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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第四章 ~ 呪いの絵画 ~
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調査ファイル 035 [MimiC]

突然空いた穴の中に落ちてしまった優希。

奈落の底は、結界でも張っているかのように、何も見えやしない。


「マズい、優希が・・・」


「落ち着け津田君。

優希はまだ生きている」


生きている―――?

何故そう断定できる。

かなり深いんだぞ、最低でも腕と足は複雑骨折だろう。

そうなればあのポジティブラーでさえ、タダじゃ済まないだろう。

見てみろ、春香ちゃんがあわあわしてるぞ。


「よく見るんだ。

落とし穴があるのはエントランス、しかも隅っこの方だ。

罠だとしても、さすがにこんなところへ設けたりしない」


・・・たしかに。

こう言ったらアレだけど、需要がない。

せめて階段手前とか、玄関入口とかならまだしも。


「だったら優希はどこへ行ったんだ?

罠の下って、やっぱり剣山とか強酸とか―――」


「それもないだろう。

この穴は罠にしては妙だ。

それに、ここには貴重品という貴重品が1つもない。

貴金属ならまだしも、振り子時計や絵画、()いては壺すらない」


まあこんなに大きな洋館なら、美術品がたくさんあっても不自然ではない。

金持ちならゴッソリ置くだろうね。


「でも節約家だったかもしれない、それなら物が少なくても―――」


人が喋ってるのに、目合わせないのかい君は。

仕切りに床を見回している。

しかしその目は真剣そのもの、何か仕掛けを探しているのだろうか。


「―――節約家が、こんなものを持っているとは到底思えんがね・・・」


レイの左手人差し指は、床を指していた。

床・・・というより、むしろカーペットだろうか。

―――ん、カーペット?


「気付いたようだな。

このカーペットは17世紀にイランで作られたもの。

当時の富豪や貴族たちが(こぞ)って買い、使用していたものだ。

この洋館が30年前のものと仮定すると、よほど綺麗にしていたか、丁寧に保管されていたのだろう。

そんな高価なものを、節約家が使うと思う?」


このカーペット、そんなに高いんだ。

ってか随分お詳しいことね、お嬢様。


「なーんでそんな詳しいの?」


「元怪盗よ、これくらい知識ないと」


あれだけ嫌がっていたのに、『元怪盗』と自負し始めた。

すんごい変なところで成長を見てしまったのは、やはりというか何というか少し心苦しいというか。

って、そうじゃない、優希―――!


「早く優希を助けないと!」


思った矢先、春香ちゃんが声を上げた。


「津田さん、レイさん、扉の向こうに階段があったよ!」


何もない壁が不自然なまでに、空間を設けている

よくみるとそれは扉になっており、簡潔に言えば『隠し扉』というやつだ。

何となく壁に触ったら開いたのだろう・・・春香ちゃん凄いな。

中を覗いてみると、何とビックリあら不思議、ご丁寧にまあ階段が1つ。


「なら行こう。

まあ、大丈夫だと思うけどね」


扉を開けると、そこには地下へと続く階段があった。

携帯電話のライトを点けて、1段1段ゆっくり降りる。

春香ちゃんはレイの右腕をギュッと抱きしめながら降りている。

ちょっと困った表情で苦笑いしている・・・緊張感が少し緩まってしまう。

良いことなんだけど、うんまあ、なんだかな・・・




「おーい、優希ー!」


「優希お姉ちゃーん!」


「優希、いるか!」


階段を降り終えて、呼びかけを始める。

聞こえるのは僕たちの声と、反響する3人の声だけだ。

優希のあっかるい声は、この耳には届いて来ない。


暫く歩いたが、人っ子一人いない。

やはり、侵入者用の罠だったのか―――


「レイ、これは―――」


「心配ない、大丈夫だって」


なんでそんなに自信持って言えるのだろうか。

半笑いなのが流石のレイでも少し腹立つ。

心配で冷汗がさっきから止まんないんだよこちとら。


「心配だよ、だって―――」




そう、言いかけた時だった。

僕は優希のことがとても心配で、親友の活気溢れる笑顔が二度と見れなくなるのが怖かったんだ。

こんなところで死に目を見るなんて御免だ。

本当に、そう思ってたんだ―――1秒前まで。


僕は、固まった。

頭の中が、真っ白だ。

飛行機の中で皆に問いた、あの顔の絵を憶えているだろうか。

不覚にも、それと全く同じ顔を、ここでもまた披露することになろうとは。

喋る菌も爆笑しそうなくらいに、もう滑稽なまでに。


うむ、現在何が起こっているか、お話ししよう。

結論から言うと、優希は生きていた。

落ちてきた穴の下には、ふっかふかのマットが何枚も重なっていたのだ。

恐らく十数メートルくらいあったのだろうが、ふかふか具合からみたら傷一つ負うことのないくらいの万全性だ。

この状況だけでも僕は花吹雪を辺り一面に散らして叫びたいところなのだが、そうもいかない。


では何がその喜びを抑制しているのか。

・・・もう口に出すだけでもバカバカしい。

はぁ、ホントに言わんきゃダメか?

んー・・・じゃあ話すけど、優希は―――




「―――寝てる」




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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