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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第四章 ~ 呪いの絵画 ~
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調査ファイル 040 [対面の時]

美術館に着いた僕たちは、傘を差して入口へ向かう。

距離としては駐車場から大してないけれども、何となく傘を用意してしまっていた。

何だろう、今日に限って濡れるのが嫌だったのだろうか。

フワ~っと可愛らしくあくびをする春香ちゃんを見て心が朗らかになったところで、少し気持ちも落ち着かせることができた。

館長の―――三波さんのいる館長室へと、向かおうとしていた。




「あら、あなたたち―――」


そこにいたのは、1人の女性。

僕とレイはその人物をよく知っている。

何を隠そう、彼女は―――


「―――宮川さん!」


そう、宮川茜である。

レイが入院していた病院の看護師で、最初の事件に関わった人だ。

その節はどうも、色々な意味ですみませんでした・・・

でも何で彼女がここに?


「宮川さん、何故こちらに?」


「ここの美術館ね、昔父とよく来ていたの。

たまたま思い出したら懐かしくなっちゃって、来ちゃったのよ」


「そうだったんですか・・・」


「あ、父はまだピンピンしてるからね!

そんなに落ち込まないでね!」


こうやってみると、実に愉快な人だ。

姉のような雰囲気を漂わせながら、少し気の抜けた一面を垣間見ることができる。

年上なんだか年下なんだか、今一よくわからない。


「黒川レイさん・・・だっけ?

すっかり元気になったわね、よかった」


「その節は、どうもありがとうございます。

すみませんが、私たちこれから用がありますので・・・」


そう言ったレイの言葉に食いついたようで。

え~これから何やるの!?気になる~!・・・・・・と、言わんばかりの表情をしている。

まるで優希の鏡写しを見ているようだ。

なんか釈然としないが、ここは胸の内に封じておこう。


「これから館長に会うんですよ。

もちろん、お仕事の一環でね」


「そうなの、刑事って大変ね。

ねえ、私も見学していい?

お邪魔はしないからさ!」




ほらきたよやっぱりきたよ。

でも外部の人間にこれ以上関わらせるのもな・・・

実際、優希だってかなりアウトに近いグレーゾーンだし。

そんな天秤の駆け引きをよそに、積み上げたジェンガを蹴りで吹っ飛ばすが如く突拍子もないことを言い出すヤツが約1名―――


「構わんよ」


おいこら探偵殿。

機密事項っつってんだろうが。

プライバシー云々はどうなんだよ。

そりゃあヤクザ相手だし、プライバシーとか下手に守らなくてもとは少しくらい思うよ。

でも部外者にあっけなく情報を開示するのもどうかと思いますよ。


「ホント!?

ありがとう!」


「因みに、ここには何を見に来たんだ?」


「んーとね、『最後の晩餐』っていう絵画かな。

わかる?横長のおっきいやつ」


「そうだったのか、なら丁度いい。

私たちもそれに用がある。

津田君、行こう」


しかも勝手に話進んでるし。

下手したらホントに始末書もんだな、これ。




これまた成り行き・・・というかレイの勝手によって、宮川さんが加わった。

5人で2階に行き、最後の晩餐へと足を運ぶ。

天井まで結構高さのある大きな壁に、縦幅ギリギリなくらいのサイズで飾られていた。

その大きさは、瞳の奥の水晶を震わす程の衝撃を与えていた。

前にも言ったが、僕にはこういった芸術は何がいいのかとかそういうのはよくわからない。

が、この迫力は何かを問いかけられているかのように、胸に迫る謎の想いが、弾丸のように降り注ぐ。


「これが・・・最後の晩餐」


「―――の、ようだな」


優希と春香ちゃんはポカーンとしている。

その後ろで、宮川さんも薄目ではあるものの、驚いた表情をしている。

あまりにも圧巻な絵画を目の当たりにして放心していたが、すぐに我に返り、レイに問う。


「そうだ、天使の絵画―――

この絵がヒントなんだろう?」


聞いているのか聞いていないのか、お決まりのポーズのまま絵を見るレイ。

ジーッと見る先には、どデカいキリストが座っていらしている。


「レイちゃん、黙り込んじゃったね」


少し寂し気に話す優希に、どことなく申し訳なさが沸いてきてしまっていた。

だって成り行きとはいえ、イギリスに連れ出した挙句アッシーにして会話も置いてけぼりだもんな。

誰だってこうなれば投げ出すところを、嫌がる素振りもなく平然とした態度で僕たちに接してくる。

昔からそうだ、聖人(せいじん)として崇め奉られてきたのも、伊達じゃないな・・・


「そう、だね・・・」


今の僕には、これくらいしか言えない。

これ以上巻き込んでしまっては、取り返しがつかないのではないか。

思えば思う程、罪悪感のループが途切れることなく重しとなってくる。


「見たところ、特に変わった様子はないようだ。

津田君、館長のところへ行って、この絵を動かしてもらえるよう頼めるだろうか?」


突然だった。

この大きな絵を動かす?

一体何を言い出すかと思えば・・・


「そんなの無理に決まってるだろう!

壁に貼り付けた巨大な絵を動かすなんてそんな―――」




「―――構いませんよ」


後ろから男性の声が聞こえ、慌てて振り返る。

そこにいたのは、三波さんだった。

なんというタイミングでしょう。


「い、いいんですか!?」


「はい。

何かお分かりになられたようですので」


あっさりと許可取っちゃったよ。

マージかー・・・・・・・


暫くして、十数人の従業員が絵の取り外しにかかる。

まさかこんな大掛かりになるとはな。

ってか、この絵の裏に何かあるのだろうか?


「レイ、この絵の裏に何かあるの?」


「さあ?それは見てのお楽しみだ」


無計画なのだろうか、それとも真正のアホだろうか。

ここまでして何もないったら示しがつかんぞ。

―――なんてなことを考えている内に、絵が壁から外れる。




「さあ、ご対面だ」




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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