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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第四章 ~ 呪いの絵画 ~
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調査ファイル 041 [陰に潜む刺客]

「額縁の裏は―――」




貼り付けられていた絵を壁から外す。

裏側に回り込み、何かあるかを確認する。


パッと見、端から端まで一面白い布のままだ。

よく目を凝らしてはいるが、何かあるようには見えない。


「・・・何もないぞ?」


「白いまんまだね」


「黒川さん、こんなことして何を―――」




刹那、目の前で声を上げた。

驚愕を封じ込めたそれは、館内を飛び回るように反響する。


「―――中だ!」


中って・・・まさかこの絵の中!?

バカな、そんなところにあったらこんな苦労はない。


「いくらなんでもそれはないだろう!

絵の中に絵を隠すなんて・・・仮にそうだったとしても、額縁の分が浮き出て―――」


「いや、入っているのはキャンバスの布だけだ。

目立ってしょうがないだろうしな」


「それにしたって・・・

第一、何で絵の中に絵を?」


クールな眼差しを向け、僕に問いかける。


「天使は、神に仕える―――つまり、キリストに仕えていた者を指す。

この絵のこのキリストを『神』とするならば、天使に値する人物は、誰になる?」


この12人の人物は、キリストが愛した弟子とされている。

どれも天使に値するといえば値するけども、この中により親しい人物がいるってことなのか?

・・・親しい?


「あ、もしかして―――」


妙な博学者、優希さん。

またもや挙手していらっしゃる。


「それって『ヨハネ』だよ。

ある文献では、磔の際にキリストの下にいたのも彼だったし、多分そうじゃないかな?」


「そう。

私の推測では、恐らくそこに絵画が隠されている」




何のことかさっぱりわからない僕を置き去りにし、従業員は作業を再開する。

絵画を床に降ろし、額縁の背面を開ける。

キリシタンの方だろうか、開ける際に十字を切る者や、失礼しますと詫びを入れる者もいた。

中を開けると、白い大きな布が覆われていた。

これまた失礼します、とヨハネの描かれた位置の布をカッターで切ると・・・不自然なまでに1枚の別の布が入っていた。

従業員の1人がそれを持ち上げると、それはただの布ではなかった。


そう、絵画だった―――




「て、天使の絵―――!」


「まさか―――!」


僕と宮川さんは、唖然としていた。

それもそうだ、憶測でしかないと思っていたことが現実に起こったのだから。

ましてそれが幻の絵画というのだかが、驚かない方がおかしいくらいだ。

のだが、うちの探偵見習いたちは驚くというより・・・


「うっそ、ホントにあった!」


「わー、すごーい!」


楽しそうにはしゃいでいた。

マジックの1種かなんかと勘違いしてるんじゃないだろうな。


「―――こんなところにあったとはな。

でも誰が・・・」




「すみません、少し拝見しても?」


振り返ると、神妙な面持ちの三波さんがそこに。

この館の責任者だしな、断るわけにいかない。


「あ、はい、どうぞ」


そういうと、彼は取り出された絵画の方へ向かう。


しかし、思えば妙に引っかかる部分がある。

例えばここにある最後の晩餐・・・実際に中を開けると絵画があったけど、誰がここに仕込んだのか。

加えて、これは誰が複製してどのようにここへ寄贈したのか。

それだけじゃない、前にも思ったけど、三波さんは何故絵画の呪いを受けなかったのか。

地下にある女性の絵の持ち主は一応彼になるが、ピンピンしているところを見ると、呪いと呼ばれるものが何も反応を示していないのも不自然に思える。

まさか嘘の供述を―――いや、ないとも言い切れないぞ。

イギリスへ仕向けたのも彼だし、これは何かありそうな・・・


「どう思う、ここまでの事態を」


こそっとレイに耳打ちをする。

気付いてこちらを振り返ると、しっくりしていない表情を向ける。

どうやら殆ど同じことを思っていたようで。


「妙だな。

ここまでの仕掛けを企てる理由は何だ?

これでは本当の宝探しになりかねな―――」


「どうした?」


少し見開いた目を維持しながら、固まるレイ。

お決まりの考えるポーズをしながら、一点を見つめて動こうとしない。

床をじっと見ながら、頭の中でモーターをフル回転させているのだろう。


「待てよ、宝探し・・・?

何故北上はそんな情報を知っていたんだ?

見たことも聞いたこともないはずなのに、割と明確に知っていたのはどうしてだ?

仮に誰かがタレコミとして流したとして、一体―――」



―――その時だった。



「はっはっは・・・ついに、ついに―――!」


大きな声を上げて喜びを(あらわ)にしたのは・・・・・・三波さんだった。

しかし、先程までとは違いネジの外れたロボットのように、狂った面持ちをしている。

その表情、その笑い声、優しそうな面影を残したおじさんの顔ではなくなっていた。


「三波・・・さん?」


刹那、左側の壁の窓ガラスが勢いよく割れた。

物凄い風が吹き込み、皆は思わず顔を覆い隠してしまう。

僅かに目を開けて見た先には、三波さんとは似ても似つかない人物が、絵を掲げている。

お前は・・・誰だ―――?




「それじゃ、この絵は頂いていくぞ」


そう言って、彼は窓の奥の闇へと消えて行った。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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