それぞれの希望
神崎 愛海(かんざき なるみ)…人形の金髪少女
野上 桜子(のがみ さくらこ)…ブックのメンバー
柏木 千冬(かしわぎ ちふゆ)…ブックのメンバー
―お前、ホント弱いな。つまんねーよ!!!―
愛海の脳裏にふと呼び起こされる記憶の一部…
いつも、【彼女】の言葉に涙を流していた!!!自分は弱い、だから、強くならないといけない。守られていてはだめだと思うようになっていた!!!
あの頃より、あたしは、強くなれているのだろうか?
確かめようにも、もう、【彼女】はいないのだ…
「私たち、ブックは、政府直属の諜報機関であり、その存在は、明かされてはいないわ。もちろん、あなたたち人形の存在も同様にね」
野上 桜子は、流暢に淡々と経緯を愛海に話している。話しぶりから、嘘をついているようには思えない。
「教官。そんなに重要なことを話して大丈夫なのですか?第一、まだ彼女が人形だという確証はありませんよ!!!」
柏木 千冬が不安そうに野上に尋ねる。
「ここに来ていることと、人形という言葉を聞いて、疑問に思わなかったことで確証は得ているわ。まあ、ツグミが言っていたというのもあるんだけれどね。とにかく、千冬はもっと柔軟な思考を持ち合わせるべきね」
野上 桜子の一言に、柏木 千冬は分かりましたと一言告げ、黙り込んだ…
「一つ気になったのだけれど、ツグミってあなたたちのリーダーなの?」
「ちょっと違うわね。ツグミは、私たちの【希望】のような存在よ。彼女のためなら、私は、なんだってするわ!!!」
野上 桜子は、いきいきとした目で、そう答えた!!!
希望…その言葉を聞いて、愛海の脳裏には、彼女の笑顔が思い浮かんだ。愛海にとっても、彼女は、希望のような存在だったからだ!!!
「あなたみたいなひとがいて、彼女は幸せ者ね。実を言うと、あたしにも、そんな人がいたの。あたしを残して、遠くに行っちゃったんだけどね。でも、【約束】があるから、それをあたしは、一生守っていくつもりよ!!!」
そう告げた愛海の表情は、キラキラと輝いていた。どんな宝石の輝きにも比べ物にならないくらいの輝きだった。
「桜子、千冬、いつまで油を売っているの?時間とっくに過ぎているわよ」
入口の方から声がした。足音がこちらに近づいてくる。
「ごめんなさいね。ちょっと世間話をしていたのよ。あなたのことも話していたのよ。ツグミ」
愛海は驚愕した!!!
「う、海未?」
愛海の前に現れた彼女は、柏崎 海未に瓜二つだった!!!