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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
第六章 ~ 穢れた正義 ~
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調査ファイル 095 [地獄から来た男 Part 4]

後日―――




「・・・・・・」


「そんな顔をするな」


少々、ご機嫌斜めです。

と言っても、決して怒っているわけではないのです。

―――悲しいんです。


「本当にすまないと思っている。

それに、経費でどうにかなるとも言っていた、心配ないじゃないか」


「そういう問題じゃ・・・」


(さかのぼ)ること2時間前―――







「つまるところ、その“飯島紀洋”という人物を探せばいいってことか」


「ああ」


僕とレイは、ファミレスで話をしていた。

丁度お腹も空いていたし、話をするにはいいかな、と。


「でも名前だけで探せるもんかねえ?

1億人以上いる中からスパっと当てられるとは・・・」


「否定はしない。

が、私は探偵・・・そこは否が応でも見つけて見せるさ」


責任感なのか何なのか。

どことなく自信がある、ようにも見える。

実際、警察の捜査網をちょちょいと使えば、すぐに見つけられないこともない。

そこまで大掛かりにしないにしても、伝手を使えば安易な話。

名前が割れているだけマシ、なのだろうか。


「それで、まずはどこから当たるんだ?」


「まずはここ周辺を当たろうと思う。

札川にいなければ、捜索範囲を他に向ければいいだけの話」


簡単に言ってくれる。

札川署の力も、多方面にまでは向いていないことを知らないのかこの()は。

だが、そうせざるを得ないよな。

札川にいることを、切に願うしか・・・


「だとして、札川と言えど、一つの市だよ。

洗うにしたって範囲が広すぎると思うけど」


「案ずるな。

その為の―――君だろ?」


フォークを僕の方に向け、タメを作りながらそう言った。

あ~、やっぱりそうきたか。

ま、『警察だろ?』と言われるよかマシか。

僕自身に頼っていると思えば、まだ行動理念も働く・・・なんて思ったら怒られそうだ。


「はいはい、それじゃ少し調べてみるよ。

レイはどうするの?」


「私は10年前の事件を調べてみる。

一人だけ無知というのも(しゃく)だしな」


たしかに、レイだけがこの事件を知らなかった。

これを機に調べて、一応参考にという腹積もりだろう。


「結局僕一人で捜査か・・・」


「心配するな、すぐに私も参加する。

それまでの辛抱だ」


「辛抱、ねえ・・・」


長いだろうな、きっと。


「では、行こうか」


レイは席を立った。

まさにその時―――



ガシャン―――




「のわっ!」


テーブルの上にあったグラスが倒れた。

どうやら(ふち)ギリギリに置いていたのだろう、それが立った拍子に触れたようだ。

ものの見事にやらかしてくれるねぇ、君は。


「ああ!すまない、津田君!」


あわあわとしながらナプキンでテーブルを拭いている。

しかし、もはや手遅れというか・・・


「あーあ・・・」


(こぼ)れた水が、テーブルを伝って僕の方に流れ込んでくる。

上流の滝宜しく、並々と。


「やだっ!どうしよう・・・!」


こういう時は冷静でいられないタイプっぽいね。

テーブルを拭き終えたレイは、あろうことか僕の服まで拭こうとしていた。

幸いジャケットは無事だった、だったのだが・・・


「ちょ、まっ・・・!」


スラックスはチャラリーンな状態だった。

左太ももを中心に、ぐっしょりと。

そしてこのレイである。

テンパったこの()は、テーブルの下に潜り込み、スラックスをナプキンで擦り始めた。

・・・この状態、マズくね?


「ああ・・・すごい濡れちゃって・・・」


一歩間違えば、画的にアウトだよコレ。

警官が捕まっては元も子もない!


「い、いいよ、大丈夫だって!

それくらい自分で拭くから!!」


そう言って、レイをテーブルの下から無理矢理引きずり出した。


「そ、そうか?

面目ない・・・」







―――ということがありまして。


さすがにこの格好で調査というわけにはいかないので、一度自宅へ戻り、着替えることにした。

生憎(あいにく)替えのスーツはクリーニングに出したばかりで、これ以上は持ち合わせていない。

公務とはいえ止むを得ない・・・本当に止むを得ない!




「でも・・・フフッ、なんだか久しぶりに見た気がする」


「何だよ・・・」


私服の僕を見て、クスッと笑みを浮かべていた。

そんなにおかしいかね。

ファッションセンスは決して悪くはないと思うんだが。

青のジーパン、ストライプ柄の白いシャツ、紺のカジュアルジャケットで、これから調査に向かうところだ。


「いや、深い意味はない。

しかし、何だかいつもと逆になってしまったな」


どちらかというと、いつもは僕がスーツでレイが私服ということが多かった。

以前の浮気調査なんかまさにそんな感じだったし。


「そうだねえ・・・ま、たまにはいいかもね」


「ほう・・・?」


「でも、次は普通の展開がいいな」


「まだ根に持ってるのか君は。

悪い男だ、全く」


なーんて、ちょっとデートっぽい感じに歩いていた。

だが大丈夫、僕たちはすぐに仕事モードへシフトチェンジしていた。


「それじゃ、私は図書館へ行ってくる。

警察資料は、宛てにならないしな」


自宅に戻った際、一度資料の問い合わせをしていた。

10年前ならば、まだ資料は綺麗に残っているはず。

しかし、返答は『NO』の一点張り。

頼りの綱である前田さんも、力及ばずと落胆していた。


「わかった。

こっちも、何かわかったら連絡するよ」




こうして、僕とレイは二手に分かれた。

さて、どこから手をつけたものか―――




『プルルルル・・・』




―――と、ふいに携帯電話が鳴り出した。

ディスプレイには、“神山 優希”と表示されていた。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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