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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第四章 ~ 呪いの絵画 ~
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調査ファイル 031 [悪魔からの依頼 後編]

ソファーに踏ん反り返り、脚を組んで手を伸ばしている。

ホストかお前は、横に女性がいたら紛れもない。

ただでさえ混乱しそうな中、まさかの北上登場に、僕はもう何が何だか・・・


「お、そこの子は誰?」


馴れ馴れしく話してくる北上。

正直紹介したくないのだが・・・最低限レイには紹介しないと。

というか、レイに紹介する=北上に紹介となってしまう。

なーんか、嫌だな―――


「えーっと、こちらは神山優希、僕の幼馴染です。

訳あって一緒にいるといいますか、何といいますか・・・」


「そうか―――

色々と問いたいところだが、まずは彼の話を聞こう」


一応冷静に言ってはいるが、内心では僕と同じだろう。

発狂しそうだ。

ソファーに座り、奴に目を合わせる。

依頼者、だもんな。


「それで、用件は?」


「今回は一客として来た。

お前たちに捜してもらいたいものがある」


物探しか。

人探しか尾行、(あまつさ)え殺人依頼・・・と思っていたんだけどね。

だってヤクザだし、銃で撃ってきたし。


「一端のヤクザが、何を探せと?」


「おいおい、優しくねえな。

ま、お前たちにとっても悪い話じゃねえと思うぜ。

―――『ある絵画』を捜してほしい」


ヘラヘラした表情が、一気に引き締まる。

真面目な顔で依頼したのは、絵画だった。

柄じゃない北上が、何だってそんなモンを。

レイの目を見ながら鋭い視線を刺しっぱなしの姿勢は、前回とはどうも違く感じる。


「―――それで、どんな絵を捜せばいいんだ?」


「世界的に有名な『ある画家』が、生前に書いた絵だ。

発表されている絵ではなく、密かに書いて死後から今日(こんにち)まで未発表のまま。

今日もどこかに眠っていると言われているものらしいが―――噂では日本、それも札川にあるんだと」


北上が挙げた画家の名は、僕でも知っている程の超有名人だ。

日本でも展示会が開かれ、動員数は万を超える。

絵には色々な憶測や曰く付きもあるらしいが、それが相まって人気を博している。

そんな画家の絵を求めている―――ナンデ?


「念の為に聞くが、何故それを求めている?」


やはりと言うべきか、思うところがあったのだろう。

北上に対してレイは確認を取る。

その絵を用いて何か企んでいるのであれば、例え一依頼者でも引き受けられないからな。


「そう、そこが俺の求める部分よ。

その絵には金銀財宝、ありとあらゆるお宝が眠っている在処が記されているっていうんだ。

ロマンあるだろ?

しかもだ、同時にその絵には世界の水面下で暗躍している秘密組織の情報も記されているとか」


「お前たちがそれを言うか。

誘拐と臓器売買を平気で行う闇組織が」


「俺たちよりも深ーい深ーい、本当の闇に生きる組織だ。

奴らは何をする為に活動しているかわからない、鈴木組でも所在や動向を掴むことは出来なかったんだわ」


膝に肘を乗っけて手を組み真面目に話していたかと思いきや、その『秘密組織』の話になると、お決まりの踏ん反り返りポーズになっていた。

コロコロ変わる態度に追いつけない僕は、少しイライラしながら話を進めた。

レイに代わりその絵画について問う。


「それで、その絵画というのは?」


「ああ、どんな絵かは知らねーけど、名前なら聞いたことあるぜ。

たしか・・・『天使の歌声』だったかな」




その名前を聞いた瞬間、レイの目が強く見開いた。

2秒くらいしてか、眉間に少量のシワを寄せ、考えるポーズを取る。

思い当たる節でもあるのだろうか、一言も喋らず脳を活性化させていた。


「何か手掛かりがあるのかい?」


「―――確証はない。

とりあえず、その絵画を『捜す』という依頼は引き受けよう。

それをどうするかは、見つけ次第連絡する」


あろうことか、北上の依頼を引き受けてしまった。

ただでさえ不気味な笑顔をこちらに向けているのに、OKを出した途端だ、悪魔も泣き出すほどの言葉では表現しがたい喜びようをしている。

とはいえ、僕としてもこのまますんなりやるつもりはなく、奴に条件を突きつけようとしていた。

が、それはレイも同じようだった、よしここは任せよう―――


「北上、依頼を引き受ける代わりに、1つ条件を出す」


「お?なんだ?」


悪びれもしない生意気な態度で返事をする。

仮にも依頼者が探偵にする態度ではない。

しかし、ここはグッと抑えて・・・


「私たちが調査及び捜索を行っている間、身内の人間には一切手を出すな。

特に春香ちゃん、彼女に指一本でも触れてみろ―――容赦しないからな」


どっちが悪人かわかんねーよ。

そうツッコみたくなるくらい、女の子がしてはいけない顔をしている。

俺と優希は苦笑いしていた。

仕方ない、依頼を引き受けてしまった以上、やるっきゃない。




北上が帰った後、改めて優希の紹介をすることに。


「改めまして、神山優希です!

アッキーとは幼馴染で、たまたま遊びに来てたんだけど・・・なんかタイミング悪かったかな」


苦笑いする彼女を、レイと春香ちゃんは喜々として迎えている。

春香ちゃんはまだしも、レイが喜々としているということは。

言うまでもない、この探偵事務所を見れば一目瞭然だ。

・・・信じたくないけど。


「いや、そんなことはない。

寧ろ丁度いいところにきた、神山さん・・・いや、優希よ」


しょっぱなから呼び捨て、ということは、もう間違いないな。


「私は黒川レイ、探偵だ。

こっちは立華春香ちゃん、この事務所の探偵2号だ。

見ていた通り、依頼が入ったのだが人手不足でな。

そこで、君にも協力を要請したい」


ハイキター。

要請入りましたー。

一般市民に要請すんなよ探偵殿。

せめて警察の人間を―――いやそれはマズいか。

ヤクザの依頼を僕以外の警察関係者にやらせるわけにはいかない、色々厄介なことになりかねないし。

そうだよ、厄介なことになるんだよ、だから優希、無理してやらなくても―――


「わっかりましたー!」


―――僕は心の中で湯が沸いたヤカンのような、声にならない声を出していた。

うそーん、このじゃじゃ馬と捜査すんのかよ・・・




「もう・・・好きにしてくれ」




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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