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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第四章 ~ 呪いの絵画 ~
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調査ファイル 037 [2人だけの秘密]

「ひ、人の骨―――!?」


かなり月日が経っているものだった。

年齢はおろか、性別すらわからない。

拡散していたところを見ると、横たわって亡くなったわけではないようだ。

頭蓋骨(とうがいこつ)がこちらを見ているような感覚に襲われて、少し気持ち悪い。


「どういう・・・ことだ」


「わからない。

だが、あの絵が関係しているのは間違いないようだな」


そして、レイはテーブルの方へ視線を送る。

あのカバン・・・何が入っているのか。

僕は春香ちゃんと優希を部屋の奥へ入らないよう、入口付近に留まらせるようにした。

こういったものは、見慣れていない一般人が見たら、トラウマになりかねないからな。


「では、開けてみましょうか」


生唾を1回、音を立てながらも飲みこむ。

まさか、凶器なんて入ってないだろうな―――


ガチャリ、鞄を開ける。

アタッシュケースのように開いた中には、色々なものが無造作に入れられていた。

衣類が多い様だが、レイはあるものに目を付けた。

左手には、色褪(いろあせ)せた古い紙が1枚、握られていた。


「何だそれ?」


「手紙のようだな。

所々霞んでいるから、全文はわからないけどね」


かなり年季の入ったその紙には、日本語ではない異国の言葉で何か(つづ)られていた。

正直、パッと見呪文というか、いたずら書きというか、そういう風にしか見えない。

知識なきが故か、何とも・・・


「内容わかる?」


「フランス語のようだな。

どれ―――」


スラスラと読み上げるのは、フランス語らしい。

洋立ちの顔だとは思っていたが、まさかここまで語学に特化していたとは。

ホントに日本人か、彼女(レイ)は・・・?

読み終えた(あと)咄嗟(とっさ)に質問を投げ掛けた。


「なんて書いてあったの?」


「ふむ・・・」




お久しぶりです、ご機嫌如何でしょうか。

私は教師になり・・・

しかし、ある生徒は未だに私を好かず・・・

悩みもありますが・・・

・・・・・・協力して・・・・・・・・

そうそう・・・の為に用意した贈り物、気に入ってもらえたでしょうか?

次は・・・で逢いましょう。




「なんだその手紙。

旧知の人に出した手紙?」


「恐らくな。

だがこの『贈り物』という部分が気になる」


贈り物―――

普通ならお歳暮やお中元を思い浮かべるが、イギリスではそういう文化はあるのだろうか。

仮にそうでないとしたら、誕生日とかそんな感じかな?

受取人へ送ったものなんだろうけど、それが何かという記述はないし、第一この2人の関係もイマイチわからず仕舞いだ。


「こうやって手紙を送るっていうことは、結構親しい仲なのかな?」


「当時は電子メールがないから、こういった手紙を送るのは当たり前の時代だ。

決して親しいから手紙を出したということではない。

だが、『久しぶり』とあるだけに、少なからず知り合いだったようではあるな」


「だとして、それがこの遺体と何の関係が―――」


仮に遺体の正体がこの手紙の差出人だとして、受取人がこの屋敷にやってきて殺害を―――

いや、それは考え過ぎか。

手紙の内容からして殺害の動機がわからないし、時間が経過し過ぎているから色々なことが欠落し過ぎている。

せめて、何かもう少し手掛かりがあれば。

・・・そうだ、遺体をもっとよく見てみよう。

致命傷だけでもわかればいいのだが。


箱の中から頭蓋骨を取り出した。

まず骨だけで見れるところといえば、ここだろう。

頭を殴れば、陥没するか穴が空いている筈だが・・・


「・・・ビンゴ」


頭蓋骨には陥没した箇所があった。

恐らく犯人は鈍器か何かで殴って、この人を殺害したのだろう。

凶器の特定は難しいけど、犯人はこの鞄の持ち主で間違いないな。


「どうした、津田君」


「この遺体、頭蓋骨に陥没痕があった。

恐らく犯人はこの屋敷にやってきて、鈍器のようなもので殴って殺害したんだ。

そしてこの箱の中に閉じ込めて、ここを後にしたんだ」


「なるほど。

ではこの鞄は?」


「犯人が置き去りにしたんだと思う。

どうせ足が付かないと踏んでね。

手紙の内容からして、差出人に逢いに行くのを装ったんじゃないかな。

そして所持していた凶器で―――」


考え込むレイ。

珍しく僕が推理したのにも関わらず、驚く様子もなく無言で考えるポーズを組み俯いたままだ。

なんか悔しい。


「どう、辻褄は合ってるでしょ?」


冷静な眼差しは、冷え切った弾丸のように―――


「不自然すぎないか?

凶器を持参したなら、鞄に隠して持ち込み、鞄に隠して持ち帰るはずだ。

その鞄をむざむざと置いていくものだろうか。

それに、手紙の意図もよくわかっていない」


ワン、ツー、フィニッシュッ!!

もうやめて、僕のライフは残り1だ。

慌てて弁解するが・・・そこには既に威厳など欠片もなかった。

というか、端からない。


「ほ、ほら、アレだよアレ。

手紙をやり取りしている人にしかわからない暗号みたいな。

何かの言葉に置き換えてる的な―――」


刹那、レイの表情が変わった。

稲妻が走ったように、すぐさま鋭い目つきになる。

どうやら、また何かわかったらしい。


「暗号・・・置き換える・・・天使・・・」


「レイ、何かわかったのかい?」


「確証はない。

だが、試してみる価値はある」


糸口を見つけたようだ。

しかしこの遺体はどうするつもりだろうか。

まさかこのまま闇に葬るつもりじゃ―――


「ここの件については、イギリス警察に任せよう。

私たちはこれから日本に戻る。

推理が正しければ、絵画の場所はあそこだろうな」




そうか、よし行こ―――え、今何て言った?

もしかして『日本に戻る』って言った?

そんなバナナ、聞き間違えだよな・・・




「レイちゃーん、日本帰るのー?」


「ああ、すぐに出発しよう」


「わー、お姉ちゃん大胆」


うっそぴょん、マジかよ。

滞在時間1時間ちょいだぞ、本気か?

旅費こそ経費で落ちるけど、こんな短い調査ってあるかよ・・・




僕はうな垂れながら、部屋を出ていくレイたちの後をついていった。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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