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探偵シリーズ ~ 大怪盗の夢 ~  作者: 土井淳
番外編 ~ Valentine Rhapsody ~
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調査ファイル XX5 [バレンタインデー大作戦 Part 2]

「さて、と・・・」


マンションに戻ると、僕は少しだけ考え事を始めた。

言うまでもない、バレンタインデーのことだ。

日頃世話になっているレイに、今回を機として、プレゼントを贈ろうと思う。

男がチョコを渡すというのはさすがに気が引けるので、せめて別の形にするつもりではある。

問題はそれを『何にするか』ということだが・・・


「なーにがいいかなあ・・・」


カーペットを敷いた床に胡坐(あぐら)を掻き、腕を組みながら軽く(うな)る。

派手過ぎず、地味過ぎないのがミソなのだろうが、そのピンポイントを突くのは非常に難しい。




「んー・・・」


じっくり悩んでいたら、気付けば時計はあらぬ方向へ針を進めていた。

相当考え込んでいたらしい。


「もうこんな時間か・・・」


あまり考え込んでも無駄か。

そう思ってテレビを点けた。

画面には、ある有名人の誕生日に関するニュースが報じられていた。

その人は女優で、妙に胸元を強調していた。

少々如何わしさを覚えていたが、キャスターの一言でそれは払拭された。


「は~、素敵ですね~、そのネックレス」


「そうなんですよ!

彼がプレゼントしてくれたんです!」


彼からネックレスを貰ったと、女優は語っていた。

その恍惚の表情を見た瞬間、僕の脳内会議では即座に多数決を取り、満場一致を()(さら)っていた。

これだ、コレだよ!


「―――レイ、喜ぶかな・・・」







翌日、僕は探偵事務所に来ていた。

署の方で依頼された仕事を手に、事務所へと持ち掛けていたのだ。

探偵課の日課である。


「おはよう、レイ」


「ああ、おはよう、津田君」


パンツスタイルのスーツを決め込み、整った姿で出迎えるレイ。

お客でも来るのだろうか。


暫く仕事の話をし、依頼内容について整理していた。

一段落ついたところで、これまた何となく切り出してみた。


「レイさ、今一番欲しいモノって何?」


しまった、いきなり切り込み過ぎたか。

少し驚いた表情を浮かべ、こちらを見ながら口を開けていた。


「なんだ、藪から棒に」


「いや、何となく。

ほら、昨日テレビでそんな特集やっててさ」


咄嗟の判断により、レイは疑うことはなかった。

まあ、辛うじてね、辛うじて。


「そういうことか。

ふむ・・・」


どうにか理解したところで、軽く腕組みをしながら、考え始めた。

左手で右腕の肘を掴み、右手を顎に当てながら、無言のまま。

これ、長引くかねえ。

何となく察した僕は、手助けがてら選択肢を振ってみた。


「もしかして、宝石とか?」


怪盗だけに、というただそれだけの理由である。

例え“怪盗”という部分を差し引いても、女性ならば大半は憧れの象徴だろう。


「いや、宝石は・・・」


意外だった。

レイは宝石が好きではないらしい。

まるで酒好きが飲んだ後吐き過ぎてもうコリゴリだと言わんばかりの、軽い拒絶感。

これも過去に何かあった所以なのだろうか。


「強いていうならば・・・アクセサリー、かな」


「アクセサリー?」


レイが言うには、ブレスレットやイヤリングといったものが良いとのこと。

返ってそういうものには興味がないと思っていたんだけどね。

これもまた意外だった。


「でも、その割にはそういったものは着けてないよね」


「ああ。

何分にも、世俗には疎いものでな。

家が、家だっただけに―――」


たしかに―――この家には女性らしいと思わせるものがあまりにも少なすぎる。

ぬいぐるみの一つもなければ、ピンクの小物さえない始末。

あるとして、ピンクのマーカーくらいか。


「そっか・・・」


僕はこんな言葉しか出せなかった。

美羽同様、無垢な表情で首を傾げていた。




ともあれ、意見は聞き出すことが出来た。

あとは懐と要相談か・・・

と、ここで僕はふとある疑問を抱いた。


「レイ、一つ聞いていい?」


「なんだ?」


「今日お客さん来るの?」


「え・・・?」


突如、レイの態度が変わった。

いつものクールな感じが、一瞬にして崩れ去っていた。

それどころか・・・


「いや、別に・・・」


「じゃあ何でスーツ、着込んでんの?」


「そ、それはその・・・

べ、別にいいだろっ!」


といった具合に、どこぞのツンデレ宜しく、別人のようになっていた。

そこはかとなーく、顔も赤かった、気もしないでもない。


「いやいいけどさ、何そんな慌てて―――」


「あ、慌ててなどいない!

そうだ、今日は出掛ける用事があるんだ。

だからスーツを着ているんだ、うん」


どっからどう見ても怪しいが、これ以上突っ込むと喧嘩に発展しかねない。

ここいらで引くか。


「そっか。

それじゃ、僕は署へ戻るよ」


「あ、ああ。

ではな」







―――なんて、大人しく戻るわけもなく。

ひっそりこっそりと、レイの後をつけていた。

僕だって探偵業務を委託している身、言うなれば僕自身も“探偵”さ。

バレないように、付かず離れず・・・


レイは街の駅前に足を運んでいた。

なんでまたこんなところに。

すると誰かを見つけたようで、明るい顔つきで手を振っていた。

その先には―――


「あれは・・・誰?」




見知らぬ男が、レイの元へ駆け寄っていた。




To Be Continued...


※本作品はフィクションです。実際の個人・団体・地名・事件等とは一切関係ありません。

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