夢の始まり現実の続き
夢を、見ていた。
そこは真っ白な場所だった。見渡す限り白い世界。360度、なんにもない。まるで雪原にいるような気持ちになる。少し、気持ちいい。なんでも出来そうだ。どこまでもいけそうだ。
そして、不安になった。自分以外、何もない。誰もいない。
「ここはどこだろう…?」
ようやく疑問に思った。確か昨日は普通に仕事を終わらせて帰ってきて、子供と嫁の寝顔を見て自分も眠りについたはず。
「ああ、夢か。」
納得した。こんな白一色の世界なんて見た記憶ないからだ。自分はちょこちょこ夢を見る体質だとは自覚している。寝る前に読んだ本やプレイしたゲームの設定がごちゃごちゃになったようなファンタジーな夢も見たことがある。
けれど、今回は違う。今までは夢の中では「これは夢だ」と自覚したことはなかった。目が覚めてから「あー、また夢を見たなぁ」と覚えていることはあったけど、今回のようなケースは初めてだ。
「どうせならもっといい夢見てるときに思い通りに動きたかったな。」
苦笑した。それこそ、ファンタジーのような冒険や女の子にモテモテな世界とか、そういうものが良かった。
そう考えていると、頭上から何かが降ってきた。綿?いや、雪か?
ボタ雪のような、大きめの固まり。手の平で受け止めてみると冷たくない。そして、溶けない。
「雪じゃ、ない?」
これはなんだろう?そう思っているとイメージが流れ込んできた。
「あ?なんだこりゃ?」
頭に流れ込んできたイメージ。それは過去の英雄を召喚して戦いに挑む物語。あー、こんなアニメ見たことあるな。
そう考えていると、また雪?が降ってきた。受け止めてみる。またイメージが流れ込んでくる。今度は女の子にモテモテなのにそれに気がつかない鈍感な男の物語。うん、マンガで見たことある。
どんどん雪?は降ってくる。手で受け止めることで色々なイメージが流れ込んでくる。ホラー系のもの。サスペンス系のもの。ギャグ系のもの。受け止めきれず足元に落ちるものも出てきた。
「なんなんだよこれ…」
軽く混乱してきた。深呼吸して考えてみる。どうやらこの雪?ひとつひとつ違うイメージを持っているようだ。そしてこれは雪じゃない。イメージの固まりみたいなもんか。今のところ実害はないか?でも何なんだろうこれ…。
「世界を、つくって。」
突然、何処からか声が聞こえてきた。
「はい!?」
ビックリした。誰かいるの?どこだ?また混乱し始めた。
「真っ白は、きれい。でも、寂しい」
確かに。納得してしまった。
「で、どちら様?どこにいるの?」
………返事なしっと。
「あなたの世界を、つくって。」
その声が聞こえたと思ったら、急に眠くなった。意識がボヤける。夢の中でも眠くなるんだなぁ。そんなどうでもいいことを考えていると、意識がなくなった。