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毒リンゴ
目を通していただきありがとうございます。
一生懸命書いて行きますのでよろしくお願いします。
息が白く消えていった。
外は雪化粧のせいか、人々の表情も明るく見える。
私は車の中、曇ったガラス越しにそんな人々を虚ろに眺めていた。
「〇〇さん?聞いてます?」
「・・・」
「〇〇さん!寝ちゃってるのかな?」
「〇〇さーん!」
「…」
「はい。起きてます…」
「良かった、そろそろですよ!外は雪が…」
と、運転する彼は陽気に口をはずませる。
彼は私をお城へ運ぶ。
私のお城は毎日変わる。
毎日違う王子様。
それでも私はいつもと同じ。
彼も王子様達も台本通り毎日同じセリフを話す。
私も毎日同じセリフを返す。
心にもないことだけどスラスラ言える。
私にかかった魔法がそうさせる。
「前払いだっけ?」
頷く私に王子様はお金を渡す。
この言葉は嫌い。
お金を手にすると少し魔法が解けるから。
「シャワー、一緒に浴びようか」
そう言いながら彼は服を脱ぎ捨て、手を差し伸べた。
裸の王子様に誘われた私は思考を止めた。
90分のこの魔法が解けるまで。