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序
ガラ・サルヴァドール・キホーテ嬢の波瀾と脅威に満ちた逃避行の顛末を一部始終そばで見ていた弟、サンチョ・キホーテ氏による手記
これはドーニャ・キホーテⅩⅡ世、すなわちガラ・サルヴァドール・キホーテの物語だ。彼女は僕の姉である。
この項で必要な情報はこれですべてだが、僕の名前がサンチョであることに疑問を抱く人がいるかもしれない。
「キホーテの子孫が自分の子に初代の従者の名をつけるか?」
と。したがって、簡単な自己紹介をしておこう。
僕と姉は血がつながっていない。僕は4歳のとき孤児院からホアン・サルヴァドール・キホーテⅩⅠ世に引き取られた。そのときすでにサンチョと呼ばれていた。
さて、それでは本題に入ろう。