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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第二章 ~ 探偵の夜明け ~
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調査ファイル 006 [JEKYLL & HIDE & SEEK]

2016年2月27日、10時42分。

これは・・・アメ?


「どうした?」


「いや―――」


僕の足元には、真新しい袋に入っていたアメがあった。

開封済みではあったものの、それも不自然なほど、大量に入っていた。

まるで買ってすぐに捨てたように―――


「アメか。しかし妙だな」


「もったいないよね、1個か2個食べて捨てたのかな」


刹那、レイの顔色が少し変わった。

僕が持っていたアメの袋を掴み、パッケージ裏を凝視している。


「このアメ、賞味期限が最近のものになってる」


「ってことは、最近買ったものってこと?」


「ああ、おそらくな」


・・・にしても、バカな人もいたもんだな。

買ってすぐにその辺に捨てるなんて。

しかも大量に。

罰当りにも程がある。


「もしかして―――」


また何かに気付いたみたいだ。

表情からするに、良いことではなさそうだ。


「犯人は、このアメで子供たちを誘導したのだろう」


「よくある『アメあげるからおいで』ってやつ?」


小学3年生だぞ?

さすがにそんな手には引っかからないだろう。

ましてや男の子、アメ一つでコロッと落ちるタマじゃないだろうに。


「だが、現にこうやってアメがある」


「まあ、確かに・・・」


腑に落ちない。

知らない人に『アメをあげるから』と言われ、ホイホイ付いていくのだろうか。

小学3年生・・・9歳ともなれば結構自分で考えて行動できる年だぞ。


「でもさレイ、9歳ともなればそういうのは引っかからないんじゃないのか?」


「ふむ・・・」


「せめて1年生ならまだ可能性も―――」


「何っ!?」


急に強張った顔をしたレイ。

すぐさま振り返り反対方向へ走っていた。

そして草木の生えた場所でしゃがみ込み、何かを探している。


「な、なに探してるんだ?」


僕の言葉が届いていないのだろうか、無我夢中で雑草を掻き分けている。

暫くガサゴソ漁ったレイはピタリと作業を止め、こちらへ戻ってきた。

その手に握られていたのは、水色のハンカチだった。


「ハンカチ・・・が、どうかしたの?」


「先程見つけてな。

最初はただ風で飛ばされたものかと思ってたんだが―――ここを見てくれ」


そう言って指さした部分に書いてあったのは、名前だった。

だが重要なのは名前じゃない、その上に書いてあった数字だ。


「1-(いちの)、1(いち)・・・?」


「先程津田君は1年生なら可能性があると言ったな?


「あ、ああ、言ったけど」


「―――これは私の推理なのだが」


筋書きはこうだ。

犯人は、たまたま公園に遊びに来ていた1年生の子を、事前に買っておいたアメでおびきよせた。

アメに夢中になっている内に誘拐しようと考えた犯人は、その子を抱きかかえ、用意していた車へと運ぼうとした。

アメが落ちていたのは、その時彼がアメを落とした為だろう。

しかし、タイミング悪く冬弥君に誘拐の瞬間を見られてしまった。

そこで犯人は慌てて1年生の子を車に押し込んでしまった、その際にハンカチが落ちたのだろう。

冬弥君は犯人から彼を助けようと果敢に向かったが、返り討ちを喰らい、同時に誘拐されてしまった。

・・・・・・というわけだ。


「辻褄は合ってるけど、そんな都合よく事が運ぶもんかねぇ」


「なら確かめてみるか、アレで―――」


人差し指で何かを示している。

そこにあるのは・・・電柱だけだ。

まさか電柱に聞く?そんなバナナ。

呆れ返る寸前で、何かに気付いた。

よーく目を凝らしてほしい、一番上の足場のところにちょこんと黒い『何か』がある。

あれは・・・多分、監視カメラか?

位置的にはこの遊具がある場所までは映らないようだ。


「あれじゃ誘拐の確認のしようがないじゃないか」


「いや、その必要はない。

確認するのは、1年生の子と冬弥君がいたということだ」


そうか、それならば推理の半分は正解ということか。

そうと決まれば善は急げ、僕は車を回して走り出した。

行先は―――この街の防犯センターだ。




2016年2月27日、11時22分。

市立防犯センター。

この公園を含め、ここ一帯の防犯カメラの映像がここに集まる。

到着早々、受付でアポを取ろうと試みたが・・・


「え、ダメ!?」


「申し訳ございません、防犯カメラの映像は第三者の方にはお見せすることが出来ません」


こんな時に限ってストップコールかよ。

こっちは人の命懸かっているっていうのに・・・


「そこを何とか、人の命が懸かっているんです!」


「申し訳ございません―――」


まるで機械と会話しているようだった。

受付嬢は何を言っても謝罪と言い訳しか言わない。

その上、悪いと思っていないであろう表情がなんとも憎たらしい。

イライラが募ってきたところで、ふとレイが肩に手を乗せてきた。


「津田君、ちょっと―――」


述語を抜かした中途半端な日本語だったが、僕にはすぐ理解が出来た。

レイと場所を交代し、腕を組みながらイライラタイムに花を咲かせていた。

受付では何やら二人でコソコソ話している。

コソコソとはいったものの、二人の会話がボリューム小さすぎてこちらまで聞こえないだけである。

10秒くらいだろうか、レイは受付に腕を置いて右腕を左腕に重ねながら、受付嬢と何かを話し終えて、こちらに戻ってきた。


「―――OKだそうだ」


・・・頭の中は一瞬で灰色の空が広がった。

刹那、玉だけ無駄に消費する台で奇跡ともいえる確変が起きた。

あれだけ押してもビクともしなかった扉を、彼女は容易く蹴とばして開けたみせた。

何を吹き込んだ、一体何を吹き込んだんだレイ―――


奥へ進むと、管制室と書かれた札が見えた。

ここに入れば、確認できるのか。

ちょっと強引に入ってきたけど、いいよな。

ええいままよ!


扉を開けると、案の定皆さんは不思議そうな顔でこちらを見ている。

受付から連絡が入っていればいいのだけれど、多分無駄だったろうな。

警察手帳だしても人命に係わると叫んでも知らん顔された場所だぞ、追い返されるのが関の山か。

しかし、レイは一歩も引かず、むしろズカズカと中へ入っていく。


「突然で申し訳ない、防犯カメラの映像を見せてくれないか」


第三者がいきなり爆弾発言とも言えよう、さすがはレイさん。

そしてこちらも予想通りで返ってつまんないくらい当たり前の反応。


「な、なんなんだ君は。

映像?第三者に見せるわけないだろう」


さてどうしたものか、もう手段はないぞ。

相手は複数人、先程の手は使えない・・・というか、何しでかしたんだ。

ともあれ、これは万事休す―――


突然、電話が鳴り出した。

レイに立ちはだかっていたおじさんが出る、恐らく受付からであろう。

口調も乱暴な感じだし。


「なんだ―――何っ!?それは本当か!」


どうやら様子がおかしい。

静かに電話を切ると、こちらをギロッと睨む。

電話の主が非常に気になっていたのだが、それ以上に驚いたのが、


「―――何の映像が見たいんだ?」


おじさんが映像確認の許可を出してくれたことだ。

ホントさっきの電話誰!?

そんな俺をよそに、ニヤリと笑うレイはおじさんに公園の映像を要求すると、僕たちを別室へと案内する。

そこには3台のコンピューターと3脚のイスだけがあった。

慣れた手つきでコンピューターを操作すると、3日前の公園の映像が流れた。

画面真ん中にグラウンドがあり、画面下には映っていないが、遊具がある。

映像再生開始から暫く経つが、変化はない。


「何も変化ないね・・・」


再生して30分、やはり変化はない。

あるのはグラウンドの映像と、横を通る車のみ。

人っ子一人いない。

しかし、レイは何かに気付いた。


「ん、今のは・・・」


「どうした?」


「今画面の下に何か・・・」


画面下ということは、遊具か。

もしかしたら、画面下の遊具側から1年生の子が来たのか。

すると、すかさずレイは叫ぶ。


「来たぞ!」


画面上から、子供らしき人影が歩いてきた。

ぼやけていて見えづらいが、黄色いシャツが確認できる。


「黄色いシャツ・・・ということは、冬弥君だ!」


刹那、冬弥君は走り出した。

画面下の方へ、一目散に。

そして・・・画面から消えた―――


「なあレイ、これって―――」


「―――ああ、間違いない、彼らは誘拐されたんだ」


確証を得たレイは、この状況下で不敵な笑みを浮かべていた。




「―――見つけた」




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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