表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第三章 ~ 牙を剥く闇 ~
30/129

調査ファイル 024 [交響曲第0番 - 沈黙 - Part 5]

「レイ、犯人が分かったのか!?」


「ああ。

あとは、凶器と動機だけだ」


秋元さんを殺害した際に使用された凶器―――

鋭利な刃物ということはわかっているが、今のところ見つかってはいない。

仮にホール内に捨てたとした場合、まだどこかに残っているはず。


「でも凶器なんてどこにもなかったぞ?

楽屋も、現場も―――」


「いや、1つだけ探していない場所がある」


楽屋でも現場でもない場所・・・?

トイレもゴミ箱も探したけど、どこにもなかった。

あとは客席か・・・


「津田君、鑑識さんに頼んでここを調べてもらってくれ。

そこに、凶器はある」


そう言って、レイは『ある場所』を僕に教えた。

普通なら滅多に確認することがない、あるものだった。

それが置いてある場所を、レイは指示した。




鑑識さんに報告をし、僕たちは調律師の方に話を伺った。

田辺さんの供述通り、ピアノの調律に立ち会っていたようだ。

曰く、ピアニストたる者、調律に立ち会ってこそ一流・・・だそうだ。

そんなモンなのかねえ、音楽家というものはようわからん。


「津田君、現場に戻るわよ」


「現場?何で、犯人わかったんでしょ?」


現場に戻ると言い出したのには、正直驚かされた。

ここまで証拠が残っているのに、まだ何か拾うつもりなのか。


「証拠というより、確認よ。

念の為にね」


念には念を・・・か。

皮肉と言うべきか、妥当と言うべきか―――




現場に戻った僕たちは、部屋の内部を見回す。

秋元さんが殺害されたこの部屋には、遺体が運び出されたということ以外はそのままにされている。

血痕の飛び散った、凄惨な光景が、当時のまま。


天井を見渡すレイは、壁を見て、床を見て、もう一度天井を見る。

何度か繰り返した(のち)、無言のまま壁をノックした。

奇妙にも思えるその行動が何を意味しているのか、僕にはわからなかった。


「この部屋―――」


2~3回ノックを試し、何かを考え始めていた。

この部屋に何か疑問があるのだろうか。

そもそも4人が集まっていたのは、いくつかある楽屋の内の1つだ。

この会場には楽屋が複数あり、殺害現場となったここも、その内の1つ。

内装は殆ど同じで、大部屋以外の部屋と同じようになっている。

因みに他の楽屋も事前に調べたが、証拠となるものは何もなかった。


「津田君、ちょっと部屋の外に出てもらっていいか?」


何か策があるようだ。

どことなくそんな表情を浮かべ、僕に退出を促す。

しかし、部屋の外に出て何をすればいいのか。

刹那、レイが出した指示は、『ただ立っているだけ』というものだ。

僕はカカシじゃないんだから・・・


指示通り、部屋の外へ出た。

扉を閉め、向かいの壁へ背を預け、腕を組みながら待つ。

レイのことだ、何かビックリドッキリな事ををするに違いない。


―――はずだった、しかし、何も反応がない。

廊下は静まり返り、オイフォンだけが響き渡る。

それはもう、コンサートホールだけに。

さすがにおかしいと思い、部屋の扉を開けようとした。

その時、僕がドアノブに手を掛ける前に、扉が開いた。


「・・・ん、大丈夫?」


それなりに強く開いた扉が、顔面へ直撃した。

軽く殴られたように地味に痛い。

声にならない声を上げ、レイにたんまを掛ける。

ちょっと待ってね、すぐに落ち着くから―――


少しすると、痛みが引いてきた。

何だか今日は運が悪い気がする。

事件終わったらお参りにでも行ってこようかな。


「―――それで、どうだったの?

何かわかった?」


ドヤ顔、というのだろうか。

目はクッキリとし、口角が上がり、自身に満ちた表情をしている。

なるほど、この時間は無駄じゃなかったのね。


「一体何をしたの?

探し物かなんかだったら、僕も手伝ったのに・・・」


その言葉を発した直後、レイは少し驚いた表情をしていた。

なになに、どゆこと?


「津田君・・・気付かなかったのか?」


気付くも何も、平穏だったよ。

廊下は静まり返ってたし、扉の前の光景も相変わらずだったし。

―――ということは、レイは部屋の中で『何か』したらしい。

その正体こそわからなかったものの、僕の目や耳が反応しなかったところをみると、これが事件の鍵の1つだということか。


「ということは―――」


「ああ、全てわかったわ」




―――鍵は、揃った。




「では始めましょう―――事件の真相(なぞとき)を」




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ