調査ファイル XX7 [バレンタインデー大作戦 Part 4]
「どういうことだ?」
「それはこっちのセリフ。
よーく思い出して、何があったのか」
そうだ、僕は事務所に来て、レイの服装に驚いたんだ。
そしてレイは『今日は特別』って言った。
僕はてっきりデートに行くものだと思っていた。
そう考えた途端、ココロの奥で煮えたぎる変な感じが一気に爆発して、それで―――
「・・・ってわけなんだ」
「なるほどねえ。
そっかそっか・・・」
優希はどことなく軽快なトーンで言葉を放っていた。
表情はシリアスそのものではあったが。
「アッキー、何で怒りが込み上げてきたか、わかる?」
「わからないんだ。
ただ、レイが怪しい言動・行動をしてから、徐々に徐々に・・・」
「そうだよね、いきなりそわそわしてたら、色々疑っちゃうよね。
それで、その気持ちが一番強くなったのは?」
「あの男と会った時、だったと思う・・・」
「どうして?」
「・・・ねえ、それ聞いてどうする―――」
「―――いいから答えて」
優希は根掘り葉掘り、事情を聞き、状況を整理しようとしていた。
ちょっと怖いが、それでも口調は少し優しい感じだった。
トーンも決して低くなく、寧ろ少し高めの、まるで朗読を聞いているかのように。
「わからないんだ、本当に。
でも、何だかレイが遠くに行ってしまうような気がして・・・」
「―――そっか」
優希は、それ以上話さなかった。
先程まで根掘り葉掘りだったのだが、途端にその勢力は弱まり、次第には俯いて黙り。
優希なりに考えを整理しているようだ。
「アッキー、とりあえずこれだけは言っておくよ」
「お、おう」
「女の子を泣かせてはいけない!
例えどんな状況下でも、ね」
大きく説教を喰らうと思っていたが、出てきた言葉に正直驚いた。
あまりにも簡潔過ぎたからだ。
言葉にこそしなかったものの、優希の顔には『以上!』という言葉が見えていた。
「でも、僕・・・」
「そう、アッキーはレイを泣かせた。
ってことは、アッキーのすべきことは何か、わかるよね?」
ああ、わかるとも。
結論は理解できている、しかし―――そこに至るまでの行程が、僕一人では構築出来そうにない。
今時携帯を持たないあの子は、声を掛けようにもどこに行ったのかさえわからない。
まさに膠着状態、といったとことか。
「もちろんだ。
―――なあ、僕からも一つ聞いていいか?」
優希は目を見て、真っすぐ僕を見つめる。
「答えはわかっていても、そこに至る道がわからない時、手助けを講じることは・・・罪か?」
その質問を受けて、優希は目を瞑る。
続いて、首を横に、静かに振った。
しかしその口元は、微笑みのそれだった。
「ありがとう・・・」
「さて、レイのところに行こう」
「今時携帯も持ってない人間だぞ、どうやって・・・」
「それは大丈夫♪」
そう言うと、優希はポケットから携帯を取り出し、通話を始めた。
「もしもし・・・うん・・・了解、ありがとね!」
短い通話を終え、再びこちらを向いた。
「それじゃ、行こ!」
「ああ」
僕たちは、事務所を出た。
To Be Continued...
※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。




