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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第二章 ~ 探偵の夜明け ~
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調査ファイル 012 [開戦]

2016年2月27日、14時37分。

無造作に止めていた車に乗り込んだ僕たちは、例の建築会社へと向かう。

春香ちゃんの無事を願いながら飛ばす車の内部では、レイと前田さんがその会社について話し合っている。

特に事件があったわけでもない会社の為、警察としても情報は少ない。

三度(みたび)手探りのまま、向かおうとしていた。


「でも何で建築業者を装う必要があったんだ?」


「わからない。だが、奴らの拠点がそうだとしたら納得がいく」


あのヤクザの拠点か。

それにしても、刑事2人と探偵1人で挑むというのも、非常に無理がある気がする。

いくらレイが強いからといって、手ぶらで行くわけにも―――


「なるほどな。それなら実力行使といくか。

お、そうだ、ほれ」


信号で引っかかったのを機に、前田さんは何か渡してきた。

受け取ってみると、それは黒くてゴツく、ずっしりと重い。

への字をしたそれは、紛れもないあのブツ。


「これ、拳銃じゃないですか!」


「大島に頼んで申請してもらったよ、ありがたく思え」


大島さん、どんな手を使ったんだ・・・?

少し震える手で胸のポケットにソレをしまう。

正直、あまり感謝はしていない。

そもそも使う気がなかったというのは、言うまでもない。

とはいえ大島さんと前田さんのご厚意を受け止め、覚悟を決めよう。

もうすぐ、あの会社に着く。




北上建設(きたがみけんせつ)』・・・入口にデカデカとそう書いてあった。

ここが奴らのアジトか。

しかしこんな立派な会社の中に、子供3人も監禁しているというのも、やや妙な感じもする。

それでも2人は足を止めることなく先に進んでいく。


自動ドアを進むと、綺麗な受付嬢が2人、スーツ姿のサラリーマンが何人かいるだけで、臨戦態勢を取っている気配は微塵もない。

もしかして、僕たちが来ることを予想していなかったのでは。

或いは、ここはただの建設会社か。


「特に異常はなさそうですね」


「ふむ・・・」


前田さんは腕を組んで黙り込んでしまった。

ここまで来てデッドエンド、というのも洒落じゃすまない。


「仕方ない」


その一言だけ放ち、レイは前田さんを連れて受付嬢に話を聞きに行ってしまった。

前みたいな手段でどうにかなるものなのか?

というかそもそもどんな手段使ったか僕にはサッパリわからないわけで。

少しばかり受付で話し込んだ後、踵を返してこちらに戻ってきた・・・ということは―――


「ダメ、だったのか・・・」


「ああ。中はおろか、会社で扱っている車すら調べさせてくれなかった


「警察手帳を出したが、顔色一つ変わりやしない・・・チキショウめ」


門前払いを喰らった僕たちだが、次の手段に講じようとしていた。

もちろん言い出しっぺは、うちの探偵殿だ。


「よし、車を調べるぞ」


「ま、待って、許可は下りなかったんでしょ!?」


「ああ。だからこちらも『勝手に』調べさせてもらう」


なんと強引な・・・

いくら犯罪者の根城を調べるとはいえ、手順を踏まないと僕たちが犯罪者になっちゃうよ。

しかし、レイはどこか余裕のある顔をしていた。


「大丈夫だ、心配はいらないさ」


一瞬目を僅かに反らしたのを、僕は見逃さなかった。

でも何故だろう、見てはいけない、振り返ってはいけないような気がした。

レイが目をやった方を見ては、いけない気がしたんだ。

背中に走る見えない冷気を浴びながら、僕と前田さんはレイの後を追った。




会社の裏に回ると、地下駐車場への出入口があった。

恐らくここにワゴン車があるのだろう。

坂を下って少し歩くと、ワゴン車が十数台並んでいた。

この中に、犯人が使った車が―――


「―――誰だ!」


刹那、どこからともなく声が響く。

振り返ると、黒いスーツを着た男が2人、こちらを警戒していた。

こいつら・・・あの時のヤクザの一味か。

1人は耳に手を当てて何かを喋っている。

もう1人はジャケット裏の腰辺りに手を置いている。


「しまった、見つかった・・・!」


少し動揺する僕、危機感を感じ拳銃に手を置く前田さん。

そして・・・不敵な笑みを浮かべ1歩前に出るレイ。

どことなく、その姿から殺意を感じるのは、決して気のせいではないだろう。


「お前、うちの事務所を襲った連中だろ?」


「女・・・貴様もしや―――」


どうやら組織全員に話が伝わっていたらしい。

レイを見た途端、態度が変わった。

刹那、ヤクザは腰から銃を抜き出し、銃口をこちらへ向けている。

まさしく、臨戦態勢だ。


「貴様、あのガキと荷物をどこにやった?」


「さあね。教えたら何かくれるのかい?」


この期に及んで挑発を続けている。

マズイ、あまり刺激すると撃たれる可能性がある。

どうやら下っ端なのだろう、ここでドンパチやれば一般人に気付かれるということをあまり理解していないようだ。

最悪、市民の死人がでる―――


「レイ、やめろ―――」


「ねえ、何とか言いなさいよ、下っ端さん」


―――スイッチが、押された。

いよいよ血飛沫(ちしぶき)溢れるパーティーが始まる。

マズイ、非常にマズイ。




そしてヤクザは、引金(ひきがね)を引く―――




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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