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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第四章 ~ 呪いの絵画 ~
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調査ファイル 036 [葬られた光]

そう、優希は寝ていたのである。

ふっかふかのマットに(うずくま)りながら。


「―――寝てる」


「寝てるな」


「寝てるー」


呆れる僕をよそに、二人は優希をジーッと見つめている。

何も考えていなのか、ただただ無表情に。

心配して損した、とにかく起こそう。


「おい優希、起きろ、起きろって」


ぐーすか言いながら、目を開ける気配はない。

仕方ないので、少々荒っぽいながらも―――


「っが!いったーい!」


叫びを上げて飛び起きる姿は、スタントマンもびっくりなくらいのアクションシーンの如く。

寝そべった状態から手を使わずに飛び跳ねて着地するとか、並の人間にも出来ないぞ、おい。


「・・・おはよう」


「アッキー!おはよう。

ってアレ、ここどこ?どゆこと?」


自分でも状況がわかっていないらしい。

素っ頓狂な声を出してぽけーっとしている。


斯々然々(かくかくしかじか)、喧々囂々(けんけんごうごう)、僕たちは説明した。

何となく納得したのか、左の手のひらに右手拳をトンと乗っけて音を鳴らした。

ホントにわかったのかな・・・?


「ともあれ、先に行こう。

ここって・・・何なんだろう?」


「―――避難通路だろう。

何者かに襲われた際、ここから脱出できるように設けたのだろう」


そういえば、落とし穴じゃないって言ってたもんな。

用意周到な家主だったんだな、こうなることを予期していたということは。

となれば、このフロア・・・というか廊下も―――


「・・・出口が見当たらない」


「あれ、行き止まりかな?」


「えぇ~・・・」


レイを除く3人は、少し途方に暮れそうであった。

階段入口の扉が隠し扉ということは、その下もまた隠し扉。

ベタなパターンだと思ったが、暗闇の中を探すとなるとまーた厄介な話だ。


「先程と同じく、どこかに隠し扉があるはずだ。

探そう」


傍から見たら何やってるんだと思われがちだが、僕たちは扉を探している。

壁のあちらこちらをペッタペタ触りながらだいたい10cmくらいの感覚で横に動いてるんだもん、そりゃあ不審に見えるだろうね。

坂田師匠も苦笑いの動きっぷりだ。


「どうだ、あったか?」


「いや、何もないよ」


「レイちゃーん、ホントに扉なんかあんのー?」


「私疲れたー・・・」


暫くペタペタやったが、何もなかった。

おかげで砂っぽいのが手に付いてガサガサしている。

ほろっても細かい粒子が付いているのか、サラサラした感触が残ったままだ。

しっかし、いくらライトがあるとはいえ、暗闇で行き止まりとはこれ如何に。


「あー、もーダメ。

アッキー、ジュース買ってきて」


「自販機ないだろ。

ったくもう・・・」


僕と優希は壁にもたれ掛かった。

刹那―――




「「うわっ!」」




身体を持ち上げられるような感覚に襲われ、2人は頭から後ろへ放り投げられた。

軽く頭と体と打ったものの、怪我はなかった。

少々鈍い痛みを堪えながらも起き上がると―――扉がクルクル回っていた。

それも縦に。


「これ・・・隠し扉か?」


「そう・・・みたいだね。

忍者?忍者なのか?」


時代劇に出てきそうな、からくり扉と言ったところだろうか。

というかそのものだろう、コレは。

向こう側からレイが声を掛ける。


「2人共、大丈夫か!?」


「ああ、大丈夫だよ。

危ないから下から(くぐ)っておいで!」




2人は扉の下を四つん這いで通る。

流石に忍者のようにやれば、僕らの二の舞になりかねないからね。

合流後、携帯電話のライトで辺りを照らし出す。

そこにあったのは、少し大きめなアタッシュケース状の鞄と、長方形型の大きな箱だった。


「このケース・・・あの絵と同じものだな」


「そうみたいだね。

ということは、あの女性からのメッセージ・・・」


「ん、なになに?

メッセージってどゆこと?」


そうか、優希と春香ちゃんはあの場にいなかったな。

協力してもらっているからな、一応話しておこうか。


「札川美術館で、館長さんが絵を見せてくれたんだよ。

その絵には色の入った鞄を持った女性が描かれていたんだ。

描かれた色にはメッセージが隠されていて、それぞれの頭文字を合わせると『Rescue me』という風になるんだ。

そしてこの鞄がその絵のものだって話さ」


「ふーん。

でも何で『Rescue me』なの?

普通は『Help me』じゃないの?」


「それはわからない。

でも何か訳がありそう、とレイは踏んでいる。

あとは鞄の持ち主・・・描かれていた女性を探し出せば―――」


その時、レイが僕の言葉を遮る。

まるで、冷たく尖った氷の刃で斬りつけたように。


「―――いや、その必要はないようだ」


必要がない?

どういうことだ、あの鞄は女性が持っていたんだ。

ここにいないとなればどこか探さなきゃならないのに。

まさか手掛かりでも見つかったのか?


「ってことは、女性の居場所がわかったのか?」


しかし、レイの表情はどこか暗いトーンを込めている。


「―――いや、わからない。

だが、この鞄は女性のものではない」


「どういうこと・・・?」


そう言って、レイの元へ駆け寄る。

大きな箱を開けて中を見ているようだ。

僕は中を覗き込んだ・・・すると―――


「な・・・!」


「・・・。」


レイは無言で中を見ている。

僕は絶句した。




白骨死体が、そこにはあった。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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