表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第一章 ~ プロローグ ~
4/129

Prologue -002 [開眼]

どうも、土井淳です。

今まで小説=手書きと思っていましたが、こういったPCでのタイピングも可能になった時代なんですねぇ。

少し遡れば、ワープロでしょうか。

意外にも、周りの人間でワープロを知っている人は多くありませんでした(個人調査にて)。

簡単に言えば、ワード専用PCといった感じでしょうか。

昔実家にありましたけど、結構大きくてズッシリしていたのを覚えています。

懐かしいですねぇ、あの頃を思い出すと。

2016年2月21日、朝。

散々なバレンタインデーを終え、一週間が過ぎた。

あの後、署で前田さんにこっぴどく怒られるわ、銃の使用に関する書類を書かされるわ、大島さんに事情を長々と説明しなきゃならんわで、もうクタクタだった。

とはいえ、世紀の大怪盗を捕まえた功績もあり、停職一週間で許してもらえた。

・・・本当にこれ、許してもらえたのだろうか?

ベッドの上で色々考えていると、枕元の携帯電話が鳴った。


「おう、元気か」


電話の主は、前田さんだった。

前田義信(まえだ よしのぶ)――大怪盗シュヴァルツ捕獲チームのリーダーだ。

大島さんの10個下と、年齢の差があるものの、やけに老けて見えるんだよな、あの人。


「どうしました?」


「どうしたじゃねえよ、面会に行くぞ」


突然の電話で全く趣旨を理解できなかった。

そう、あの人は主語というものをすっ飛ばして話す癖があるからだ。

面会はわかる、問題は“誰の”ということだ。

しっかし、よくいるよね、こういう人。

まあ、あまり他人のこといえないけど。

話を聞くと、どうやら事情聴取も兼ねた面会だという。

つまり、僕自身が重要参考人。

何も犯罪犯してないのに、この扱いはどうも納得いかない。

とはいえ仕方ない、そうなってしまったのだから。

跳ね橋のように起きた後、予備のスーツに着替えて病院へと出掛けた。

昨日のスーツは汚れがひどい、ついでにクリーニング代出してもらおう。


住所を教えてもらい、僕は歩いた。

事前に軽く調べたところ、私立の病院らしい。

病院に着くと、ロビーに前田さんがいた。

僕を見つけるやいなや、口角が上がり、こっちに近づいてくる。


「おう、津田。具合はどうだ?」


「そりゃあもう、快調です」


心配しているんだか“からかって”いるんだかわからない。

おそらく後者だろうな、ちきしょうめ。


受付には話を通していたらしい。

部屋番号を聞くと303号室ということで、僕らはその病室へと足を運んだ。

入口に人が何人かいたが、前田さんの顔を見るとそそくさとその場を後にした。

曰く、あの人たちも警察らしい。

ということは、この中にいるのはシュヴァルツ本人で間違いはないみたいだ。

僕は恐る恐る、扉を開けた。


そこにいたのは――大島さんだった。

窓際に立っていた彼は、こちらの顔を見て、小さく手を挙げた。

隣にはベッドがあり、カーテンで仕切られていた。

どうやら個室らしく、ベッドはそれ一つだけだった。


「津田君、こっちへ」


いつ聞いても痺れるくらい渋い声で呼ばれ、ベッドの方へ近づく。

一週間前を彷彿させる、心臓の異常なまでの高鳴り。

怖い、恐い、コワイ、こわい・・・

それでも意を決して、カーテンを開けた。




そこにいたのは――女の子だった。





あまりにも驚き過ぎたのだろう、一周して逆に落ち着きを見せていた。

少し大人びてはいたものの、壁に貼ってあった名札には18歳と書いてあった。

あの大怪盗シュヴァルツが女だったとは・・・


「な、最初はビックリするよな!」


「無理もなかろう」


どうやら二人には見抜かれていたらしい。

なにこのオヤジたち、恐ろしい。


彼――彼女は何も話さず、ただただうな垂れているように見える。

少なからず、捕まってしまったという悔しさではないことは確かのようだ。

どうやら、前田さんも大島さんも、僕が来る前から尋問を始めていたようだ。

しかし、口は一度も開かなかった。

そこで、面識のある僕を呼べば喋るのでは――と考えたわけだ。

なんともまあ・・・


「君がシュヴァルツだね?」


返事がない。

やはり何も喋らない。

それでも僕は、平然を装い優しく問いかける。


「僕は津田明彦、よろしくね」


「・・・」


下手(したて)に出ても尚彼女は口を開かなかった。

そこでまずは僕の尋問を先に始めることになった。

前田さんが尋問し、僕はありのままの出来事をありのまま話した。


ひとしきり尋問が終わると、大島さんが口を開いた。


「大体わかった。では私は署へ戻る・・・あとは任せたよ」


そういって大島さんは部屋を後にした。

さて、強面おじさんがいなくなったところで、彼女に変化はない。

これからどうしたものか・・・少し悩んでいるところだった。


刹那――




誰かの叫び声が響く。

締め切った部屋の中にまで、轟くまでに。

これは・・・女性の悲鳴だ。

廊下全体に響いていた為、場所がわかりづらい。

急いで部屋を出ると、向かって左側の部屋の扉の前に看護師さんが腰を抜かして倒れていた。

涙を目に一杯浮かべながら、声にならない声で何かを発生している。

ただごとではないと思い、僕は305号室を覗いた。


――人が、死んでいる。

ベッドの上で仰向けになり、左胸にナイフが刺さっている。

この異様なまでの光景と違和感に苛まれ、またしても不吉な衝動に駆られてしまったのであった。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

『探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~』プロローグ第三話、如何でしたでしょうか。


ついに第一の事件が起こってしまいました。

この事件をきっかけに、シュヴァルツは少しずつ変わっていきます。

人は他人と触れ合うことで、少しずつ心が変わっていく生き物です。

良い人と巡り合えばそれだけ良心的な性格に、悪い人と巡り合えばその反対になるでしょう。

中には例外もあったりするかもしれません。

人との出会いって、選んで出会うこともなかなかできませんし、難しいですよね。

皆さんも良い人と巡り合えることを、切に願います。


さて次回は、いよいよ捜査開始です。

シュヴァルツも加わり、物語が動き出していきます。

それでは次回も、乞うご期待!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ