




車が走っている間、私は考えた。

何かが・・・何かがおかしい。

念の為、もう一度状況を整理してみよう。


まず、北上から絵画の情報をもたらされた。

その絵はお宝の在処を示したもので、同時に秘密組織の情報も記載されている。

絵画の事を聞くために美術館へ向かって、三波さんに出会った。

彼が見せてくれたのは、呪いが掛けられた女性の絵、しかもそこには暗号が記載されていた。

そしてその絵のモデルはイギリス、そこにヒントがあるとされ、私たちは向かった。

辿り着いた洋館の中には、絵にあった鞄と―――遺体があった。

様々なヒントを元に日本に帰り、ここへ戻って最後の晩餐から絵画を取り出した。

そして―――三波さんがそれを強奪した。


ざっくりいうとこんな感じだろうか。

・・・我ながら、本当にざっくりだな。

して、本題はここからだ。


何故北上は天使の絵画について知っていたのか。

何故三波さんは絵画の呪いを受けなかったのか。

何故三波さんは絵画のモデルがイギリスと知っていたのか。

洋館にあった遺体は誰なのか。

そして、強奪犯は誰なのか―――




隣で物凄く考え込んでいるから、ピリピリした空気が右腕を刺激している。

正直、居辛いです。

悪いとは思っていたものの、空気のトゲに耐え切れず話しかけてしまった。


「・・・あの絵を奪った犯人、本当に三波さんなのかな?」


「わからない。

だが、あの時私は消える直前の姿を見た。

目は細めていたものの、あれは紛れもなく別人だ」


意外にも答えを返してくれた。

『邪魔しないでくれ!』と怒られるかと思ったが、そこはある意味怒られるより不意打ちを喰らってしまった。

僕も少し見たけど、あの場所にいたのは三波さんだけだったし、現にあの場には三波さんだけいなかった。

そう考えるしか、ないのでは―――




「―――あの男は、三波一郎じゃないよ」


藪から棒にぶつけてきて、何かと思えば・・・え、三波さんじゃない?

まあ実際半分はそう思っていたが、その根拠は何だ?


「何故そう断定できる?」


僕の代わりにレイが代弁してくれた。

相変わらず怖い顔のままだ。


「君たちがイギリスに行った後、三波一郎にすり替わっていたんだ。

そして君たちがどう行動するかを密かに監視していた。

奴は向こうで答えを見つけ出した君たちが、絵を探し当てた瞬間を狙って、今回の犯行を実行したんだよ」


「高みの見物・・・か。

ということは、本物の三波さんはどこかに監禁されているというわけだな。

一体誰なんだ、犯人は―――」


すると、助手席でフフッと笑う声が聞こえた。

顔が見えない中、レオが小笑する。

まるでバカにしているかのように。


「何がおかしい・・・」


ああヤバイ、導火線に火が点いてる。

おいおい、キャンプファイヤーにニトログリセリンぶっかけるやつあるかよ。


「違う違う、君を笑ったわけじゃないんだ。

今回はさすがに相手が悪かったね。

奴らは全ての行動に於いて証拠を残さず暗躍して任務を遂行する集団。

わからなくて当然さ」


「レオはそいつらのこと、知ってるのか?」


「ああ、知っているさ。

何しろ、何度かやりあったことがあるからね。」


まさかの顔なじみである。

ということは、今回の犯人は北上が言っていた例の秘密組織・・・?


「ま、会えばわかるさ。

もうすぐアジトに着くよ」




僕の鼓動は、高鳴る一方だ。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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