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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第二章 ~ 探偵の夜明け ~
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調査ファイル 017 [運命の糸]

日付、時刻不明。


不敵な笑みを浮かべ、彼は言った。

それはもう、気持ち悪いくらいに。


「手っ取り早い・・・だと?」


「ああ。

もし野放しにしておけば、彼らは何かしらの行動をしかねない。

警察に通報する可能性だってないわけじゃないしね」


もし北上に背けば、冬弥君が殺される可能性がある。

それもあってご両親は足掻いたりせず、ただ指示に従っていた。

とはいえ多少なり考える時間があれば、策を練って抗う姿勢も取る・・・人間というのはそういう生き物だ。


・・・もしかして彼は、ご両親を助けたのか?

仮に北上は2人を殺さないと踏んで、敢えて向かわせたとしたら?

仮に僕たちが奴の会社に潜入することを予測していたとしたら?

―――出来すぎている、あまりにも出来すぎている。


疑問は浮かぶが、ここで僕は1つ、彼に問う。


「君は・・・あの2人を『守った』、ということか?」


その問いを受け、青年は口角を上げて小さく答える。

どこか寂し気に、どこか虚ろに。


「さあ、どうかね」


彼は本当に味方なのだろうか。

奴の銃弾から身を守ってくれた上に、冬弥君のご両親を守った。

しかし、その真意はわからない。

モヤモヤが余計に広がっていく。

何なんだ彼は―――!

色々考え込んでいると、倉庫内に轟く雄叫びが1つ。

鼓膜の中、ゼロ距離でウーファー内蔵スピーカーをぶっ放したと勘違いする程に、それはそれは凄まじい声量で。




「―――じゃかあしい!!」




・・・この際、お前がうるさいとツッコんではいけない。

自分だけ仲間外れにされたのが気に入らなかったのだろうか。

驚いた僕たちは、北上の方へ視線を向ける。


「さっきから何話し込んでるか知らねえけどよ、今の状況わかってんのか?

撃ち殺すぞコノヤロウ!!」


再び銃口を向ける北上。

しかし、僕の中ではイマイチ緊迫感にかけていたのである。

それはというのも、あの青年―――

銃弾を弾き飛ばした彼が傍にいるおかげで、どうにか正気を保っていられる。

月光が照らすコンテナの上、青年は北上を見下ろしながら、脅しを含めつつ言葉を放つ。


「状況をわかってないのは君だよ、マックス。

さっきも言ったけど、今暴れたら警察に感づかれるよ?

・・・と言っても、もうすぐこっちに向かってくるだろうけど」


「何―――?」


青年がそう話すと、微かにサイレンの音が聞こえる。

やはり、先程の銃声が聞こえていたのだろうか。


「それとも、警察もろともまだやるつもりかい?」


「・・・チッ」


舌打ちを捨て台詞のように噛ますと、突きつけていた銃を懐へと仕舞う。

そして羽織っていたコートを軽く翻し、その場を後にした。

助かった・・・のか?




北上が去った後、倉庫内は再び静けさを取り戻した。

やっと一息が付ける、そう思った矢先だった。


「貴女・・・怪盗シュヴァルツだよね」


月明りの逆光は、藪から棒に問いかける。

シュヴァルツは男装と変声機により『男性』と認知されいたはず。

にも拘らず、彼は正体を知っていた。

そして正体を知る者は、警察内部でも僕を含めても極少数・・・

何故彼はそんなことを―――


「―――違うと言ったら?」


相変わらず鋭い目つきのままである。

しかもこの期に及んで誤魔化してるし。


「そうか、君が・・・。

なるほど、そういうことだったのか」


勝手に納得して、やや満足そうな顔をしている。

正座させて説明を求めたいところだ、全く。

しかしその(あと)に放った言葉は、僕とレイの脳裏にしつこくこびり付いた汚れの如く、焼き付いて離れないものとなった。

それは、今後切っても切れない運命の糸というべきだろうか。




「僕は君たちの『味方』じゃない。

でも決して『敵』というわけでもない。

いずれまた会うことになるだろう」




そう言って、彼は振り返る。

振り返りざま、何となく笑っていたような気がする。

果たしてそれは気のせいだったのだろうか。

未来の自分はきっと、わからないままであろう。


去り際、レイは大声で呼び止める。


「待って!

最後に聞かせてくれ、君の名前は―――?」


足を止め、再びこちらへ振り返る。

上手い具合に月明りが彼の顔を照らし出した。

そして、彼は名乗る。

一生忘れることのない、その名を―――




「僕はレオ。

犯罪者を葬る、地獄の番犬さ―――」




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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