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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第六章 ~ 穢れた正義 ~
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調査ファイル 100 [地獄から来た男 Part 9]

「ふむ・・・」


遺体の前にしゃがみ込み、顎に手を当てながら黙り込むレイ。

先生も付き添うように、一緒に見分をしていた。

僕は僕で、他の場所を散策していた。




「なにか手掛かりが・・・あるといいんだけど」


手始めに、飯島氏の寝室を当たってみることにした。

ありとあらゆる引き出し、クローゼット、ドアの(たぐい)を捜索した。

その姿は、さながら空き巣泥棒。

ある程度落ち着いたのだろう、優希も僕の手伝いをしてくれていた。


「なんか見つかった?」


「んーん、なんもない」


優希の方も、手掛かりはなかったらしい。

手掛かりって言っても、当たる場所があまりにも広すぎる。

名刺や写真はたくさん出てきたものの、小さいとはいえここも事務所・・・これは骨が折れそうだ。

大手企業から一個人まで、事情聴取の範囲が膨大過ぎて、どこから手を突ければいいかわからない。


「これは・・・ポータブルプレイヤーの会社の会長!?

こっちはゲーム会社の取締役、こっちはプロダクションの社長かよ」


どれも大きな会社・名前ばかりが揃っていた。

いくら警察の事情聴取とはいえ、世界を(また)に掛ける人間を“捕獲”するのは容易なことではないぞ?

これが地球の裏側ともくれば、もはや無理だろうな、HA・HA・HA!


「あー、ダメだ。

もうわけわかんね!」


「諦めないでよアッキー。

刑事がそんなことでいいの?」


「いいんだよ、別に。

ってか、今の僕私服だし、刑事に見えないよ」


「そんなこと言って・・・

レイちゃん怒るよ?」


レイに怒られるくらい屁でもない。

大島さんくらいなら、まだ考えてたけど。


「・・・しっかし、物多いな」


ベッドを除けば、窓際に段ボールが、机にはPC機器の諸々が多数置いてあった。

片付けが苦手だったのだろうか。


「仕方ない、段ボールも見て見るか・・・」


ボソッと呟き、段ボールが積んである方へと向かおうとした。

刹那―――


「おわっと!」


足元にあった何かに躓いた。

そのままケンケンでつんのめり、仕舞いにはベッドの方へと倒れ込んだ。

あろうことか、ベッドの近くで色々物色していた優希諸共。


「うわっ!」


まるで修学旅行に来た学生のように、ベッドへとダイブしていた。

何もそこで立たなくていいのに、優希は僕を受け止めようと立ち上がり、そのまま巻き込まれていた。

僕は偶然100%の、“さながら”『大泥棒ダイブ』を決め込んでいた。

ったく、誰だよこんなとこに物置いたのはっ!




「ったたた・・・」


「だっ!ゴメン!

大丈夫か―――」


押し潰してしまった優希を助けようと、ベッドから離れようとした。

したんだけど・・・


「・・・ぎゅ」


「・・・何やってんの」


優希は僕の背中に手を回し、軽い抱擁をしていた。


「―――いや、なんか雰囲気でないかなって」


「はあ・・・」


思わずため息が出てしまった。

そして、ここぞとばかりに反撃を開始した。


「そんなことして、レイ怒るぞ?」


「やっぱし?」


笑っていらっしゃる、この方は。

顔はケロっと、声はニシシと、それはもうイタズラっ子のごとく。

ようやく手を離したおかげで、、僕はベッドからどけることが出来た。

すぐに手を差し伸ばし、優希を起こす。


「あーあ・・・」


積んであったダンボールが、幾つか散らばってしまっていた。

幸いというべきか、被害は上段の数箱だけに留まっていた。

これまたため息を吐きながらも、僕はダンボールへと手を伸ばした。


一部は無傷だったが、一部はフタが開いてしまい、中身が飛び出していた。

書類が足元に散らばり、一面を白く染め上げていた。

めんどくさい。


「・・・あれ?」


書類の中に、一枚だけやけに小さい紙が混じっていた。

印刷紙ではなく、厚紙のようだ。


「どしたの?」


肩越しから、優希が覗き込んでいた。


「これ、名刺だよね」


「さっきのところにはなかったよな」


お偉いさんの名刺の中にはなかったものだ。

いや、それよりこれは―――




「ガタン―――――!」


大きな物音を前に、僕たちに流れる時間が、少し止まった。

どうやら誰かが入ってきたようだ。

誰だろう、と僕らはコソっと呟いた。


「行ってみよう!」


部屋を出て、リビングの方へと向かうと、青い服を身に(まと)う集団が、そこにいた。

頭には全員雲のような白い帽子、中にはアタッシュケースを持つ者もいる。


「鑑識さん・・・ですか?」


「ええ。

事情は聞いております、皆さんは一度退室願います」


そう言うと、僕たちは部屋を出ることにした。

玄関には数人の警官、地上にも複数の警官やパトカーも配備されていた。


「これは・・・いよいよ大事(おおごと)になってきたな」


冷静に語るレイ。

まあ、依頼人の素性を聞いてから、こうなることは予測してはいたけど。


「ところで、何かわかったことは?」


先程まで現場検証していたレイに、僕は問いた。


「ああ、そうだな・・・」


真剣な面持ちで僕を見つめ、そのまま冷静に話し出そうとした。

その時だった―――




「―――あ?何だお前ら」




人相の悪そうな男が、姿を現した。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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