表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第四話「何でも鑑定団集結!」

 勇者とバーベキューを楽しんでから一週間が経っていた。雷竜はヒゲを取って魔道具にするものだと思っていたが肉もあれほど美味だったとは。新しくアクア様が作った『れいぞうこ』っていう新しい魔道具で残りの肉は保存すると言っていたし、少し貰ってこようかな?

 僕が雷竜の肉に思いを馳せていた頃、マユちゃんが現実に戻すようなことを言った。



「お客さん来ないね……」



 確かに今日も今日とてお客さんが全く来ない。悲しいけど現実なのよね。このままではすぐにマユちゃんに給料も払えなければ、店のテナント代も払えなくなってしまうだろう。

 既に店の在庫をこっそりと質屋に持って行きはじめている。元々お金を出して個人から買い取った魔道具や冒険者ギルドや錬金術士工房から仕入れた魔道具だ。それを質に入れている訳だから加速度的にお金は減っていった。


 もう店の倉庫はマユちゃんに見せられない。まあ商品が減っているって言うこともあれば、スーパーイチローの魔道具がいくつも転がっているということもあるのだけれども。



「やっぱりスーパーイチローの従業員になるしかないのかな」


「なんでセージ君みたいな前回の大会で優勝したような鑑定士があんなぽっと出の魔道具屋の一従業員になるのよ!」


「そうは言ってもさあ。マーケティングで完全に負けてるよ」


「あ~何か勇者をギャフンと言わせる起死回生の手が無いかなあ」



 『爆発岩のハンマー』で頭をかち割られそうになったのは結構ギャフンと言ったと思うけどね。

 それはともかくマユちゃんにお給料の話をしないと怖いなあ。



「ところでマユちゃん。お店の経営が大変でさ。給料のことなんだけど……」


「ナカジーマ堂をもっと目立つところに引っ越せばいいのよ。スーパーイチローに囲まれてたら場所も分からないし」



 給料の話をしようとしたのにさらにお金がかかりそうな話をされてしまう。



「そりゃそうかもしれないけど引っ越しの費用もかかるからなあ。新しく借りる物件の保証金もかかるだろうし」


「それよ! それだわ! 私、今から不動産屋に行ってくるね!」


「えっちょっとちょっと!」



 行ってしまった。相変わらずマユちゃんは思い立ったが即行動だ。考えるということをしない。そこが可愛いんだけども。






◇◆◇◆◇◆◇◆◇






 マユちゃんが出て行ってしまったのでただただ暇である。は~やっぱりお客さん来ないなあ。


 そんなことを考えていると勢い良くドアが開かれる。「カランカラーン」とお客さんの登場かと思ったがやはりというかマユちゃんだった。



「あんまり勢いよくドアをあけると壊れるよ。ただでさえお金が」


「セージ君! これ見て!」



 マユちゃんはまたチラシを持っている。



「今日のスーパーイチローのチラシならもう見たよ。おソバは買いだめしてあるし」


「チラシじゃなくて貼り紙だよ。見て見て!」


「ええ? 貼り紙を剥がして持って来ちゃったの? それはマズイんじゃ……」


「いいから見てよ」


「どれどれ……何々、魔道具鑑定大会? あ~もうそんな時期か。大会の優勝賞金の100万エーンも助かるんだよな」



 マユちゃんの給料も店の家賃も優勝できれば、しばらく払えるぞ。



「100万エーンじゃないよ! よく見て!」


「え? 100万エーンって書いてあるじゃない? ん? アレ0が多い。 え? いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん、ひゃくまん……いっせんまん……いちおく!? ば、ばかな!? 国営のイベントとはいえ、タダのお祭りで1億エーン!?」


「その下の説明も見て」


「ヴォリス王国は商業国家として魔道具の流通を活発化したいと思っています。魔道具の鑑定はそのために重要な技術です」



 なるほど。文字面を額面通りに受け取れば、まさにそういうことでそういう意図もあるんだろうけど裏にあるのは、恐らくスーパーイチローだ。

 数年前からやっているお祭りイベントを利用して勇者のビジネスをバックアップする。そして国の商業を発展させようとしているのだ。



「これに優勝したら最高に良い場所にお店の引っ越しもできるし、勇者も出るだろうからセージ君のほうが魔道具の目利きが上って証明できるよ!」


「マユちゃん。これは勇者を勝たせて彼らを宣伝するためだけ大会だよ」


「なんで!? やってみないと分からないじゃない! セージ君は鑑定士として勇者に勝てないの? 神眼とかいうのがあるから」


「勇者は鑑定士としても凄い。だけど僕なら鑑定士としてならきっと勝てるよ」


「ホント!? ヤッター! 1億エーンだあ!」


「いや……僕ならって言ったじゃないか。マユちゃんもここをよく見てよ」


「ん? 今年からは団体戦です。参加者は5名以上のメンバーで参加してください」


「つまり僕が勇者に勝てるだけじゃなダメなんだ。勇者チームにはもちろん高名なアルケミストである大賢者アクア様、人間とは基礎魔力が比べ物にならないハイエルフのティータさん達が参加すると思う。

 国は勇者チームとして盛り上げて宣伝するつもりだよ。美女と賢者様だしね。やり方がうまいよなー」


「わ、私も参加するし」


「マユちゃんは『爆発岩のハンマー』と『雷竜のヒゲ』すら名札が無ければどっちがどっちか言い当てられないでしょ?」


「うううう!」



 冗談で言ったのに言いくるめられている。魔道具屋で働いているならハンマー状のものとヒモ状のものの違いぐらい言い当てて欲しい。



「あ~起死回生のチャンスかと思ったんだけどなあ」


「まあ~全ての魔道具じゃなくても良いよ。このジャンルには詳しいって人が他にもいればなあ。そもそも勇者には皆感謝してるし本気でたたかおうって人がいない……」



 その時、店のドアに付いたベルが「カラカラーン」と鳴り響いた。



「ここにいるぞ!」



 どうみても怪しげな男達が現れる。お客さんでは無さそうだ。しかしよく見ると一人は知っている人物だった。



「ブンターさん……」



 ブンター・スガワさんは荷馬車で陸運業をしている。ウチの店でもたまに魔道具の運送を頼むことがある。そういえばこの人も勇者と同じで異世界のニホーンから来たとか言っていたな。本当だろうか?



「ところで何か魔道具のお入用ですか? 運送は何も頼んでないですし」


「そうじゃねえ! 俺がその勇者と本気で戦おうとしてると男だ!」


「ええええ? なんで? 肩持つ訳じゃないですけど勇者は世界を平和にしてくれたじゃないですか?」


「アイツらはよぉ。日本ではいじめられっ子だったんだ。それでどいつもこいつもトラックで自殺しやがって。おかげで俺の会社は損害賠償や営業停止で潰れちまって。一家離散。俺っちも富士の樹海で……」


「なんだかよく分からないですけどどうしてそんなことが分かったんですか?」


「俺がこの世界に転移するときに神に聞いたんだよ」


「うーん。やはり言ってることがよく分からないのですがとにかく勇者に恨みがあるってことですか?」


「おうよ! こいつらもだ」



 こいつらもって。ブンターさんは魔道具の運送もするからそこそこ魔道具全般に詳しいけど。一体この人達は?



「拙者はテツオでござる」


「アナタは勇者になんの恨みが?」


「拙者この世界のアキーバの町を秋葉原に習ってメイド喫茶の町にして萌え萌えにしようとしてたんでござる」


「メイド喫茶? なんですかそれ?」


「この服を来た女の子がお茶を出す店でござる」



 テツオさんという人はフリフリの衣装を出した。これがメイド喫茶の服なのだろうか? この世界にもメイドはいるけどこんな服ではないと思うのだが。



「キャーかわいい! 私も着たい」



 マユちゃんがメイド喫茶の服を見てはしゃいでいる。



「そうでござろう。そうでござろう。けど勇者の奴がそれを邪魔したんでござる。アキーバの町ですくーるみずぎバーを流行らせて滅茶滅茶にしたんでござる」



 テツオさんもアキーバをピンクな町にしようとした方向性は同じじゃないだろうか。しかしテツオさんはあんなのは邪道邪道と猛っている。



「しかし、テツオさんは何か魔道具に関して得意なことがあるんでしょうか? 何もないと戦力には」


「セージよ。オメーの店に置いてある『少女人形』は誰が作ってるか知っているか?」


「いえ、これはブンターさんに仕入れてもらっているので分かりませんがきっと熟練のアルケミストさんが作ったんでしょうね」



 魔道具『少女人形』は人間の女の子を襲う魔物に襲われた時に投げ捨てると身代わりになるアイテムだ。お人形さん遊びにも使われるので小さな女の子にお守り代わりとして与える魔道具として金持ちに人気が高い。



「それを作っているのはテツオさ」


「えええ? そうだったんですか? いや『少女人形』は人工魔道具として物凄く精緻な作りですよ。凄い腕ですね」


「フヒヒヒヒヒ。そうでござろう」



 なるほど。テツオさんもアルケミストとしてかなりの腕があるようだ。



「しかし……この最後の人はあまりにも」


 

 そうなのだ。最後の人は余りにも嘘臭い。なぜなら全身フードで顔を隠している。



「勇者は許さないわ」



 なんと声は女性である。第一声が勇者を許さないであるから恨んでいることは間違いないんだろうが一体何者なんだろうか?



「チーム名はどうするでござるか?」



 テツオさんは早くも魔道具鑑定大会のウチのチーム名を決めようとしている。そんなことより謎のフード女が気になってしょうがない。



「セージ君は『何でも鑑定士』って呼ばれているから『何でも鑑定団にしようよ』


「おお、そいつはいいぜ」



 ブンターさんがマユちゃんの案に同意した。そんな。僕の二つ名で勇者に喧嘩売るようなこと。



 「打倒勇者! ファイトファイトオー!」



 僕がそんなことを考えているとマユちゃんとブンターさんとテツオさんと謎のフードの女は円陣を組んで掛け声をあげていた。取り敢えず、僕達の鑑定士チームは急造だが集まった。

 だが勇者チームは鑑定士としても恐らく過去最強のチームだ。僕は鑑定士として皆とともに勇者に打ち勝つことができるだえろうか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ