覚悟
初の2話連続夢の世界!そしてさらに続けます!
現実パートも嫌いじゃないんですけどね…。つまらないというニュアンスがどこからともなく聞こえてきたり聞こえなかったり…。
さて、では本格的な世界作りに入りますか。さきほどのリータの服やメガネの件で、かなり自由に世界が作れることがわかった。自由すぎて悩む。なんとなく答えはわかるような気がするけど、リータに聞いてみた。
「リータはどんな世界が見たい?」
「・・・・さんの望む、・・・・さんが作る世界が見たいです。
」
やっぱり想像通りだった。諦めずに再度聞く。
「希望とかない?」
「希望、ですか…。あ、いえ、・・・・さんの作る世界ならどんな世界でもかまいません!」
少し考えていたようだ。多少なりとも希望があるみたいだけど、無理強いしてまで聞くことじゃないか。途中途中でさりげなくまた聞いてみよう。
「でも、・・・・さんが作る世界なら、きっと優しい世界です!」
何故か自信満々に答えられてしまった。優しい世界、ね。
これまた難しい事を期待されてしまった。
優しい世界、争いのない世界。それは素晴らしいことだと思う。
けれど、生きていく上で、他者との比較・競争は必ず起こる。
そういった競争があるからこそ、さらに頑張れるし、より良い物が作れる、良いアイディアが生まれると、自分は考えている。
もっとも、そういった競争や比較から争いも生まれるんだろうけど…。
悩む悩むなやむ…。悩んだ末、ひとつ提案してみる。
「リータ、一度下に降りてみないか?」
そう提案した。
「下に、と言うと、この世界にですか?」
「そそ。まずは舞台に降りてみなきゃね」
よし、まずは人間が生きれる環境にして…。強く思う。…なったかな?じゃあ次は移動だ。大丈夫だろうけど、念のためリータと接触しておく。
「リータ、下に移動するから、どこでもいいから捕まって」
「はい!」
そう返事をすると、リータはおずおずと手を伸ばした。…掴んで良いんだよね?リータの手を握る。おお、家族以外の女性の手なんて何年ぶりだろう。…あ、そういやよくタクシーに乗車する足腰の不自由なおばあちゃんの手を掴んで介助してるか…。
「こほん、よし、行くよ」
咳払いをひとつ。さあ、移動しよう!
移動は一瞬だった。足元に先程まではなかった柔らかさを感じる。草の、少し青臭いにおいもする。吹く風が優しく身体を通りすぎて行く。無事に着いたみたいだ。
「うわ~!」
リータが嬉しそうに声をあげた。
「・・・・さん!これが地面なんですね!これが風なんですね!」
興奮ぎみにリータがはしゃぐ。いつのまにか、手は離れていて、リータが草原を駆ける。
若干残念に思いながら手を何度かわきわき握る。
「リータ、転ぶなよ~」
まるで外で遊ぶ子供だなと、ほのぼのしながら声をかけるが、遅かったようだ。
「きゃ!」
可愛い声を出してリータが転んだ。苦笑しながらリータに近づくがなかなか起き上がらない。慌てて駆け寄る。怪我でもしたか!?
リータは、空を見上げて仰向けになったまま動かない。
「大丈夫か!リータ!」
声をかける。
「・・・・さん、世界って、こんなに美しいんですね…」
リータは空を見ながら呟いた。感動していたらしい。横になったままのリータの隣に腰掛ける。
「ああ、綺麗だね。」
そう答えた。
「・・・・さん、こんな素晴らしい世界を、ありがとうございます。」
こちらを見ながらリータが言った。
「お礼は早いよ。これから、もっと凄い世界を、一緒に作るんだろ?」
笑いながら答える。
「はい!」
リータも笑顔で答えてくれる。でも、喜んでくれていて何より。
でもここ気持ちいいな。俺も横になろうかなと空を見ながら考えていると
「・・・・さん」
「ん?」
呼ばれて振り向く。リータの顔が、すぐ近くにあった。驚いて顔を引こうとするが行動に移す前に、
キスをされた。
「これからもよろしくお願いしますね」
唇が離れて、顔を赤らめながらリータが言った。
は!?え!?今、何をされた!?絶賛混乱中である。
え?ちょっと待って、キス、されたのか?いいのかこれ?いやよくないだろ!冷静になれ自分!どうする!どう責任をとればいい!?
混乱している自分が面白かったのか、リータが口に手をあてクスクス笑っている。
「大丈夫ですよ。・・・・さん。私にとっては、この世界は現実ですが、・・・・さんにとっては、夢、なんでしょう?」
「夢の中です。奥様もお許しになってくれますよ。」
リータは言う。でも、おかしい。リータに、自分には妻がいることを、話しただろうか…?
「・・・・さんを通じて、そちらの世界を見ていたんです。本当に、子供さんや奥様を大事になさってますね」
少し悲しそうな笑顔でリータが告げる。…自分は、何て言えば良いのだろう…。複雑な感情が入り乱れて、何も、言えない。
「なので、せめてこの夢の世界の中でだけでも、少しだけでもいいので、私の事を見てください。」
リータは言う。
………………。
リータのそばに近づく。そして、無言で抱き締める。あっちを、現実を見ていた。そう、言った。つまり、それは、リータがこちらでひとりぼっちの時だ。それは、長く、ひとりでいたリータにとって、かなり苦痛だったろう…。見せつけられていたようなものだ。
「ごめんな。つらかったよな?ひとりは、嫌だよな?」
「大丈夫、これからはリータにいっぱい構ってやる。自分がいるときはひとりには絶対させないから。」
「だから、自分が現実にいる間も、リータが寂しくないように、楽しい、優しい世界を作ろうな!」
宣言した。そして覚悟を決めた。この世界を、リータが心のそこから楽しめる、笑顔でいられる世界を作ろう!
「はい、よろしくお願いします。・・・・さん」
リータも、笑顔で答えてくれた。
※浮気宣言ではありません。あくまで、子供に接するような愛情を注ぐ宣言です!
………いつまで持つかはわかりませんが(爆)