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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第三章 ~ 牙を剥く闇 ~
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調査ファイル 019 [ケルベロス]

誘拐事件が解決して暫く、僕とレイによる探偵コンビは着々と仕事をこなしていた。

尾行、落とし物捜索を始め、レストランの調査(主に味見)、子供のお()り、果ては演劇の代役なんてまで依頼されることもあった。

忙しい日々が続いていたが、春香ちゃんが入社・・・(もとい)手伝いに来てくれていたおかげで、多少余裕は生まれていた。

その時間の合間を縫って、僕とレイは話し合いをしていた。

内容は、北上から僕らを助けた『レオ』についてだ。


「レイ、先日のレオについてなんだけど」


「あいつか。

一体何者なんだ・・・?」


やはり、レイは何も知らないようだ。

その上、こちらのことは薄々ではあるが知っている模様。

この一方的の情報保持は、正直如何ともしがたい。


「『味方』ではないけど『敵』でもないって言ってたけど、どっちなんだろう」


「少なからず、一方的に危害を加えるつもりはないらしいな」


危害を加えるも何も、レオは独りだけだった。

北上はバックにヤクザの軍勢があったものの、独り身の彼に何ができるものか。

しかし北上があっさりと引き上げるところを見ると、やはりただ者ではないことは伺える。


「警察内部の情報はどうだ?

レオについて、何か入ってないか?」


「残念ながら、何も引き出せなかったよ。

挙句、情報規制が掛かっていて、詳しくは何も・・・」


こちらは手詰まり状態。

圧倒的不利な状況・・・と、捉えて良いのだろうか。


しかし今一つ気になることがある。


「奴の目的は何なんだ―――?」


そう、目的だ。

味方でないのであれば、何故あの時銃弾を反らした?

須田一家と立華夫妻を保護したのも謎のままである。

反面、敵でないのであれば、前述の説明がつかない。


「んー・・・」


僕たちは黙り込んでしまった。

謎の上に積み重なる謎、それを更に覆い被せる布状の『謎』。

何か手掛かりは・・・




「―――番犬?」




そうだ、そういえば去り際にそんなこと言ってたっけ。

なんのこっちゃ?


「番犬?」


「あ、うん。

去り際に言ってたんだ、『番犬』って」


それに、番犬の前後に何か言ってたな。

えーっとたしか・・・


「地獄がどうとか―――」


「地獄・・・番犬・・・」




―――刹那、レイはハッとした表情を浮かべる。

瞬間、勢いよく立ち上がった。

どうやら、何かに気付いたらしい。


「何かわかったの!?」


「地獄の番犬―――ケルベロスだ」


ケルベロス・・・って何だ?

何かの絵本に出てくる魔物か何かか?

わからない僕を察してか、レイは語り出す。


「ケルベロスというのは、ギリシャ神話に出てくる冥府の番犬のことだ。

3つの頭を持つ獣の姿をしていて、冥府から逃げ出す者を喰らうとされている」


ギリシャ神話かー、全く興味もなかったし、読んだこともない。

・・・今度古本屋見に行ってみようかな。


「んで、そのケルベロスが何だっていうんだ?」


深い意味はなかったのだが、レイは思い詰めた顔をして答える。


「ケルベロスは世界三大勢力と呼ばれる犯罪組織の1つだ。

犯罪者を殺す犯罪者として恐れられ、依頼を受ければ必ずターゲットを仕留める凶悪な奴らだ」


―――そうか、だからあの時、『犯罪者を葬る』って言っていたのか。

聞く限りでは義賊っぽいけど、どうなんだろう。


「でもそれって、犯罪者だけど敵討ちが目的なんじゃないの?」


「傍から見ればな。

しかし手口は巧妙かつ残忍で、聞いた話によれば、ターゲットを捕まえては被害者に拳銃を握らせ、自らの手で殺させるらしい」


たしかに『敵討ち』だけど、被害者も溜まったものではないだろう。

下手してもしなくてもトラウマレベルだろ、それ。


「・・・ってことは、そんな連中の仲間と接触してたってこと?」


「恐らくな。

しかも北上の顔見知り、あの反応とすれば、奴はケルベロスのリーダーで間違いないだろう。

そして奴は北上を『マックス』と呼んでいた。

コードネームだろうけど、果たして同じ組織なのか、別組織なのか―――」


・・・あの場で聞かなくて、心底よかったと思う。

もしそうだったら、多分失禁していただろう。

凶悪犯罪者に助けられたのか、僕―――


「あ、そういえば北上の会社を突き止める際のメモ用紙、あれに何か書いてあったよね。

もしかしてあの文字って・・・」


「ああ、『ケルベロス』だろうな。

英語読みでもサーベラスと読む場合があるし」


僕も(あなが)ち間違っていなかったというわけか。

つまり、あのメモは須田夫妻が書いたものだったんだな。

レオと接触した際に書いたのだろう。

まさか、事件に繋がったとは・・・




今回の件で僕たちは、ケルベロスと関わってしまった。

更に現在日本にいるということは、今後再び交わる可能性があるということだ。

出来れば逢いませんように・・・


しかし、そんな願いも(むな)しく散ってしまう。

今思えば、あれは誰が見てもわかるくらいのフラグだったのだろう。




僕たちは、そんな暗雲が迫っていたことを、知る由もなかった。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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