居場所
白凪 花火と出会って、数日が経ち、愛海は、家で過ごしていた。ここは、自分でいられる唯一の居場所だから気が楽になる。
今だって、昼過ぎだというのに、下着で縁側で涼んでいる。特に羞恥心などはない。むしろ、水着では大丈夫で、下着ではダメという基準が分からない。今日は、いつも以上に暑くなるとニュースで言っていたので、家からは出ないつもりでいた。
いつものように、棒アイスを口にくわえて、横になっていた時、インターホンが鳴った。出るのも面倒だったので、居留守で過ごそうと思ったが、携帯をマナーモードにしていなかったからか、着信音が鳴った。知らない番号…おそるおそる電話に出た。
「…も、もしもし」
「もしもし? 神崎 愛海さんですか?」
「そうですけど、どちら様?」
「急にごめんなさいね。この前、お会いした白凪ですけど、覚えていらっしゃいますか?」
甲高い声と丁寧な口調で、思い出した。
「お久しぶりね。あたしの番号は、柊から教えてもらったのかしら?」
「お察しの通りです。今は、外出しているのかしら?インターホン鳴らしたんだけど、出なかったので」
その言葉を聞いて、即座に玄関のドアを開ける。 しかし、誰もいない。
「その様子だと、玄関までいったのですね。でも、ごめんなさい。私今ちょっと、お忙しい身でして、そちらに伺う時間がありませんの」
「じゃあ、なんで、インターホンが鳴ったことを知ってるの?」
「それは、鳴らしたのが【わたくし】だからですよ。鳴ったときに、すぐに出ればよかったのに、残念でしたわね。では、また連絡しますわ。ごきげんよう」
そう言って、電話が切れた。この前、会った時もそうだったが、相変わらず、自分勝手にもほどがある。ただ、どうやって、愛海の家のインターホンを鳴らしたのか?それは、謎のまま…
頭の中が、もやもやする。家にいても落ち着かなくなり、外出することにした。身支度を整え、そそくさと家を出る。まあ、ちょっとした気晴らしだ。
∞
「ターゲットが動いた。これより、作戦を実行に移す」
「了解。確認だけど、できるだけ早く【オトモダチ】になること。それが最優先なことを忘れないように。ウチの顔に泥を塗るのは勘弁してな」
彼女は、そう言って、携帯を切ると、青く澄んだ空を見上げた。
「もうすぐ会えるんやな。気の合う子ならええんやけどな」