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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第二章 ~ 探偵の夜明け ~
22/129

調査ファイル 016 [月明りの青年]

日付、時刻不明。


死に際に走馬燈を見る・・・というのは、どうやら本当らしい。

メリーゴーランド状に良くも悪くも思い出が(よぎ)る。

ああ、そういえば前の職場はこんなんだったな。

先輩、元気にしてるだろうか。

ああ、これはレイとの初対面。

ああ、これは最初の事件の時。

なんだか、ハチャメチャだったな。


―――死にたくないっ!


北上は、引き金を引いた。

咄嗟に目を(つむ)り、銃声を聞く。

暫く僕は視界を失い、暗い世界に取り残され・・・ん?『暫く』?




「―――その辺にしなよ、マックス」




そこにいたのは、見ず知らずの青年。

倉庫の窓辺りにあるコンテナの上に、彼はいた。

一体何が起こっているのか、僕にはわからない。

撃たれたんだよな、僕。

ハッと我に返り、北上の銃を見ると、銃口の位置が少し変わっている。

その位置から目を追ってみると、僕の右足太ももから10cmの場所に、弾丸が撃ち込まれていた。

あんぐりとした僕の元へ、レイが駆け寄る。


「大丈夫か!?」


「あ、ああ、何とか・・・」


再び北上を見ると、眉間に凄まじい程のシワを寄せて、青年を睨んでいる。

どうやら知り合いらしい。

一方のレイは知らないようで、誰なんだと言わんばかりの表情をしている。


「お前・・・なんでこんなとこに―――」


「頼まれたんだよ、ある人に」


頼まれた・・・?

もしかして、彼も探偵なのか?


「頼まれた?誰に!?」


「―――須田夫妻だよ」


須田夫妻・・・だと?

あの2人は北上の手先じゃなかったのか?


「それにしてもいけないなあ、臓器売買なんて」


「うるせえ!お前には関係ない!」


「ただの殺人ならまだしも、その上で金儲けするのは頂けないな・・・」


「黙れ!」


一触即発の雰囲気が再び伝わってくる。

北上は今にも発砲しそうな勢いだ。


「まあまあ落ち着きなよ、あんまり派手にやると警察来るよ?」


「・・・チッ」


あの青年、何者なんだ?

特に武器を携帯しているわけでもないのに、北上を少し抑えたぞ。

もうわけがわからなくなりパニックになりそうだ。

そんな中、ピリピリした空気を裂く様に、レイは青年に質問を投げ掛ける。


「―――ねえ君、一つ聞いてもいいか?」


「ん?何だい?」


物腰の穏やかな話し方で応答する。

その姿からは、とても悪い人のようには思えない。

しかし何だ、この形容しがたいオーラは。

どこか薄気味悪く感じるこの気配は何だ?


「須田夫妻が依頼してきたと言ったな、あれはどういうことだ?」


「―――脅されていたんだよ、そこにいるヤクザさんに。

子供を返してほしければ、『ある少女を探せ』ってね」


「―――そうか、そういうことか」


どうやら、レイは全てを理解したらしい。

如何せん僕には何のことかさっぱりわからない。


「どういうことだ、レイ?」


冷静に推理を行い、レイは話し出す。




事の発端は北上だ。

彼は顧客と臓器売買の契約を行い、その後冬弥君を誘拐した。

まあ、特に目星は付けていなかったのだろう。

そして誘拐は成功した。

これで全てが終わる・・・はずだった。


しかし、ここで思わぬトラブルが起きた。

それが、春香ちゃん一家だ。

彼女の両親は元々北上の下で働いていた。

恐らく過酷なものだったのだろう、ヤクザの下っ端ともなればな。

嫌気が差した2人は、春香ちゃんを連れて北上の下から逃げた。

その際、先の契約金を盗み出したんだ、餞別とでも思ってな。


3人が逃げ出したことを知った北上は、春香ちゃんたちを捜索した。

金の亡者だからな、血眼だったのだろう。

そしての居場所を突き止めたは良かったものの、肝心の金は春香ちゃんと共に逃げられてしまった―――

当然北上は焦っただろう、総動員での捜索も考えたでしょう。

しかし彼と彼の組織は裏で大きな存在だ、表に出れば警察を招くほどの大事件になるからな。

そこで、冬弥君の両親を利用しようと考えた。


『息子を返してほしければ“ある少女”を探せ』・・・そう連絡し、春香ちゃんを捜索させようとした。

付け加えて、警察には連絡させないようにもした。

もし警察に連絡すると、身元がバレる可能性があるからな。

その点を踏まえて、2人は探偵事務所へ依頼をした。

その後、北上は両親に『探偵事務所にある書類を盗め』とでも言ったのだろう。

書類というのは、春香ちゃんの詳細が書かれたもの。

探偵としては、匿う経緯や居場所も記載するものさ。

機会を図って盗み出した2人は、春香ちゃんがいる警察署へ向かった。


北上建設の変装で挑んだものの、そこに春香ちゃんはいなかった。

隙を見てどこかへ行ってしまったからな。

その旨を伝えに直接本人に伝えに行ったが、逆に捕らえられてしまった。

倉庫の奥に監禁されていたのはその為だろう。



「―――これが事の顛末だ」


長々と推理を披露したレイ。

確かに、辻褄は合っている。

しかし、レイ自身どこか納得がいっていないようで、


「だが、私にもわからないことがある。

君、冬弥君の両親から依頼を受けたのはいつだ?」


「貴女の話からするに、女の子を捕らえに行った後だと思うよ。

作業服を着ていたからね」


ということは、警察署へ行った後か。

あの後この青年が接触して、北上へ直談判するよう(そそのか)したのか?


「ではもう一つ聞かせてくれ。

何故2人を北上の元へ行かせた?」


その質問をした時、彼は不意に笑った。

薄気味悪く、不快なまでに。

先程から感じるオーラに加えて、それは凄まじいものだ。

そして、やや嬉しそうに、彼は答えた。




「―――北上なら、きっとこうすると思ってね。

だってその方が、手っ取り早いじゃん?」




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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